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㉙ピータールーガー:老舗の商法

 ニューヨークの世界的有名ステーキハウスの『ピーター・ルーガー』のことは先に書いた。その店のことをもう少し書いてみたい。
 ピーター・ルーガーは世界のステーキ・ハウスコンテスト(正式にはどう呼ぶかは知らないが)で毎年、何年もトップの評価を勝ち取っている名店。ニューヨークはブルックリンにある。ブルックリンと言ったらマンハッタンの中心地からクルマで30分ほどかかる。決して立地環境がいいとはいえない。日本に置き換えると「北千住」とか「蒲田」「大森」あたりになると言ったら叱られるかな。

ブロックリンにあるピーター・ルーガー


 この店が有名なのは熟成肉のせい。この熟成肉に関しては既に書いた。肉を、まあ言ったら腐る寸前にまで追い込んで、表面のカビを削り取ってステーキにするというもの。だから柔らかい。手間・暇かかった上に、肉の2割近くを切り捨ててしまうために金額がはる。
 贅沢が許されるほどの身分ではないために、夜ではなく、ランチで出かけることにした。そのほうが安くつくと思ったから。しかし、行ってみると実際はランチメニューはなく、夜と同じメニュー・同じ料金だった(ガックシ)。
 店の開店時間の11:30に合わせて行ったが、既に何人かが並んでいた。席に着くと、おおよそ中国・韓国・日本人系で約3割ほどを占めていたように思う。残りが白人系だった。とにかく、どこへ行ってもやたら中国人に多く出会うのはこの店でも同じだった。
 この店での一番人気はTボーンステーキ。このTボーンステーキに関しては多くの人がネットでも書いているので、ここでは深くは書かない。ただ言いたいのは、このTボーンステーキ、写真の様に店のほうで骨から切り取ってくれてはいるのだが、そこはアメリカ人の仕事。雑、極まりない。骨にはまだまだ肉が残っている!これを日本人ならきれいに切り取って食べ切り、「お前たち、もっとキチンと切れよ!」とのメッセージにしたいと思うが、さて、そんなメッセージが彼らに届くのかどうかは甚だ疑問だ。

この店の定番「Tボーン・ステーキ」

 添えの野菜にはほうれん草を頼む人が多い。トロトロに煮込んだほうれん草は食べ飽きるほどの量が出てくる。ほうれん草と共に頼んだのが「トマトとオニオンのスライス」。これがなんとも言い難い。厚さ1センチほどのトマトのスライスが2枚。同じサイズのオニオンが1枚。これで17ドル。これにもチップがかかってくので、日本円に直すと2300円ほどになるか。老舗有名店の「どんなもんじゃ、文句あっか!」を感じる。日本ならお客が怒り出すに違いない。 

トマトとオニオンのスライス

 ピーター・ルーガーは人気もあるが、店のプライドの高さも半端ではない。この時代に現金しか使えないこともそうだ。ピーター・ルーガーはカードでの支払いを拒否する。昔ながらの現金の遣り取りしか認めない。それが嫌なら「来るな!」だろう。コロナ禍でデリバリーで営業をするしかなかったときには流石にカード決済を採用したらしいが・・・。またこの頑固なまでのステーキハウスは女性従業員を決して雇わない。ウェイターばかりで、ウェイトレスはいない。この時代にどうかと思うが、それがこの店の商売のやり方。ステーキは男の料理。女性にまかせてたまるか!とでも言いたげだ。更には店の従業員は40代以上で若者がいない。推定になるので正確な年齢は分からないが、みんな50代・60代に思える。40代と書いてはみたが、実際には40代はいないのかもしれない。或いは40代はバックヤードを担当して、表に出てこないのかもしれない。肉の味がわかる大人で運営するステーキハウス、というところか。
 筋金入りの老舗ステーキハウス。決してお客に媚びない。逆に「店がお客を選ぶ」を売り物にする。マーケティングには、消費者のニーズに合わせるマーケティングもあるが、お客を選ぶマーケティングもある。そんなピーター・ルーガーの頑固な商売のやり方を認め、その味や雰囲気を求めて多くの観光客や現地のセレブが詰めかける。出口に向かう時、現地の日本人赴任者の奥さんの集まりがあるのか、日本語が飛び交うランチミーティング集団に出くわした。そんな人達が利用するピーター・ルーガー。まあ二人で3万円ほどあればなんとか足りるだろう。アルコールを頼まなければ、ね。


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