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551の豚まんを買って帰る日

 ワーキングマザーである。
 基本的に家事は苦手だが、料理は例外的に好きだ。夫が壊滅的に料理が苦手なことも相まって自分が担当している。

 そう、料理。

 料理と一言でいってもそこには「冷蔵庫の残り物を思い出しながら献立を決め、保育園のお迎えの前に駆け足でスーパーへ寄り、そして子供を構いつつ晩御飯を用意する」という要素が含まれる。
  
 めんどくさい。
 とにかくめんどくさいのだ。

 私は美味しいご飯を食べるのが好きで、献立を考えるのも好きだ。気がつけばレシピサイトを巡ってあれ食べたいこれ食べたいとしょっちゅう考えている。
 ただ、好きであることとめんどくさいと思うことは両立する。なんぼでもする。

「今日はご飯をつくらないぞ」

 仕事をしながら夕飯を何にしようか考え、そう決意する頻度はまあまあ高い。
 とはいえご飯をつくらなくても腹は減る。問題はご飯をつくらない日の夕飯をどうするかだ。
 自分1人ならコンビニで山のようなお菓子を貪り食っても最高。
 ポテチにシュークリーム、チョコレート………
 むしろそれがしたいけど、幼児のごはんは放棄できない。子ども用のレトルトカレーでもいいけど、レトルトカレーの隣でお菓子を貪り食うのはなんかちがう。そもそも子どもがお菓子を欲しがって楽しむどころの話ではなくなってしまう。

 外食?
 外食もいい。ただ、大人1人と幼児1人の外食はこれはこれで「めんどくさい」が勝ってしまう。
 ファミレスに行くとレジ横のおもちゃを巡る攻防戦が始まるし、基本セルフサービスのフードコートは幼児連れでは地味に難易度が高い。そもそもフードコートにたどり着くまでに誘惑が多すぎて疲弊する。
 じゃあ家で出来合いのものを食べるかとなるのだが、スーパーのお惣菜はなんだかさみしい。ご飯を作りたくない時は大抵疲れている時だから美味しいものを食べて体力と精神のゲージを回復させたい。

 そんな時にちょうどいいのが豚まんだ。
 関西を代表するあの豚まん。551。幸いなことに通勤経路に出店してくれている。ありがとう551。

 「今日は551の豚まんにしよう」と大体お昼休みに思い立ち、そしたら後はずっとどこかで豚まんのことを考えながら終業を待つ。何個買おうかなとか、今日は肉団子でも買うか?いや、でもそれじゃ流石に多いか……とか。しんどくても「ま、今日は551で豚まん買って帰るしな」と思えばニコニコと仕事をこなせる。

 普段は乗り換えにしか使わない駅で一旦降りる。家族の分より少し多い豚まんとシュウマイ、ついでにお財布に余裕があれば中華ちまきも買う。店員さんが紙袋を手渡してくれた時にはもうハッピーだ。
 まさにCM。551のある時ない時。
 子供を保育園に迎えにいっておうちに帰ればもう何の準備もせずに晩ご飯をはじめられる。
 赤い箱を開けたら箱にみっしり詰まった豚まんが顔を出す。子どもにも一個渡して、自分も一個ほうばる。
 一口食べた後に辛子をたっぷりつける。私はこういう薬味をなんでもたくさんつければいいと思っている節がある。そんな風に大きな豚まんはあっという間に胃袋の中に収まる。
 子どももペロリと食べてしまうので「ちょっとだけね」といいながらもう一個豚まんを取り出して半分に割って2人で食べる。美味しいねと言い合いながら半分ずつ食べる豚まんは幸福の味がする。もちろんある程度の飢えが満たされている前提ではある。

 551の豚まんは皮がちょっと甘くてそこが一番好きなポイント。厚めの皮にみっしりとした餡がたまらない。寒い日に思わず買ってしまうコンビニの豚まんも好きだけど、やっぱり食べたくなるのは551の豚まん。
 あまりにも特別なのでちょっと疲れた日位の日には「今日はまだ我慢だ」とセーブしている。
 特別な料理はカードを切る頻度が少ないからこそ、特別の価値を保てるところもあるのだ。

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この記事は
『辛さを爆破する(したい)食事メニュー表 Advent Calendar 2024』
にちなんで書きました!他の記事もよろしければ、是非。

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