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2月の映画備忘録

定期的にこれを書く訳ではないが(飽き性なので)良い作品が多かった時に更新したい、この備忘録。

と言いつつも、本命である「ボーンズ アンド オール」も、公開前からとても楽しみにしていた「逆転のトライアングル」もまだ観れていない。これらも良かったらまた書きたいなと思いつつ、他より3日ほど短い2月の映画振り返りです。

先に言いますが、ネタバレを多く含みます。既に鑑賞済みの方、ネタバレ踏んでも楽しめる方のみご覧ください。



バビロン

アカデミー賞作品賞の候補作だし、キャストも製作陣も豪華すぎるしで公開前から期待値がめちゃ高かった。これは本当に素晴らしくて、観て数日経ってからようやく言語化できたくらいです。思い出すだけで余韻が•••。

まずスケールが桁違い。これはスクリーンで観て大正解だった。人が密集するパーティとか、実際の映画の撮影現場とか迫力がすごい。超下品な作品で、開始2分で糞尿が出てくると思わなかったし、マーゴット・ロビー演じるネリーはパーティ会場でゲロ吐くし、もう汚物コンプリートじゃん。でも最高な映画なんだから不思議。

「ニュー・シネマ・パラダイス」然り、今後公開される「フェイブルマンズ」もだし、映画を描く映画が大好き。製作陣の映画愛を存分に感じられるから観ていて幸せな気持ちになる。
今作は無声映画からトーキーに移る際の映画業界の有象無象。名作映画「雨に唄えば」で面白おかしく描いていたが、「バビロン」はそのアンサー映画のような気がした。故に「雨に唄えば」の予習は必要かと。劇中に何度も出てきたし。

映画という大きなものの核になりたい、目撃したい、という欲が生み出す人間性は、私が常に考えている「自分の人生を映画に捧げたい」という思いにダイレクトに響いた。受けた影響が凄まじい。
ネリーのラストは悲しいけど、あんな風に生きてみたい。

仕方のないことなんだけど、途中何度かモザイクが出てきたのが悲しかった。モザイクをかけることは監督の伝えたいことが隠されているということ。映画の意思に反していると思った。仕方のないことなんだけどね、いつか完全版を観てみたい。

ラスト、畳みかけるようなフラッシュバック描写に思わず拍手したくなった。家で観てたらしてたと思う。夢と欲にまみれた映画業界を1人の観客として目撃できたことに大変意味を感じた。

上映前にコーヒーを飲んでしまい、途中でお手洗いに走ってしまった。これをするのは人生で2度目。3時間越えの映画にはお手洗い休憩を挟むというのをぜひ検討してもらいたい、切実に。



エゴイスト

映画コミュニティの方が「早くも今年ベストの予感」と言っていた。映画好きの言う好きには大変信頼が持てる。あまり詳しく調べないまま映画館に行き、これは•••という気持ちのまま後にした。

半分ドキュメントのような作風で、本当にカップルの日常をのぞいてる感覚になった。カメラワークが独特で若干画面酔いしつつも、主演2人の自然な芝居にどんどん惹き込まれていく。

お金があって人望があるが、それゆえの孤独を抱えて生きている浩輔と、お金がなく母を養うために体を売って生活をしている龍太。
彼を買うという名目で、風俗を辞めさせ毎月お金を渡し支援する浩輔だが、それが龍太にとっていい選択ではなかった。風俗を辞めたことにより、多忙で龍太は過労死してしまう。
残された浩輔は龍太の母親を養うことを決意するのだが、そこまでするのかと思う人も少なくないと思う。

愛は目に見えないからこそ、人によって様々な捉え方をする。だから誤解も生まれるし傷つき傷つけられる。
「僕には愛が一体なんなのかわからない」と言う浩輔は、彼を毎月買うということでお金を渡していたり、龍太の母親にもお金で支援していたり。好きな人のために尽くすというのが全てお金であるのは間違っているはずだと、心のどこかで感じていたのかもしれない。

それに対して「相手が愛だと思ったら愛」と返答した龍太の母の言葉を思うと、自分がどう思っているかよりも受け取り手が全てなんだと感じた。愛とはお互いを満たすものであってほしいと願うばかりだ。

少し前に自分のことで悩んだ際、友人に「やりたいことやなりたいものの中に自分がいない。誰かのためにしか存在できない。もっと自分のために生きてみたい」と相談したことがある。その際友人は「自分のためにが最優先の人はただのエゴイストじゃん」と言っていた。エゴイスト•••エゴイスト•••、とそこからしばらく経ってもずっと頭を離れなかった。

その時はこの映画のことは全く解禁されておらず、ただその言葉が頭の中で一人歩きしている状態だったが、映画を観て少しわかった気がした。
浩輔は好きな人を救うことが自分のエゴだったんだと思う。ある種誰かのために生きているが本質は自分自身。私も実はそうなのかもしれない、と振り返ってしまった。

最後、病室で別の患者さんに「息子さん?」と聞かれた浩輔。今までは浩輔も龍太の母も「違いますよ」と言っていたが、龍太の母が「そうです。自慢の息子なんです。」と言う。14歳で母を亡くした浩輔にとってその言葉は胸を満たしていくかもしれないが、その後の浩輔の人生を思うと辛く苦しい。いつか絶対に別れが来るが、その時に相手にとって自分がどんな存在だったのか、この人は自分にとってどんな存在だったのか。心から感謝と愛を述べられることができたなら、とエンドロールのピアノを聴きながらしみじみと考えた。


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