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わたしがお気に入りのドレスに 袖を通したある日の午後、 あなたは居なくなった。 太陽が頂点…
そこを誰かは ちいさな宇宙と云った わたしはそこへ落ちて 目が覚めた わたしはひとつの ち…
太陽が沈んだ後、街は海の底へ沈んだ。紺色に染まってゆく空はそこに在ったはずのものを陰のな…
名前をなくしたあの子は カーテンのすき間から 夜空を見上げていました。 『明日は満月だ』 …
ぼくの恋人は、 銀食器のようにかがやく 4本の指を持っている。 右手と左手にそれぞれ2本ず…
葡萄色(えびいろ)に染まる空の下、 少女は、手紙がたくさん詰まったカバンを手に、 流れゆく世…
火の手を持つあの子が、怒ってしまった。 最初にそれを見つけたのは西の空だった。 彼女の大好きな人が嘘を吐いたから、と。 彼女の手は触れるものを焼き尽くし、 彼女が住む街でいちばん大きな森にも火の粉が及んだ。 真夏の強い陽射しから守ってくれた木々も 大好きな人と何かから隠れるようにひそひそ話しあった茂みにも 彼女の怒りは飛び散って、次から次へと燃え移っていった。 思い出の森のおなかから、 メキメキと亀裂の音が響いている。 彼女には今、どんな音が聴こえているのだろうか。