渉外不動産登記のすすめ
本試験まであと少しの受験生の皆様。
最後の追い上げで頭がパンクしそうになっている時期だと思います。本当にお疲れ様です。伊藤塾司法書士試験科スタッフのSと申します。
超直前期にノートの記事を読んでいる余裕のある人はあまりいないとは思います。1日の勉強が終わってほっと一息ついたときにでも読んでいたれば幸いです。また、これから司法書士を目指そうと勉強を始めたばかりの方で語学が好きな方にもお読みいただければ幸いです。
不動産登記、商業登記といろいろ登記はありますが、登記の中に申請当事者の一方に海外在住日本人や外国籍の方が絡む登記があります。
それが、渉外登記です。
今回は特に不動産登記の渉外登記について簡単にお話しようと思います。
渉外登記で添付書面の一つとして、受験テキストで必ず記載のあるのは印鑑証明書に代わるものとして「署名証明書」があります。択一知識の定番で「署名証明書には期間制限はない」と書いてあるアレです。テキストの記載はあっさりと済んでしまっていますが、この署名証明書は海外在住経験がある方ならともかく国内在住日本人の方は実務未経験だと現物を目にしたことがない方がほとんどだと思います。私も司法書士事務所に入って現物を初めて目にしたときは各国や州でこんなに書式が違うのかと驚きました。
署名証明書は、例えば不動産決済の場合だと義務者が外国在住の外国籍の方や海外在住日本人の方で日本国内の印鑑証明書が発行できない場合などに使いますが(外国籍の方でも日本在住の場合には住民登録や印鑑登録はできますので、日本の住民票や印鑑証明書は発行されます)、申請人ご本人に現地の官公署まで出向いて発行してもらうため発行までにかなり時間がかかることがあります(飛行機で移動しなければいけないこともあります)。また原本が外国語であるため、法務局に添付書面として提出するためには日本語訳文を用意しなければなりません。日本語訳文はもちろんプロの翻訳家に頼むこともできますが、翻訳費用がかかってしまいますので、もっぱら事務所内でその言語ができる人がいる場合はその人が翻訳することが多いです。特に英語と中国語が多く、私はもっぱら英語の翻訳を担当していました。
ご依頼の中にはかなり長文の英文遺言書を読解が必要なケースもありましたし、日本が全く理解できない方用に売買契約書や押印書類を英語で作成することもありましたし、状況によっては英語で話さざるを得ないこともあります。
昨今では外国籍の方が不動産をお求めになる場合や、国際結婚で相続が発生した場合など、司法書士業務を行う際に外国籍の方や在外邦人が当事者になる頻度が非常に高くなってきています。司法書士受験生の中には、すでに英語などの語学を既に習得されていられる方もいらっしゃると思いますが、英語に限らず多言語作文の知識とスピーキング、ヒヤリングはそっくりそのまま実務で使えます。司法書士試験の勉強に少し疲れてしまった時など、時間に余裕があるときに少しずつでも語学の勉強をしていると、司法書士になったときに今まで語学をやっていてよかったと必ず思う日がきますのでおすすめします。また、日本法に限らず国際私法や比較法の知識も必要になる場面の多々ありますので、私も引き続き語学と周辺知識の勉強を続けていこうと思っております。
末筆になりましたが、今回は本当に少しですが登記関連の単語集をお送りします。何かお役に立てれば幸いです。