I.W.ハーパー12年を見ると思い出す事
最近、アメリカンウイスキー、バーボンは飲んでいない。
スコッチシングルモルト、とりわけアイラモルトの沼にはまってしまったからである。
以前はI.W.ハーパーゴールドメダルのソーダ割を毎晩愛飲していたが、ほとんど飲むことは無くなった。
だが、I.W.ハーパー12年だけは常備して、今でも大事にちびちびと飲んでいる。
何と言っても四角いお洒落なデキャンタボトルが特徴的で雰囲気があるのが気に入っているからだ。
このボトルの存在は、かなり前から、私が中学生くらいのころから知っている。
何故中学生の私が知っていたかというと、母が実家のトイレの一輪差しの花瓶として、この空きボトルを使っていたから。
トイレの窓際の棚のI.W.ハーパー12年の空きボトルに水仙の花が一本生けてあった。
小学生だった私は、最初何の酒瓶かよく分からなかったが、ずいぶんとお洒落で珍しいボトルがあるんだなと思っていたが、その時はあまり気にも留めなかった。
しかし、後になって思うと、なんか気に掛かるものがあった。
何故I.W.ハーパー12年が実家にあったのか?である。
親父は呑兵衛だったが、バーボンは全く飲まない、専らサントリーホワイトなどの安酒を愛飲していた。
ハーパー12年を買う理由はない。
母は全く酒を一滴も飲まなかった。
親父の酒癖の悪さもあって、母は酒は大嫌いであった。
何故大嫌いな酒の瓶を花瓶として使っていたのだろう。
そもそも実家のある房州の田舎では、I.W.ハーパー12年なんぞ売っていなかったと思われる。
どっかから空き瓶を拾ってきたのだろうか?
ある時帰省した時に母に聞いてみることにした。
帰省時ハーパー12年を持ち帰り、食事の後にわざとらしく飲んで母に話しかけてみた。
「母さん、昔これと似たような空き瓶、トイレの花瓶に使ってなかった?」
「あー、使っていたね」
「あれ、ウイスキーの瓶だよね。今飲んでいる奴なんだけどあの瓶は、親父が買って飲んだ空き瓶?」
「…あれは、確かお父さんに誕生日プレゼントで買ったのだったね。今も売っているんだ」
I.W.ハーパー12年は親父の誕生日の記念の品だった。
親父の誕生日プレゼントを買うにあたり、母の知り合いのスナックのママさんに相談して、わざわざ取り寄せて買ったようで、当時は高価で珍しいものだったらしい。
母には酒の味はどうなのかよく分からなかったが、やっぱりボトルがお洒落であったからこれに決めたようだ。
母は、ウイスキーが高価であったので、親父が大事に味わって飲んでくれるかと思ったが、アル中気味の親父はガバガバ飲んですぐに空けてしまったらしい。
母にとっては、多分、あっけない感じがしたのだろう。
しばらく空き瓶を花瓶として使ったようだ。
「今飲んでいるボトルが空いたら、また花瓶に使う?」と聞いたが、
「だいぶ大きくて重いしね~」
これに懲りたか知らないが、親父にはその時以来酒のプレゼントは送ってないとのこと。
I.W.ハーパー12年は既に終売している。
一説にこのお洒落で特徴的なボトルの製造が困難になったから終売となってしまったとのことらしい。
残念である。
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