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美容師の「辞める」について、もうちょっと濃い話を。
操作イトウです。
先日、文春オンラインに寄稿させていただきました。沢山の方に読んでいただけているようです。今日はこれにまつわる後日談。
バズりを連発する文春オンラインに乗っかって、毎回Twitterで多くの反響を頂きます。今までにもトレンド入りしたり、僕の書いた記事を介して「私もこんな経験した!」とレイザーラモンRGばりの、美容室にまつわる “あるある早く言いたい” 現象が連鎖するのです。さすが文春さんです。
そして今回の反応で特に多かったのは、美容師歴のある“元”美容師さんたち。特に、アシスタントのうちにドロップアウトした方の言葉が多い。
本来なら美容師続けたかった。
— mana🐅 (@MHimpoledancer) May 2, 2021
憧れてる先生と一緒にコンテスト出たときは痺れた。美容がすき。
サロンワークは楽しい。
カット技術磨きたかった。
でもそんな事言ってられないぐらい
泣きながらシャンプーしてたから
辞めた。
人としてステップアップしたから
大学病院に今いる。 https://t.co/BNGb7RSrE9
manaさんのツイートが印象的でした。ご協力ありがとうございます。
僕も辞めていく同期や先輩、後輩も、去っていく後ろ姿を沢山見てきました。美容師を続けていれば、誰しも片手で足りないほど、もとい数え切れないほどに経験していることです。
そして僕も、幾度となく美容師を辞めようとしていました。僕の13年間の美容師人生は、業界を賑わすカリスマ美容師のように華やかではありません。むしろ二度と戻りたくない、黒歴史です。
僕は美容師を続けているけど、辞めた人たちの気持ちは痛いほどわかります。
少し、身の上話を。
僕はアシスタントを7年も経験しました。業界では、アシスタントからスタイリストに昇格するまでの修行期間は3〜5年と言われ(今は短縮する美容室が多い)、昔は10年もアシスタントをやる有名美容室の話も聞くこともありましたが、5年もかかると周りからは「遅かったね」と言われます。
ですがアシスタントの期間は「長く下積みをしたから技術レベルが高い」ということには直結しません。器用に技術を習得できず、期間が長引くのは、むしろ恥ずかしいことです。
僕が手先もメンタルも不器用だったことは言うまでもありませんが、その7年が技術の習得にどうしても必要な期間だったとは、露ほども思っていません。本当はもっと早くスタイリストになれたはずなのに、少人数の美容室という、小さな組織のゴタゴタに振り回され続けた結果だと思っています。
営業後の夜遅くまで美容室に残って練習、練習、練習。
自分の不器用さで先に進めないならまだしも、会社側の理不尽な理由でアシスタントの期間が間延びする日常。満足な収入も得られない極貧生活。ネガティブ思考な僕の心はポッキポキに折れていました。
最後の2年くらい、美容師を辞めずにいたのは「辞めてたまるか」という意地でしかなかったと思います。それか、辞めるきっかけを失っただけ、か。
それでも少しずつ世の中が見えるようになりました。この環境がいかに異常で、自分が井の中の蛙であるかに気がついたのは、スタイリストになったばかり、20代を終える頃でした。
続けられないのが当たり前の環境、それが美容業界
僕も「辞めた」側だったはずの人です。ですがそれは先輩が悪いわけではなく、後輩が悪いのでもなく、辞めていった美容師たちが間違っているのでもない。
悪いのは人材育成や人材確保のための環境を整備してこなかった、業界の在り方です。
美容業界が「技術は就職してから得るもの」という形になっている理由は、国家試験が実践的でないからです。これは、新卒生をゼロから教える美容室側に、大きな負担を与え続けています。
詳しくはこちら↓
ネガティブだけでは何も進まない
Twitterでは「ポジティブに捉えすぎ」「ネガティブな部分が書かれていない」という意見も散見していました。
文春オンラインの記事については、オブラートに包んでいたり、触れていない事柄もあります。正直、もっとボロクソに業界批判することもできます。
僕はあえて文面をポジティブに表現しています。それは辞めていった方々へのメッセージでもあります。ネガティブな要素で批判しても、得るものはありません。
僕が経験したあの鬱屈とした黒歴史は、多くの美容師経験者が共感できるはずですが、それをメディアへの露出が多いカリスマ美容師が発信することはありません。彼等がメディアに求められるのは、最新のお洒落なヘアスタイルを発信することです。
これは、僕なりのパンクです。もちろん後世の美容師に同じ経験をして欲しくないし、沢山の方に、文面にしたためた僕の皮肉を読み取ってもらえるとありがたいです。
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ではまた。