毛量を減らしたい時に「すいてください」と言ってはダメ!?【美容師のカット事情】
操作イトウです。
髪の毛がモリモリしてしまって、どうにもうまくいかない。
「美容師さんにすいてもらおう」と思っている方、ちょっと待った!
今回は、「すく」にまつわるお話。
一般的にも髪の毛の量を減らすことを「すく」と言いますが、オーダーする時には「すいてください」とは言わない方がイイです。
それって、どういうこと?
◎美容師は「すきバサミ」を「セニング」と呼ぶ
「すく」は、「梳く」と書くそうです。
業界では、いわゆる「すきバサミ」のことを「セニング」と呼びます。
ギザギザの片刃によって刃の隙間は切れないため、毛量を均一に切り、減らすことができます。ハサミを一太刀入れても「長い、短い、長い、短い」と全体の長さが変わらないので、毛量を減らすことに特化しています。
そのため、一般的には「毛量を減らす=すく」として浸透しましたが、
美容師の場合は、このセニングを使うことを「すく」と表現することが多いです。
◎セニングは美容師によって賛否両論?
美容師は、育った環境によって教わってきた技術が違うので、カットの考え方もそれぞれです。
カットの技術にはそれぞれにメリットとデメリットがあり、美容師さんが選んだハサミや切り方には、価値観が露骨に反映されています。
特にセニングに関しては、美容師にとって賛否両論なツールです。
▼セニングで髪がバサバサになる
長さのあるヘアスタイルをしている方の中には、髪の毛の表面に「モケモケした毛」が出てくることを悩んでいる方も多いと思います。髪を艶っぽくキレイに見せたいのに「モケモケの毛」があると、バサバサに見えてしまう。
これは、長い毛の中に「短い毛」が混じっているからなのですが、この原因の一つが、セニングにあります。
髪の毛はウェーブがあっても、長い方が真っ直ぐに落ちやすくなります。これは毛先が“重り”の役割をして、ウェーブを引っ張っているからです。
しかしセニングで切ると、髪の毛には「短い毛」がたくさん作られ、短くなった毛には長さの“重り”が無くなり、ウェーブが出やすくなります。
つまりセニングを使うと、「モケモケの毛」が増えて、結果的にバサバサに見えてしまうのです。
◎セニング最大のデメリットは膨らむこと?
美容師にとってセニングの最大の論点は、「セニングを使うことによって髪が膨らむ」ことです。膨らむ髪を減らそうとしてセニングを入れると、もっと膨らんでしまうのです。
「毛量を減らすのに膨らむって、どういうこと?」と思うかもしれませんが、これには理由があります。
◇髪が膨らむ方の多くは、ウェーブ毛
髪が膨らむことに悩む方の多くは、ウェーブ毛であることがほとんどです。これは、髪はウェーブの重なりによって厚みが出て膨らみ、反対に直毛であるほど髪の厚みは薄くなるからです。
また、髪は短い方がウェーブの影響を受けやすくなります。長いほど毛先が“重り”のように引っ張るので、ウェーブが伸び、ボリュームも小さく収まります。
◇膨らむ髪質の人ほど“すく”ことができない?
美容師にとっては、膨らむ髪質の人ほど、安易にセニングで“すく”ことができません。理由は、先述した通りセニングで髪を切ると切り口が「長い、短い、長い、短い」の状態になるからです。
当たり前ですが、髪の毛は重力によって上から下に落ちています。図はセニングで切った断面を縦にして、下に落ちている状態を表しています。
すると「短い部分」の上に長い毛が乗っかり、また「短い部分」の上に長い毛が乗っかり…という形になります。
これがウェーブ毛の場合、「短い部分」は長い時よりも膨らみます。すると、クッションのようになってしまう。
つまり、毛量を減らしたつもりの「短い部分」が、ヘアスタイルを膨らませるクッションを作ってしまうのです。
◎ハサミは千差万別。セニングも種類がたくさんある
美容師の多くは、2〜4本の用途の違うハサミを使い分けています。それぞれのハサミは、切れ味が違うこともあります。スパッと切れるのがイイ時もあるし、髪の毛が逃げて“あまり切れない”方がイイ時もあるのです。
ウェット(髪が濡れている)、ドライ(乾いている)によってもハサミの向き不向きがあり、特定のカット技術に向いているモノも沢山あります。
また、「刃の長さ」「先端の形」「刃の厚み」「グリップの形状」によって使い勝手も変わるため、美容師さんは使いやすいようにカスタムして購入しています。
▽セニングの切れ味は「〇〇%」で表記される
セニングの場合、メーカーは一太刀で切れる毛量を「〇〇%」で表記しています。これは、「ハサミで一回切った毛束の何%が切れるか」といった意味です。
沢山切れるもので40%ほど。ですがこれも「沢山切れればイイ」というものではなく、“わざと切れない”設計がされているモノもあり、10%以下まであるためバリエーションは様々です。
その中から美容師さんはそれぞれ、感覚に合うモノ、用途に応じたモノを選んで使います。
また、セニングを使用する際には、美容師はハサミの開閉する回数を計算しています。これは、同じ位置で何度か開閉すれば、その分「すく」度合いも高まるからです。
◎美容師さんに「すいてください」とは言わないほうがイイ理由とは?
冒頭でもお伝えした通り、美容師さんには「すいてください」とは言わないほうがイイです。
あえて強い言い方をしましたが、これは“初めて接する”美容師さんに該当します。繰り返し指名していて、信頼関係のある美容師さんに対しては問題ありません。
その理由は、美容師さんのカットにはそれぞれの「価値観」が反映されているからです。
◆「セニングで膨らむ」は美容師にとっては“あるある”
先述した「セニングで膨らむ」現象は美容師にとっては“あるある”で、施術をする上で「絶対に避けたい状況」の一つに数えられます。
特に、膨らみやすい髪質の方に対してのボーダーラインはシビアです。
経験のある美容師さんであれば、「この髪質は過度にセニングをしてはいけない」と判断できますが、経験が浅いとボーダーを超えてしまうこともあります。
そのため、美容師側から「これ以上すく事はできない」と言われることもあると思います。この現象を避けるために、そもそもセニングは使わない美容師も多くいるほど、賛否両論のツールなのです。
◆“初めて接する”美容師さんの価値観は、やってもらうまでわからない
とはいえ、お客様にとって“初めて接する”美容師さんは、やってもらうまでは上手な人かどうかがわかりません。
美容師サイドも初めての方に対しては、「どんなヘアスタイルにしたいのか」「どうして欲しいのか」「どうして欲しくないのか」、探り探り始めることになります。
すると、仮にその美容師さんが経験の浅い方だったり、時間に追われている方の場合、限られた時間で「お客様がどうしたいのか」を正しく理解できないこともあります。その状況のまま「すいてください」というオーダーを鵜呑みにしてしまうと、絵に描いたような失敗を招いてしまうかもしれません。
◎「ボリュームを減らしたい」と言った方がイイ
「すいてください」と聞くと、手段が限定されてしまう美容師さんもいます。
そこで、オーダーする時には「すいてください」ではなく、「膨らむのに困っている。ボリュームを減らしたい」と言ってみましょう。
なぜなら、その一言によって美容師さんは「アプローチの仕方」が変わるからです。
◆ボリュームの減らし方は「すく」だけではない
「ボリュームを減らしたい」というオーダーは、ざっくりし過ぎているように感じるかもしれませんが、美容師にとって、ボリュームの減らし方は「すく」だけではありません。別の方法を駆使して、膨らみを抑える方法は何種類もあります。
例えば、ボリュームを減らすための「カット技法」、ストレートパーマなど「薬剤を用いる方法」、ブローやアイロンを駆使した「スタイリングの方法」、シャンプーやトリートメントなどの「デイリーケアによる方法」もあります。
そのためこの一言で、美容師さんにとっては自分の手札から選びやすくなるのです。
◎ステキな美容師さんに出逢って欲しい
美容師さんに、ライフスタイルに合った選択肢を導いてもらうことは大切です。
この記事を通して、「私にとって最良の選択」をしてくれる美容師さんに出逢えることを、願って止みません。
ではまた。
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