見出し画像

シャンプー、上手い下手の差はどうして?

操作イトウです。

美容室でのシャンプーは、憩いのひととき。自分じゃこんなに丁寧にゴシゴシしないし、頑張っても腕が疲れるだけ。最近ではヘッドマッサージに特化したお店も話題になっています。

最近は減っているかもしれませんが、シャンプーをする「アシスタントの指名制」をとる美容室もあります。現場目線でも、シャンプーを褒めてもらえるアシスタントはいつも同じ人だったりするものです。

ですが、「この人のシャンプーは、いつも気持ちいいなー」と感じる反面で、「あー、今日はこの人か。やってほしくないなー」と思ったこともあるのではないでしょうか。シャンプーはその美容師さんによって全然違いますよね。どうしてこうも雑なシャンプーをされてしまうのか。。。

シャンプーをアシスタントがするのはなぜ?

僕がまだ学生の頃、ある有名美容師さんが学生向けの講演会で「シャンプーが上手なアシスタントは、一流のスタイリストになれる」と熱弁されていたことを覚えています。

最近は美容師さんが一人で全てをこなすスタイルが増えていますが、店員の多い美容室では、シャンプーをアシスタントに託されることが多いと思います。

画像7

これは作業効率を上げるためです。分担して手の空いた時間に、担当のスタイリストはもう一人お客様を担当することができます。

では、上手な人と下手な人は、何がそんなに違うのか?

シャンプーは、アシスタントが最初に習う技術です。

美容師見習いは、美容学校を卒業しても実践的な技術に乏しく、ゼロからのスタート。新卒で入ってからは雑用しかできず、「猫の手」にしか過ぎないため、基本的にスタイリストの手伝いができる技術から覚えていきます。なので多くの美容師見習いにとっては「猫の手」から「シャンプーマン」になるのが最初の目標になります。

画像1

シャンプーの練習は1人ではできません。「されて気持ちいい」触感を習得するため、先輩の頭を借りながら指導され、一生懸命練習を続けます。お店が定めた社内のテストを合格して、晴れて「シャンプーマン」になるのです。

「シャンプーマン」は責任重大

シャンプーは最初に習う技術でありながら、責任重大です。一対一で対応するため、無論、先輩のサポートを受けることができません。ミスをしても手は借りられず、自分で一から十まで対応することになります。

画像2

しかしシャンプーはお店にとって「事故」と捉えるようなクレームに繋がりやすい、大事な工程です。

顔に水が大量にかかってしまう、耳に水が入ってしまう、首筋から水が漏れてお客様の背中を濡らしてしまう、カラーのお薬が付いて服を汚してしまう、シャワーのあしらいをミスして噴水のようにお店を濡らしてしまう。

余談ですが、こちらもご覧ください↓

シャンプーマンは様々なアクシデントにも対応する所作が求められます。技術のテストはお店が定める基準のため多少の誤差はありますが、だいたい1〜3ヶ月で習得できると言われています。

僕が勤め始めた10数年前には、「あの有名店は、シャンプー合格に半年かかる」と聞くこともありました。雑用しかできないまま半年を過ごすというのは、中々過酷なものです。

ですがテストに合格してお客様をシャンプーするなら、みんな上手なはず。なのに下手くそになるのは、なぜ?

「慣れ」がもたらすのは洗練?怠慢?

シャンプーマンは最初こそ覚えた工程を必死にやりますが、慣れてくると毎日の反復運動で無意識に出来るようになります。ぎこちなさが抜けて、洗練されるのです。

画像3

手先に集中を注がなくても、お客様との会話をしながらでも、同じように手を動かせるようになります。力が抜けて自分の体の負担を減らせると同時に、いつの間にかシャンプーの「大事な工程」を省くこともあります。良くも悪くも、サボれるようになるのです。「自分が楽なやり方」と「されて気持ちいい」工程はイコールではありません。

シャンプーマンの多くは、働き始めたばかりの20代前半です。彼らは仕事のやりがいを見出せないまま作業に追われ、「大事な工程」を軽視してしまいがちです。

多くは20代、削られていくメンタリティ

任される仕事はシャンプーだけ、毎日毎日シャンプー。手荒れを起こす人も多く手はガサガサ、指の関節を曲げられないほどアカギレの酷くなった手を、酷使し続けることになります(最近は手袋を付けることを義務化する美容室も増えています)。

画像5

営業後に夜中まで練習、少ない給料でカツカツ。生活するのに必死でカッコいい服も買えず、銭勘定ばかり。カットがしたくて美容師になったのに、中々先に進めない日常。この生活でメンタルは削られ、仕事に影響します。

すると、個人のシャンプーに対する意識の差が露呈されます。「またシャンプーかよ」「疲れた、やりたくない」「やりたいのはシャンプーじゃなくて、カットなんだよ!」そんな気持ちは作業に現れ、どんどん雑になってしまうのです。

美容師に成りたいと思った、あの頃

美容師という仕事は、成りたいと想い、憧れて就く職業です。お洒落に興味を持ち、美容室でカッコいい美容師さんにカッコいいヘアスタイルにしてもらった原体験から、2年間専門学校に通って国家資格を取得して、初めて仕事に就くことができます。

そもそも“どうして”美容師になったのか、美容師になって“何をしたいのか”の動機は人それぞれですが、彼らは大きく2パターンに分かれます。

それは「誰かをカッコよくしたい」のか、「自分がカッコよくなりたい」のか。

画像4

自分もあんなカッコいい美容師さんに成れるんじゃないか?美容師さんになったらモテるんじゃないか?キラキラしたお洒落な空間で仕事したい。

僕も「ビューティフルライフ」のキムタクを、小学生の頃に観ていました。最初の動機は不純かもしれません。ですが僕もまた、雑誌に出てくる美容師達が読者モデルとして活躍している様を見て、美容師を目指した一人です。

今であればInstagramでお洒落な日常やヘアスタイルの写真をアップし続ける美容師さん。キラキラした彼らに憧れるのは、当然です。

美容師に必要なマインドとシャンプーの関係性

理想と現実とのギャップから、“利己”的になってしまう20代。僕も、怠慢なシャンプーで常連のお客様を怒らせてしまったことがあります。

美容師に一番必要なマインドは、「相手に喜んでもらいたい」と考える“利他”精神です。自分が毎日、何度も繰り返すシャンプーに対して「気持ちいいシャンプーをしよう」という心持ちで臨めるかどうか。

画像6

この利他精神は、美容師を続けるうちに獲得できるものです。最初こそ不純な若者でも、お客様に関わるごとに備わっていくマインドだと思っています。

常連のお客様に謝罪をした際に「そういう時期だものね」と温かく受け止めてもらえたことを今でも鮮明に覚えています。その後もその方へのシャンプーは、特に「認めてもらいたい」一心で励んでいました。

有名美容師さんが言った「シャンプーが上手なアシスタントは、一流のスタイリストになれる」は、「しばらくシャンプーマンでも、腐るなよ!」という檄でもあったのではないでしょうか。

相手を喜ばせたい気持ちがある人が、上手なシャンプーをできる。これは普遍的なことかもしれません。


Twitter、Instagramのフォローもよろしくお願いします。


ではまた。



いいなと思ったら応援しよう!