クラシック、だいじょばない。いやいや。だいじょうぶ
Perfumeに「だいじょばない」という楽曲がある。「LEVEL3」(2013)というアルバムに収録されている。
大好きな曲で、いまだによく聴いている。
ところで、Perfumeではなく、クラシックの話である。
クラシックは人並みに聴いてきたし、名盤と呼ばれるCDも聴いてきたが、実のところ、実演奏の経験がない私には、演奏のよしあしはわからない。アマチュアの団体の演奏なら、そりゃトランペットがヘンな音を出したとか、ヴァイオリンが不協和音のような音を出した、などはあるだろう。だが、いやしくもメジャーのレコード会社からCDを出しているクラスのオーケストラで、演奏がずれていたとか、トランペットがへまやった、というのはないだろうと思う。
だいたいそんな演奏は、レコード会社がCDにしない。
そんな私でも、演奏について、わかることがある。それはテンポである。同じシンフォニーでも、ゆっくり演奏する指揮者とやたらに速く演奏する指揮者がいる。そこでの、好ききらいはある。この曲のこのパートのメロディは速くやってほしくない。あるいはうたうようにゆっくりやってほしいな、など。
私の判断基準は、そこだけだ。
ずいぶん前に出版された本で恐縮だが、松本大輔さんの「クラシックは死なない! -あなたの知らない新名盤」(2003・青弓社)という本を読んで(「それでもクラシックは死なない!(2006)「やっぱりクラシックは死なない!」「まだまだクラシックは死なない!」(2011))」「どっこいクラシックは死なない!」(2014)というシリーズになっている)、ちょっとびっくりした。
著者は、WAVEやHMVのクラシックバイヤーで、店長を経て独立して、アリアCDという通信販売のCDショップをやっているそうである。その略歴からもわかるように音楽批評家や音大の先生ではない。クラシックCDのバイヤーだ。ただクラシックがものすごく好きで聴きまくり、身もだえするように紹介している。その様子がありありとわかる。そのエネルギーが、すさまじい。クラシックって、こんなに思い入れができる音楽だったっけ? 愕然とするくらいだ。
目次だけを抜き出し出してみる。
たとえばこれ。
発狂/壮絶演奏 オーケストラを血祭り トスカニーニ
1941年の『第9』 音は最悪、演奏は異常 クレンペラー
「オーケストラを血祭り」ってなに? トスカニーニは何をしたの?
「音は最悪、演奏は異常」ってなに? クレンぺラーはどういう演奏をしたの?
興味しんしんではないか。
以前(といっても数十年前だが)クラシックのCDの実売数は、日本では、1、000枚~2、000枚だと聞いたことがある。ああ、そうなのか。それを聞いて、ため息が出るようにそう思ったものだ。でも、そのなかには、狂ったようにその音楽が、大好きなひとがいる。
そういうひとを、私は無条件で尊敬する。
そして思う。ああ、だいじょうぶ。そういうひとがいるのなら、だいじょうぶだ。
クラシック、だいじょばない。いやいや。だいじょうぶ。