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はじめての老い -見つめたくない滑舌-

この「はじめての老い」という原稿のシリーズは、老いの初心者であるところの私、伊藤ガビンが、自分の身に起こる日々の変化とそれに対する雑感をだらだら書くものであります。いや、だらだらしか書けないのですね。加齢のせいにしたいところですが、どっこい昔からだらだらしか書けないだけであります。
今回のテーマは滑舌です。よし書くぞ。

あのアスリートでさえも…

加齢とともに自分の体に起こる変化の中で、私が常々じんわり気持ち悪く感じているのが「滑舌が悪くなる」ことなんです。
これについては、同年代をあんまり話したことない。どうなんでしょう。みんなはどう思っているんだ。気にしてないのだろうか? 私は、かなり気持ち悪いというか、できれば自覚したくない向き合いたくない無かったことにしたい忘れたいhold me tight、みたいな気持ちです。

滑舌の悪さ。舌の回らなさ。ろれつの回らなさ。これに真面目に向き合うとどんよりした気分になるんです。ああ怖い怖いこの原稿書くのも怖い。あとあつ~いお茶が怖い。
だが現実には、来てますね。

50歳を過ぎたあたりから、ひたひたと忍び寄ってくるんですよ。自分がしゃべっている瞬間にね、あ、いまうまく回らなかった、もたついた、老人特有のぬめりが出た、などなど。これを瞬間瞬間に感じてしまうと、いま話している内容から一瞬注意が逸れてしまうんですよね….。

人のしゃべりでも「回らなさ」に反応してしまいます。

テレビを見ない生活になって久しいのですが、定食屋やらなんやらで年に何度かリアルタイムのテレビ視聴をすることがあります。すると、むかし知ってたタレントさんたちが、自分的にはタイムマシーンに乗ったかのように10年後の姿で現れたりするわけですよ。そうするとビックリしちゃうわけよね。特に私は、むかしといまの滑舌の違いに大いにひっかかってしまう。そんなところに注目してほしくないでしょうけれどね…タレントさんにとってみれば、失礼しちゃうわな話であると思うんだけど。

失礼しちゃうわで言えば、このタイムマシーン問題は私なんかでさえ、X(きゅうついったー)とかで、ちょっとリポストが多い発言をすると
「え、伊藤ガビン? なつかしー、久しぶりに見たわ、老けとる!」
とか言われるわけ、失礼しちゃうわ〜。こっちはこっちで普通に生きて普通にヨワイを重ねてきとるわけですわ。

でもまあ、久しぶりに見た人に、これまでの自分の中の「像」との差分を感じてしまうことに良いも悪いもない。ただ差分を見てしまうだけのこと。問題はそこからの行動でしょう。

滑舌の話に戻すと、定食屋でアジフライをシャリシャリ食べていると、むかし14インチのブラウン管がぶら下がってたあたりに65インチのツルピカの液晶テレビがあったりして眩しい。そこにはハイレゾの黒柳徹子さんが部屋でしゃべってらっしゃる。黒柳さんは91歳。ビシッと座っておしゃべりしている姿に感動してしまいます。
そしておしゃべりの中身よりも滑舌のことを考えてしまう。
黒柳徹子といえば滑舌界のオータニサンというかイチローかどちらかといえば、どっちでもいいか、とにかく滑舌のスーパーアスリートという思い込みが私にはあります。「黒柳徹子をもってしても加齢には…」と失礼しちゃう感情がもたげてくる。

自衛しかない

自分のことに話を戻そう。なぜ私はこんなにも滑舌が気になるのだろう。
私の滑舌なんて誰も気にしていないわけですよね。だから私自身も、そもそも気にする必要がないはず。ただ残念ながら、自分の滑舌とご対面する機会が私には結構あるのです。
大学教員という仕事をやっとりますと、人前にしゃべることが日常なんですね。加えて、コロナ以降オンライン授業というかオンデマンド授業という名のビデオ録画授業があるんです。多い学期では週に2コマ。つまり90分x2のビデオを作っている。そしてそれを少し編集するために、自分のしゃべくりを聞いたりするのです。厳しい…これは厳しいですね。

さらに私、映像がらみの仕事も少々やっとりまして、人のナレーションを録る機会などが度々あるわけですよ。この時には職業的に耳をすませてド集中して「声」を聴くことになりますね。そして、ちょっとしたもたつきや、妙な音を聞き取って、リテイクの指示を出したりすることになりますね。具体的に書くと、ふだんは気にならない唾液の音や、唇がこすれる音などに耳をすませるわけです。リップノイズって呼ばれるやつですね。編集時にもそうした音を拾って消したりしとるわけですよ。秋の夜長の虫の声に耳をすませたいタイミングで、カッサカサの唇の音や唾液の音に耳をすませているというね。
そうした職業上のクセのようなものが、自分の授業動画を視聴するときにも自動的に発動してしまって、ウワ〜、このおじさん、滑舌わる〜〜〜〜い、と思ったりしちゃうんですよたすけてー。

この原稿は、加齢によって「これ来るの聞いてなかったナ〜、しかし私のからだには来たな!」 というものを中心にとりあげたいと思っているのだけど、滑舌については、ちょっとそれともずれています。滑舌問題、もうちょい後にガック〜ンと来るとは思ってはいたけれど、兆候が現れるのは結構早いんですねえ、とかそういう現場からのレポートです。

全身の筋肉の衰えに先んじて口の中が衰えるのである、っていう話があって、それ考えると滑舌が悪くなるというのは「前兆」って感じがして怖い。口腔のアレコレの衰えを、まとめてオーラルフレイルって呼んだりしますね。滑舌が回らなくなるってことは、口の中の機能が落ちているってことで、話すための機能だけじゃなくて、噛んだり、飲み込んだりする機能とも関連してきちゃうよ。滑舌が悪くなることは侮れないですなあ、と思う昨今です。
ただ、前もって、口腔の環境を鍛えて自衛することはある程度できるみたいですよ。やりましょう。口腔自衛隊です。
「オーラルフレイル対策」で検索すると、体操などがたくさん出てきますよ!検索してみんなも怖くなってみて!!



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