父との別れを意識した娘の気持ち
父との別れを意識するようになってから
夢にまで父が出てくる。
愛おしくてたまらない我が子たちと過ごしていても、
友達や夫と楽しく話をしていても、
ふとした瞬間に父のことが頭をよぎり
胸がぎゅうっと締め付けられる。
父ががんになった日から、
そう遠くない父との別れを覚悟していたはずなのに
「来年の花火も一緒に見たいな」
「上の子が小学生になるのを見れるかな」
そんなふうに欲深くなっていた自分がいた。
私の結婚式で一緒にバージンロードを歩けた。
家族で旅行もできた。
孫を見せることができた。
兄も結婚し、孫を見せられた。
私も二人目の子を無事出産した。
たくさんたくさん、
父との願いが叶ったはずなのに。
2024年10月のある日。
父が急遽入院した。
元気だと思っていた父が、
この1ヶ月で急に食欲がなくなり、
息切れも増え、
手足の痺れにより歩くのが困難になってきていたことを
知ったのは父の入院の知らせを聞いた後だった。
父はそれまでずっと通院は一人で行きたがり、
病状について母も私たちも詳しくは聞かされていなかった。
「大丈夫だから」と。
しかし、
今回はいよいよ状況が良くないらしい。
母も一緒に説明を受けることになった。
今まで飲んでいた癌の増殖を抑える薬が効かなくなり、
抗がん剤の治療を受けていたが、
痺れが出てきたことで使用を中止。
そして、脳への転移、しかも髄膜播種という
厄介なものらしく放射線治療もできない。
父の手術からずっと診てくれていた担当医が
緩和ケアや在宅医療を考えるように
説明をしたらしい。
緩和ケアと言われると、
「死期が近い」とどうしてもイメージしてしまう。
父も「まだまだ生きたい」と
「治療がしたい」と言っている。
どうしたらいいのか、
私たち家族は父に何をしてあげられるのか、
最期には「幸せな人生だった」と思ってもらえるような
看取りをしたい。
そんなことを考えながらも
「急に特効薬が出てこないか?」
「癌がなくなりました!」という奇跡が起きないか
いまだに期待してしまう自分がいるにも事実なのだ。
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