本を読むようにゲームを遊びたい
このマガジンでも何度か書いているけれど、自分はシングルプレイのゲームが好きだ。というか、仕事を抜きにしたプライベートでは、基本的にシングルプレイしか遊んでいない。
もちろん、マルチプレイのゲームを否定する気はまったくないし、仲間内でワイワイ遊んだりするのも、時々やるならとても楽しいと思う。格闘ゲームのような対戦プレイはそんなに得意ではないけれど、eスポーツの中継なども含めて、他の人が遊んでいるのを見るのはむしろ好きだ。
でも。
自分にとって「ゲーム」とは、やっぱりシングルプレイのゲームだ。それはたぶん、自分の中ではこう考えているからだと思う。
「本を読むようにゲームを遊びたい」と。
ひとりで本を開いて文章と向き合い、そこで描き出される世界に想像力を羽ばたかせるように、自分はひとりでゲームに向き合いたい。自分以外はNPCしか存在しない世界で、自由に過ごしていたい。そういう意味では、ひとりになりたいからこそ、ゲームを遊んでいると言えるのかもしれない。
マルチプレイが嫌いなわけではないように、他人と接することが別にイヤなわけではない。というか、インタビュー中心のライターという仕事をやっている以上、人付き合いが苦手だと仕事にならない。
ただ、他人と一緒に過ごすのは楽しさもある反面、ストレスもある。そんな時に、ひとりでリラックスして自分を解放できる場所。自分にとってゲームとは、本や映画や音楽と並んで、そういう存在だ。
もっと突き詰めて言うと、ゲームの中でまで、他人に気を遣うことをしたくないのだと思う。ゲームプレイといえば、試行錯誤がつきものだ。最近流行の「死にゲー」に限らず、何度もプレイをやり直したりする際に、自分だけならある程度諦めがつくものの、協力プレイなどで他人を付き合わせてしまうことになると、申し訳なさが先に立ってしまう。
対戦プレイにしてもそうで、勝ったら勝ったで、負けたら負けたで、どこか申し訳なさを感じてしまう。そういう気持ちはお互いさまなので、全力でぶつかり合えばいいのだ、と言う人もいるだろうけど、そのへんの心理的バリヤーを乗り越えられないのが、文化系育ちの悲しさだ(笑)。
繰り返しになってしまうけれど、別に現実世界で他人と接することがイヤなわけではない。ただ、他人と接する楽しさも苦痛も、現実世界で十二分に味わっているわけで。そんな現実から離れるためにわざわざ起動したゲームの世界でまで、他人の視線を気にして過ごしたくはないのも正直な気持ちだ。
本を読むようにゲームを遊びたい。本を開くようにひとりでゲームに向き合い、ページを夢中でめくるようにゲームの世界に引き込まれていく。そして本を閉じるようにゲームを終了した瞬間、心地よい疲労感と共に現実世界に帰ってくる。自分はそんな体験を求めてゲームを遊んでいる。
MMORPG、ソーシャルゲーム、協力プレイに対戦プレイ。たしかにゲームを通じたコミュニケーションは人気だし、ビジネスとしても成功しているのかもしれない。でも、だからといってシングルプレイのゲームがこの世から姿を消してしまったら、現実世界で他人と接するのに疲れた時、自分はどうすればいいのだろう? ……本でも読めばいいのかな?
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