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アイデアの原石にアプローチする

これまでデザイナーさんからご連絡をいただくとき、『こんな素材ないですか』と、探し物が具体的に見えているアプローチのお話が多かった。

「それだったらこの産地、こちらの工場さんに行きましょう」とか「そのケースならこちらの会社さんが備蓄していますよね」といった感じで、その案件ごとに精一杯貢献するのが弊社の役割のひとつだった。

しかしここ半年くらい、立て続けに多かったのが具体的な探し物があるわけではなく、開拓と実験要素の多いお話。

①そのブランドに合いそうな(他であまりまだ出ていない)表現探し
②とにかく足を使って、時間の限り工場を回ってみる

というようなお話。①の場合、そのデザイナーさん(生産担当)と話を詰めながら、合いそうな技法や技術をこちらからも提案してブレストを重ねる。工場さんの持っていたアイデアや技術の世に出る機会と資金待ちの原石にアプローチをすることも多い。糸口が見つかればすぐに工場に足を運んで試行錯誤、実験、試作していく。 ②の場合は新規リサーチと商談、開発。この時、足を使うといっても手当たり次第みたいな感じは効率が悪すぎるし両者の負担が大きくなるので、おそらく多少はお役に立てている。

そういったことにウェイトを置くデザイナーさんがじわじわ増えてきたのか、想定外の素材の働きの必要性が高まっているのか、たまたまそういった話が集まっただけなのか。世の中でまだ具体化されていないものを探し出して、技術そのものやまだ完成していないアイデアにまで遡ってアプローチしようとするデザイナーさんの動き。デザイナーさんと職人さんの二人三脚の継続からこそ本当に面白いアウトプットが生まれると思っているので、僕としてはそういうデザイナーさんが増えれば増えるほど嬉しい。

①や②といった案件はブランド側にも負担もあって、工場側も乗れる話と乗れない話がある。時期にもよる。そして開発が形になるとは限らないのは両者のリスク。サンプルはできたけど展示会には並べられないという半完成というケースだって多い。そもそも予定内で完成する可能性の方が低いとも思う。

その時、糸でも平面でもたたき台があるとイメージが大きく進むので、各地の工場の方々が密かに温めているアイデアを、構想段階からたたき台となる素材へと具現化しておくような働きかけ(工場の方がするというより外部の仕事として)がこれから重要である。国内で、0から1を作るうえでとても重要な素材となる。そしてそれが国内生産の価値を再定義していくことにも繋がる。しかしこの時代、時間とお金をかけにくいそれを積極的に重ねる人が極めて少ないのも事実。

可能性と危険性、メリットデメリットはいつだって背中合わせ。ピンチはチャンス、チャンスはピンチ。

蓄光糸の画像は、新潟の企業さんのとある技術。


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