一人男の娘AC-15：「カイチュー！」雑語り

ティーカップ横綱　一人 Advent Calendar 2020の十五日目の記事です。

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カイチュー！ 1 (ヤングジャンプコミックス)

「カイチュー！」という作品をご存知だろうか。かつてヤングジャンプで連載していたもののWEB版に島流しされたと思ったらWEBアニメが2作作られてその上で打ちきりになるという数奇な展開を迎えた弓道マンガである。

話としてはこうだ。考える脳がなかったのでまんが王国から引用した。

夢は全国制覇。凄腕の弓道少年・立川は、あこがれの選手・不動権三郎を追いかけて、小田川高校弓道部に入る。だが、そこで立川が見たのは、予想だにしない不動の姿だった…！　弓と袴と恋心、ニュータイプ弓道ラブコメ、ここに開幕！

ま、このアドカレで紹介する以上そりゃそうというところなのだが…弓道界の名選手、不動権三郎が実は男の娘で、かつ立川をずっと狙っていた…という展開なのである。

WEBアニメ版ではこのゴンちゃんの事は「男の娘」ではなくやたらと「オカマ」と言っていたが、偏見以前に「男の娘（おとこのこ）」という言葉が声に出しても区別しにくいという事情が伺える。まあただ、最近ではクレヨンしんちゃんですらオカマという言葉は使われなくなっているらしい。へー。

弓道界は男の娘まみれ？

この作品の何がエロ…偉い、というより今も評価できるのかと言うと、男の娘キャラを出し女子キャラと同様の扱いをしながらも「男子弓道部」の部員としてもキャラ立ちさせていることだ。ゴンちゃんは日常パートでは完全に女子グループの一員であるが、部活動パートではしっかりと「男子弓道部」の一員である。多くの男の娘もののマンガではこの点については凄まじくぼかされがちな点なのである。女装学園（孕）でもそういう描写があった気がする（でも女装学園（孕）の世界男と男の娘を別性別扱いしてるから多分部活動とかも別にありそうなんだよな…）

さらに、作者の趣味なのか男の娘キャラは他にも出てくる。ゴンちゃんの身内に。ゴンちゃんは弓道の才能がありすぎて実家を破門されたという過去があるのだが、よりにもよって破門されたその日にプレゼント（コスメ）を渡そうとしていたゴンちゃんよりも弓道の才能がある弟がいたことが中盤発覚する。渡す相手がいなくなったので自分に使い出したらしい。そんでもって兄相手に女装でも弓道でも負けないみたいな宣言をしたりしている。動機からして兄と違くない？そんでもって弟の通う高校はラスボスとして登場するわけだが、その直後に打ち切り。一応顔見せとして他の選手の描写もあったのだが、出番があったのはなぜだか全員男の娘だった。そのため「ただ男の娘が多い男子校」以上の印象を与えられなかった天龍高校。多分モデルは東海高校ですが、実際どうなんでしょう。ただ、この描写は単なる作者の趣味とも案外言い切れず、本来であれば白い目で見られてそうなゴンちゃんの女装に対して「競技で強いやつは全員やってるトレンド」みたいな作中の理由付けができているのは興味深い点である。…いや、この世界の弓道界の描写を見る限り多分ゴンちゃんだけでも問題ないと思うし実際現実の弓道界は強豪選手は女装していない（当たり前だろ）。ただ、このマンガアマゾンレビューで「男の娘描写以外は実際の弓道界に忠実」と書かれていたり、弓道に関する描写はかなりガチである。

ゴンちゃんの強気すぎるメンタル

ゴンちゃんのメンタリティも面白い。「心は女の子」という台詞を言いつつ自身の身体に対してはちゃんと自己肯定しており、悩んでいる様子にない。彼女が身体のことで悩むのはそれ故に主人公の立川くんが振り向いてくれないから、その点だけなのである。自分の部活動の所属とか名前については一切気にしていないらしい。強すぎる。まあ何もしなくても声変わりも起きずすね毛も生えない体質らしいので他作品でそこらへんを悩んでいる男の娘とは一線を画すわけだが（と、ここまで書いた時点でそもそもアニメ化とかまでこぎつけてる男の娘でその部分悩むキャラそんなおらんくね？ということに気づく。いささか強引な解決手法だと思わなくもないが、現実にも声変わり起きなかったりすね毛生えなかったりする人はいるので100％ファンタジーと強く主張する気にもなれない）。

特に名前の点に関しては他の作品でも類を見ない。普通の男の娘作品でも名前というのは女性的な方向に逃げる。（名前になんか足したりなんか引いたり、ぜんぜん違う名前を名乗ったり）まあ大体は男バレが怖いとかそういう理由だが、それ以外にも名前の男性性に対して拒否感を覚えるなどそういった理由もあったり、男時代の自分との決別という意味で変えてたりする人もいる（名前のジェンダーに関しては普通に現実世界でもいろいろ問題があったりする）。が、ゴンちゃんは権三郎という名前を全く隠しもしない。さっき言ったようにゴンちゃんが身体について悩むのは意中の人に相手にされない以外では全く無い。どんだけ自分に自信があるんだ、ゴンちゃん。そもそも他人からの第一印象が満場一致で「かわいい」だったりするとこういう強者ムーヴも可能だったりするのかなぁと思ったり。半ばギャグ的に通されてはいるが、自分の名前にこれだけ肯定的になれると幸せそうだなと思いました。

ここまで色々書いといて最後に台無しになりそうなことを言うが、まぁ、顔だよなぁ…現実世界で同様のムーブが起こせる人間は未だそう多くはない。…でもなんかいつもこのオチの付け方してない？平気？