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置いていかれた靴
毎月300字小説企画
第4回 テーマ 靴
その重さでさえ苦痛だったのだ。
軽やかに走りたいと君は庭先に踏み出す。
裸足で水溜まりを蹴散らして、ほら、と笑う。降り注ぐ雨などものとせず、張り付く服に不快を見せず、ひたすら受け止めようとする顔に言葉が何も浮かばない。
土が跳ねて礫が飛んで白い足を汚してく。例え血だらけになっても構わないのだろう。そうしてすべて置いていくのだ。
踏み石に放置された靴は寂しげで、勝手に仲間意識を持ってしまう。この調子では気が済むまで戻ってこないに決まっている。
風邪をひくならまだいい。けれどこれでは曝け出されたまま掻き消えてしまいそうだ。
ため息ひとつ溢して、タオルと温かいココアを取りに行く。
帰る場所はここでありたかった。