選と濯
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第六十九回 お題 「選」
こっちがいいと、貴女は云った。毛布が洗えるものがいいと。
二人で選んだ洗濯機は、音を立てながら2LDKの部屋の中で僕を圧迫する。
かつて、この部屋では二人の生活が回っていた。自分のものではない音と匂い。帰宅時に明かりが点いているのが嬉しかった。
今はそこかしこに一人分の物だけが散らばっている。
親しみすぎた匂いだけが残り香となって漂っている。それももう、見慣れてしまった光景だ。
納得はしている。応援もしている。
それでも、頭は気持ちに追いつかない。
廊下の向こうでは洗濯機の音がする。
もう大分年期が入ったそれは、時折不審な音がしてきた。ピーと終わりを告げる機械音がする。
ああ、次はもっと小さなものにしよう。