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壱宍 (若槻きいろ)
2020年10月1日 08:31
言葉より大切なものはないと言いながら、貴方は刃で言葉を刺した。あんなに大切にされた言葉は、無残にも呆気なく崩れ去ってゆく。そうして貴方は居なくなった。そうだ、一番だろうが縛りは無いのだ。楔になれぬものの残骸が首輪の様に自分を繋いだとて、人は簡単に振り払える。幾重にも重なる重さに潰され囚われたなら、どんなに普通を知れただろう。熱のない両手を開いて空を仰ぐ。そうだ、この冷たさが僕等なんだ。