見出し画像

ゲーマー歴37年のダンジョン紀行#40 『インスタンスダンジョンとは』

▼時間に追われる現代で、求められる物。

 最初に、申し訳ありません!
 今回の記事はデジタルゲームFinal Fantasy(以下略:FF)を中心にダンジョンの話をさせて頂きます!
 11月に迫ったゲームマーケットに向け、ダンジョンゲーム制作の参考にアナログ・デジタル問わず様々なゲームを参考にしている最中、ダンジョン要素をピックアップしている所で研究対象になっていたためです。

 そう、昨今はアナログゲーム・デジタルゲーム……他、遊びたい物がたくさんあるのに、いくら遊んでも時間が足りない!
 ゲーマーの皆様は、日々そんな想いに追われていることでしょう。かくいう私も、その一人です。「自分の趣味嗜好から絶対にやりたいゲーム」もあれば、「新しい試みを感じて遊んでみたいゲーム」、「話題になっていてアンテナに引っかかったゲーム」、「知り合いに進められて触っておこうと思ったゲーム」や、「作品の〇〇が気になるが未知のゲーム」など、その積んでいる山にも様々な種類があると思います。特に私は「作品のダンジョンが気になるが未知のゲーム」がたくさんあります。

 そんな時間の無い現代において、ゲームにおけるダンジョンは、
・物語における目的を抱いてもらい
・繰り返す能動的選択に頭を悩ませ
・リソースを削ってじりじりと緊張感や臨場感を味わう方法
など。本格的にするほど下準備と体験に時間のかかる舞台装置となっています。そして、これらに時間を掛けることは、娯楽として選ばれにくい理由にもなってきています。世の中にはゲームだけでもたくさんのジャンルがあり、アナログにボードゲーム、TRPGに耽溺している人もいるし、デジタルゲームは全く別で、FPSや格闘ゲーム、あるはアプリゲームなど、全く違う体験を楽しんでいる人も同じ”ゲーム”と言うジャンルを楽しんでいることに変わりありません。その中で、RPGをわざわざ選ぶ人、ダンジョンを楽しむ人は生半可なダンジョンでは満足しません。当然、他の芝生から見たらジャングルのようなダンジョンを楽しんでいるコアな層はどんどん高みに登っていってしまいます。
 では、ダンジョンは深まるばかりなのか……と言うと、もちろんそうではありません。ダンジョンの楽しい要素は抽出され、体験が圧縮されている作品もあります。
 今日は、そういったダンジョン体験の抽出、圧縮されている例として、JRPGの古典の一つ、FFの最新作が挑んでいるインスタンスダンジョンと言う概念を見ていきたいと思います。


 『アナログゲームマガジン』は、アナログゲームに精通した執筆陣が集まり、一ジャンルを詳しく解説する記事や、ゲームの攻略記事、ルール記述の記事、はては第一線で制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っているマガジンです。最初の一か月は無料期間で、以降500円ですが、魅力的なアナログゲームなどの記事が読めるので是非チェックください。※しかし、当記事は最後まで無料で読めます。
 私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色のコラムとして、楽しんでもらえたら幸いです。



▼B114F:切り分けられたダンジョン

Final FantasyⅩⅣ・ⅩⅥ:インスタンスダンジョン(ID)

 日本の大作RPGと言えば、DQ・FFと名前が挙がるのは今は昔――とは言え、オンラインであるFinal FantasyⅩⅣ(以下:FF14)や、最新作Final FantasyⅩⅥ(以下:FF16)の人気は今も健在です。そんなFFですが、いまのダンジョンはインスタンスダンジョンと呼ばれ、昔のFFとは大きく変わっています。辞書的に言えば、「Instance」事例実例と訳されることが多く、実際に存在する物事を引き合いに出すぞと具体性をもって「実例」とする際に用いられる単語です。

 では”インスタンスダンジョン”とは何なのか。
 簡単に説明すると、一度アクセスしてしまえば、どこからでもメニューを開いて突入することができるダンジョンのことであり、約15分で一周できて、繰り返し遊ぶことを目的とした短いダンジョンです。
 過去のFFでは「フィールドマップ」があり、その下の層にアイコンや移動を経て「タウンマップ」や「ダンジョンマップ」に移行し探索していく形でした。移動までにHPやアイテムが削られてしまうのも懐かしいですね。
 FF14/16も大枠は近いのですが、物語を経て、新しい大地へ踏み込み、”ダンジョン”に行き着いた後は、「インスタンスダンジョンのメニュー」に項目として追加され、どこからでもそこに”突入”することで、ダンジョン攻略~ボス戦までを味わえるコンテンツとして切り分けられています。
 ダンジョンの中もかなり切り詰められており、ほぼ全て道は一本道ですし、ボスも1,2,3匹出てくるのが定型になっており、3匹目のボスを倒せばクリアが確定されています。これは複数あるインスタンスダンジョンのどれもが同じ構造になっています。右に行くか左に行くか、様々な仕掛けを解いたり、何度も敵とエンカウントすると言った仕掛けは基本的にありません。

 しかし、これこそ繰り返しプレイされて楽しめるように仕組まれている最新FFの特徴となっています。

 FF14で言えば、オンラインゲームと言う特性上、日々様々な進行度のプレイヤーが遊んでおり、ダンジョンも初めてのダンジョンから最新のダンジョンまで、いまや数は100を超えています。それがメニューから突入するだけで、NPC、あるいはランダムマッチの上で最適な形で攻略が開始されるようになっています。その為、ダンジョン内で考えるのは戦闘の処理に集中され、「どのように敵を処理するか」「自分のジョブの役割を果たす」ことに集約されます。
 熟練したプレイヤーは不慣れなプレイヤーの初めてのダンジョン体験をサポートしつつ、熟練したプレイヤー同士が集まれば敵の処理の最適化に努め、不慣れなプレイヤーで集まればお互い横並びで力を出し合うのは楽しいものです。また、熟練したプレイヤーは不慣れなプレイヤーと定期的に一緒になることで、自分の冒険を振り返るきっかけなどにもなり、思い出を風化させることなく保持する役割も担っています。RPGにおいて、物語体験を他の人と共有するのは当然楽しいものです。

 FF16においても、上記のダンジョン構成はかなり近いものがあります。ソロプレイゲームのためダンジョン攻略は自身のみの体験ではあるものの、アクション要素が中心に据えられたことで、自身の腕前が上がっていく面白さがわかりやすくなっています。またタイムアタックやスコアアタックも導入され、RPGには無かった要素を上手く活用しています。一方で、ソロゲームだからこそ、従来のFFシリーズのような取りずらい宝箱などもありつつ、取り逃してしまった宝箱を回収すると言う場合も、従来より手軽にできるのは嬉しい点です。

 このように、ダンジョンと言う舞台装置がかなり簡略化され、「戦闘」に特化された体験にされています。

 確かに、未知の空間に踏み込む高揚感や、初めて出会うボスとの緊張感、物語としてその場を体験するのは、RPG(ひいてはダンジョン体験)においては一度きりしか起こらないことです。オンラインゲームの核を、その”一度きり”に置くことができないのは言うまでもありません。オンラインゲームの体験として考えるべきは、体験を経たあと、体験したダンジョンを過去として振り返った際、”この場所は格好良かった”とか、”もう一度見に行きたい”、”強敵だったけど次はもっと上手く戦えるだろう”など、繰り返し遊んでもらう為の”良い思い出”として振り返れるようにすることでしょう。
 つまりインスタンスダンジョンとは、
・FFらしい、物語性の上で訪れる場所としての一つの体験。
・区画として再訪したいと感じさせるビジュアル面での楽しみ。
・繰り返すことで上手くできるバトル面での楽しみ。
・それらが様々な人と簡単に追体験ができる。
  :
  :
 など。
 こういった楽しさを切り分け、手軽に遊べるようにしたダンジョンと言えそうです。


インスタンスダンジョンの”ダンジョンらしさ”とは。

ここから先は

2,350字
7人以上のライターが月に1本以上、書いています。是非、チェックしてください。

アナログゲームマガジン

¥500 / 月 初月無料

あなたの世界を広げる『アナログゲームマガジン』は月額500円(初月無料)のサブスクリプション型ウェブマガジンです。 ボードゲーム、マーダー…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?