ゲーマー歴36年のダンジョン紀行#18 『ゲームマーケット2022秋の新作ダンジョンをチェック!』
すっかり冬の日差しになった11月。日差しは気持ちが良いですが、上着をしっかり着ないと風が冷たい季節になりましたね。
先日は2022秋ゲームマーケット(以下ゲムマ)お疲れさまでした。二週間がたち、ゲムマで手に入れた作品を遊べた方も多いのではないでしょうか? SNSでは感想合戦が落ち着きを見せた頃合い、いまこそ改めて、遊んだ作品の感想を広めたい時期です。
『アナログゲームマガジン』は、アナログゲームに精通した執筆陣が集まり、一ジャンルを詳しく解説する記事や、ゲームの攻略記事、ルール記述の記事、はては第一線で制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っているマガジンです。
私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色のコラムとして、楽しんでもらえたら幸いです。
ゲムマ直前にチェックした作品のダンジョン要素を確認・分析してまいります。2022年最新のダンジョンシーンを確認できればと思います。
※製作者様のお名前は、ゲムマHP記載の製作者様、もしくはサークル名を挙げております。訂正等ありましたら、随時K_imuまでお知らせください。
Twitter:@K_imu
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▼B61F: ダンジョンが登場する作品
【私は一人、ダンジョンで目が覚めた】
ダンジョンから脱出する形のゲームですね。上記は説明書の「ゲームの概要」より抜粋いたしました。「ダンジョン・ストーリーカードはゲームで使用するか条件を満たすまで表面を見ないようにしてください!」と言う注意書きもあります。物語性の部分にも力を入れているようです。
プレイヤーは、自分の体力・アイテムなどのリソースを上手に使いながら、表裏の描かれたユニークカードで構成される「ダンジョンカード」を進んで行くゲームです。ご本人が始め方をnoteにまとめていらっしゃるので、参考にすると簡単かもしれません。
難易度も1~3段階に用意されています。練習にしては1から歯応えのある内容に感じました。ダンジョンカードにはストーリーとその結果が伴い、ゲームブックを進んで行くかのような感覚をおぼえます。
また、脱出が主眼になっています。ダンジョンの構成要素として、いくつかを繰り返し挙げさせてもらっていますが、大目的は”脱出”となっているダンジョンです。
また今回のゲームマーケット2022秋において、「ダンジョンから脱出」を目的に置く作品が複数あることは、先に申し上げておきたいと思います。
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【Dungeon Dice Online】
スキルを活用しながら、ダンジョンを進んで行く。敵を撃破していくことで階層が進み、さらにはスキルも増えていく。王道のJRPGのような進行で、全5階層のダンジョンを攻略するダイスゲームです。スキルの発動は、王の請願などと同様に、ダイス5個を振り、その出目によって発動できるスキルが決められると言うルールです。
スキルは発動に必要条件がある他、ダイス目を操作したりと拡張がされます。敵を倒していく爽快感、ランダムなダイス目に一喜一憂しながらボスを倒していくのは、まさに電源ゲームにあるようなプレイ感を再現しているようです。また、敵を倒して勝利点を稼ぐ対戦型のルールと、力を合わせて階層を攻略することを目的とした協力ルールが用意されていました。
こちらのゲームはダンジョンと言うのはルール的な説明で、空間的な指定や表現がある訳ではありません。ダンジョン内の空間構造が無いと言う点で、昨年の#07の記事で遊ばせて頂いた【メイドインダンジョンーメイドたちがダンジョンに挑むようですー】などを思い出します。敵との"戦闘"に視点を置いた作品です。
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【だんじょにんぐべい!】
一人用のダンジョン冒険ゲーム。ダンジョンの構成となるカードをめくりながら進んで行きます。この序文からわかる通り、【火吹き山の魔法使い】などのオマージュを感じられ、ダンジョン紀行としてはテンションがあがるところです。
コンポーネントはカードで完結されており、体力の処理・階層の処理・モダンジョンの処理・アイテムなど、表裏や上下など、上手くデザインされています。またチュートリアルも良く準備されており、小箱を開け、説明書を開き、それに従い封をあけていくことでルールの把握まで簡単にできました。スムーズで非常に良いダンジョンハックです。
難易度の調整も提案されており、体力の増減、また潜る階層の提案もされ楽しく周回ができます。何より、周回するダンジョンにおいて目的カードが存在し、ドラゴンを倒すか、魔法使いを倒すか、それによって変わるのもダンジョン紀行としては嬉しいところです。
製作者様はダンジョン紀行を御覧頂いたことがあるのでしょうか。と、言いたくなるほど、ダンジョン紀行であげさせて頂いてた”ダンジョン”の要素が上手く盛り込まれている作品でした。
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【ここで装備していくかい?】
タイル配置のダンジョンゲーム。タイルを引いてドラフトしながら、4×4のお店を作成して、ダンジョンのトレンドに合った良いお店を作ろう!
序文から、トルネコやチョコボ、あるいはシレンなどでシリーズ化されている「不思議のダンジョン」を元ネタにしながら、そこで登場する「商人」に焦点を当てた目の付け所の違うソフト。ボードゲームとしては純粋なタイル配置ゲームで良くできています。それでいて、不思議のダンジョンシリーズで登場する「店」を思い出させる形なのがニクイですね。
ダンジョン要素としては、「竜の巣穴」「黒い森の古城」「沼の沈んだ洞窟」などの名称のみで、モチーフとしての登場に留まります。あくまでも不思議のシリーズの知識を前提として、ダンジョン要素のフレーバーを楽しむと言うところでしょうか。タイル配置ドラフトゲームとしての楽しさが担保されているので、「元ネタを知っていると、より楽しめる」そんなゲームでもありそうです。
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【まっくらダンジョン】
電源ゲーム機の描かれたクリアファイルと、ダンジョンマップが方眼状に描かれたマップを組み合わせて遊ぶ紙ペンゲーム。「発想の勝利!」と思わず手を叩かずにはいられない、一目見て往年の電源ゲームで遊んだRPGを想起させるゲームです。アートワークも非常に優れていますね。
コマンドを入力しながら、ダンジョンを進んでアイテムを手に入れ、敵を倒し、マッピングしながら目的地へ進む様は圧巻の出来。
ドラゴンクエストⅠの「たいまつを使用しながら進む様」を思い出します。
薄暗いダンジョンを手探りで進み、脅威に怯えながら、握った剣に勇気を込める、そんな原初体験そのものです。裏を返せばノスタルジーに溢れてもいますが、”ダンジョンマップ”は印刷することで無限に増殖し、製作者さんへ自作のマップを送ることで、自分で考えたダンジョンを色んな人に広めることもできる。そんな現代の利器も活用した良い発想が詰め込まれています。
ダンジョンとしては、往年のダンジョンのモチーフが強く、特に、名前を出した「ドラゴンクエストⅠ」の影響を大きく感じます。とは言え様々なRPG作品のリスペクトも感じます。
このファイルを中心に、新しいダンジョンマップがどんどん増えていくことを期待したいところです。
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【ダンジョンズミニオンズ】
手元に配下として存在するモンスターで、ダンジョンに配置されているモンスターを倒しながらスカウトし、さらに他のプレイヤーが倒れるように仕向けて行くカードゲーム。
ダンジョンの脅威側に回るモチーフは個性が出ますね。「勇者のくせになまいきだ」など、”ダンジョンと言う概念”が浸透したからこその視点です。少し煩雑な資源を駆使しながら、手元のカードと共通の場となるダンジョンのカードを回していく様は、ダンジョンを育ていく感覚です。
同じボスモンスター同士と言う設定の中、ダンジョンと言う視点で見ると普通に住処、自分のテリトリーと言う扱いですね。ダンジョンの裏側として考えると面白いかもしれませんね。
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【ピコピコファンタジー】
まさしくドット絵が主流であった90年代のRPGを下地に、現代の想像力を載せたファンタジーベースのTRPGです。紙とペン、そして判定にダイスとトランプ2組を使うタイプのルールです。カードをチャージしてスキルを放っていくスタイルで、マスコンバットの戦闘には様々な能力値を含め、かなり歯応えがあり、かつ爽快感のある内容です。
そして大事なことです。しっかりとダンジョンがあります。
シーン制の進行を取られており、シーンの種類として「ドラマシーン」「ダンジョンシーン」「戦闘シーン」の3種類があります。(p30より)
●ダンジョンシーン
ダンジョンはシーンが連続し場面が途切れることがありません。PCは休憩を行うことでシーンを区切りACTカードを補充します。(p31より)
このように記載があります。ドラマシーン、戦闘シーンと大きく違うのは、GM側からシーンの区切りがなく続いていくと言うこと。つまり、プレイヤーたちの選択に主導権が渡されていると言う点です。ダンジョンにおいて重要な要素として「能動的選択」を一つ挙げていますが、ここを強く担保そていると言えます。
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【闇の謔れ(聖珠伝説パールシードサポートブック3)】
名作TRPG「聖珠伝説パールシード」のサポートブック第三巻です。長年愛されている当システムは、ミニマムな作りながら、冒険とダンジョン探索を骨の髄まで楽しめるシステムとして個人的にもとても好きな作品です。
今作は大作リプレイと、3つのシナリオ。そしてSFやサバイバル、東方地方の世界観を舞台にパールシードを遊ぶ為のデータ集や設定が記されていました。
遊べるシナリオには、氷室から洞窟・白亜の塔、そして悪魔の潜む山、森などが収録されていました。シチュエーションはわりとベタなものが多いでしょうか。
ダンジョンの規模としても、小さめの物が多く収録されています。それはある意味パールシードらしさにも捉えられました。ミニマムながら濃厚に味わえるパールシードらしい作りのダンジョンは、一つの娯楽に時短と密度を求められがちな今の時代に、一周回って適したダンジョン規模ではないかと感じます。
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▼B62F ダンジョンかもしれない作品
【若き魔王に捧げる迷宮作成術】
七並べのルールで迷宮を作るカードゲーム。
序文に、「ゲーム会やセッションなどで『まだ来てない人が来るまで何かしていようか……』と言う時間に遊んでほしい(後略)」と、ゲームプレイの想定シチュエーションが書かれている所に好感が持てます。
カードの絵柄が古き良きドット絵の横スクロールダンジョンのようなデザインですね。ファミコン時代のファンタジー横スクロールアクションのゲームを想起させるデザイン……私はリンクの冒険などを思い出していました。
ルールは七並べで理解が簡単な他、数字が1~12まで、上下が繋がっているカードがある。また魔石を用いてカードを交換するなど、モチーフや絵柄に合わせて絶妙に手を入れられているところがただの七並べに終わっていない良いデザインです。RPGモチーフが好きなボードゲーマーが集まるゲーム会なら、一つあると隙間時間にちょこちょこ遊ばれそうな雰囲気です。
ダンジョンとしては、こちらもダンジョンを作る側の視点がモチーフですね。ダンジョンを作るモチーフでは、『部屋を作る』か『脅威を作る』、そのどちらかがゲームシステムの根幹に選ばれている印象です。
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【FOUR KINGDOMS】
四人専用と挙げられてはいますが、紙に絵を描いていくことで進んで行くストーリーテリングゲーム。それぞれが一枚紙とペンを持ち、一つの神話を中心にして、それぞれの国の歴史(サーガ)を展開していく。歴史の展開は筋道がありつつ、トランプを使用することで思いがけない展開が必ず待っている。絵を描いてストーリーテリングとはどうなるのか。と、実際に手に取るまでは疑問の方が大きかったのですが、ルールブックを拝読してとても得心がいきました。
特に、四枚の紙を合わせ、真ん中にまたがるように最初の神話を描く所が素敵に感じました。「太古の昔から、世界の中心には( )な( )がある。それはかつて、そして今もなお人々に( )されてる。」この文章をもとに、神話の核を考えると言う、ゲームのスタート部分が個人的にとてもエモーショナルです。
上記のような一文や指示を繰り返し受けることで、それに合わせて絵を描くので、私のように絵に苦手意識がある場合でも、文字や簡単な記号で紙面を埋めるのも悪くはないように思います。
熱く紹介させて頂きましたが、ダンジョンらしき存在の登場はありませんでした。ただ、ドラゴンや洞窟、神殿などの単語が登場するので、未知なる秘宝の隠し場所として、ダンジョンのような場所を作り出すのはできるかもしれません。ストーリーテリングゲームならではの親和性はありそうです。
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【ハンテッドガーデン】
分岐型小説、いわゆるゲームブックの本舗FT書房さんの新作です。上記に記した通り、10編が収録された短編集になります。ここを拝見すると、「ガルアーダの塔 外伝」「トーンの地下水道」など、一目にダンジョンを探索しそうな作品があり、また他作品も冒険の延長線上に何かしらのダンジョンに潜りそうです。
最新作でありながら、やはりゲームブック独特の頭の中に広がるじめじめとしたダンジョンの雰囲気。そして生み出される臨場感は、やはり他では感じられない独自性がありますね。
例えば「ガルアーダの塔 外伝」は、自称冒険家の男として、あまり恐ろしくない程度の遺跡へ冒険しに行く話でした。おもわず紹介したいオープニングです。
塔に入った途端、気を抜いて寝ているゴブリンと遭遇します。ゴブリンは飛び起きて何をするかと思えば、近くに落ちている適当な物を拾い集めるのです。そしてこちらに微笑みかけ、商売を吹っかけてくると言うオープニング。
ゲームブックの王道をに匂わせつつ、ゲームブックらしい伝統を壊している面白さ。もちろんボードゲームや電源ゲームでもできるでしょうが、展開と選択肢を考えるテンポとして、ゲームブックこそ最適な雰囲気作りのように感じました。
トーンの地下水道では、一度通ったかどうかをチェックする欄があり、その道筋によって物語が展開していきます。ゲームブック自体、何度も繰り返し選択肢を選ぶのが楽しさの一つですが、一度目からそれを味わえるシステム作りが秀逸です。なにより、自身がダンジョンを歩いていると言うその道程が紙面に残る、非常に良いシステムでダンジョンが描かれていました。
ダンジョンのモチーフや作りこそ鉄板ばかりですが、長年の歴史に裏打ちされた新鮮さを感じるダンジョン体験のできる作品でした。
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【ゆーけんクエスト】
可愛らしいイラストを下地に、剣と魔法のファンタジーを舞台とした4名専用マーダーミステリー作品です。TRPGのような意識したストーリープレイングとなっているとのことです。
村を守護していた勇者の剣を探して、街で聞き込みをし、物語が少しずつ壮大に動いていくと言うRPGのお約束的作品です。
「町の人に話を聞く」
と言うドラゴンクエストなどでのお約束を踏まえ、古き良きファンタジー作品の空気感が強いです。
結果的に、ダンジョンを探索するようなことはなく、マーダーミステリートして事件が起こっていき、最終的な真相に対して、どのように調査結果(聞き込み)を使って行くかと言う作品でした。
ダンジョンが特に描かれなかった点はダンジョン紀行として残念ですが、可愛らしいイラストと共に、世界観を彩るフレーバーテキストがたくさん記述された作り込まれたマーダーミステリーでした。
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【崩壊迷宮】
それぞれの目的を持つ探検者となったプレイヤーが、5×4のカードで示された迷宮を探索し、無事に目的を達成して脱出するゲーム。シンプルにまとまりながら、ダンジョンとしての要素が散りばめられているのがいいですね。大目的があり、能動的な選択をし、報酬と障害のバランスが約3:1と、バランスを見ても往年の名作ダンジョンに引けを取らない良い作品になっています。
迷宮を移動し、探索し、脅威を退けながら、目的の宝を狙っていく。カードのみのコンポーネントながら、まさしくダンジョンと呼んでいい空間や状況をあらわしており、キャラクターの固有スキルなどで、非対称な戦闘など、一回のプレイに一期一会の楽しさを産み出しています。
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【PRODUCTION EXABILITIES】
上記のように始まるこちらは、ダイスとシートを使用して行う拡大再生産型のゲームのようです。今回2022秋では無料配布の冊子で、裏表紙にはQRコードでDLもできる試作版と言う形のようです。
実際に電源ゲームを作る過程を抽象化しているのですが、ゲームの内容には触れていませんでした。制作するゲームはRPGなのか、アクションなのか、それとも格闘ゲームなのか、レースゲームなのか。家庭用?アプリ用?アーケード用?そういった区別は特になく、制作進行を管理し、予算の中で人材の調整とクオリティを上げていくボードゲームでした。なので、残念ながらダンジョンの概念は確認できませんでした。
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▼B63F:脱出ゲームとダンジョンの関係。
さて、2022秋ゲームマーケットではたくさんのダンジョンを冠する作品、あるいは感じさせる作品に出会えてとても良い時間を頂きました。
その中で、「脱出」を目的に置いたダンジョンについて、考えさせられています。
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