まもなくアメリカ中間選挙 中間選挙とは? 民主党敗北の可能性 いずれにしろ、バイデン大統領に待ち受ける運命は過酷
アメリカの中間選挙が8日、投開票を迎える。大勢の判明は、日本時間9日の午後の見通し(1)。
情勢は、記録的な物価高への不満などを背景に、野党である共和党の下院奪還が確実視され、上院でも過半数の獲得に迫る勢いだ(2)。
改選前の上下両院で現在、主導権を握る民主党がどちらかを失えば、任期2年の残りが残るバイデン政権のレームダック(死に体)は必至。
そもそも、「大統領の信任投票」と位置づけられる中間選挙は、ただでさえ政権与党に厳しい結果となることがほとんど。
民主、共和両党の二大政党制となった1854年以降、与党が中間選挙で議席数を増やしたのは、2回しかない(3)。
今回、全435議席が改選される下院では共和党が過半数を獲得する勢いで、これをどこまで上積みできるかが焦点に。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」が集計した各種世論調査の6日時点の平均では、共和党227議席、民主党174議席と予想。残りの34議席は接戦。
共和、民主両党が50議席ずつの上院(定員100)も48対44で共和党が優勢。
今回の選挙では、各州の知事、州務長官や司法長官の選挙も注目。場合によっては、民主党候補が勝利しても、結果の確定を拒否するおそれがあるためだ。
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中間選挙とは
中間選挙は、4年に1度の大統領選挙の中間の年に全米で行われる、連邦議会の上院と下院の議員選挙、そして州知事選挙を指す。11月の第1月曜日の翌日火曜日に行われ、今年は11月8日が投票日。
中間選挙は、大統領選挙の任期4年間の中間に行われるため、現職の大統領に対する評価の場でもある。
今回の選挙でバイデン大統領率いる民主党が勝利すれば、その後の政権運営がスムーズに進み、さらには2年後の大統領選に向けても、良い流れが。
一方、上下両院、あるいは野党である共和党が多数派となれば、与党である民主党側が提出する予算案や法案の成立が難しくなり、一気にレームダック化する。
連邦議会の選挙では上院(定数100)の3分の1と、下院(定数435)のすべてが改選。上院は、全米50州から2名ずつは選出。任期は6年であるが、このうちのおよそ3分の1が2年ごとに改選される。
現在は無所属を含む民主党系と、共和党がともに50議席で同数であるが、採決で同数の場合は、議長を務めるハリス副大統領が1票を投じるため、民主党が事実上の多数派。
下院の議席は各州の人口比率により配分され、任期は2年。今回は、すべての議席が改選される。現在、民主党が220議席、共和党が212議席を握る。
つまり、現在は民主党が上下両院で主導権を握っている状態だ。
なぜ今回の中間選挙が、これほど注目されるのか
民主・共和、リベラルと右派との対立がこれほど先鋭化したアメリカにおいて、これほど中間選挙が注目されることは、かつてあっただろうか。今回の中間選挙は以下の点において、重要な意味を持つ。
第一に連邦議会の構成が変わると、アメリカ市民の日々の生活に大きく影響を与える。人工妊娠中絶が、その例だ。
連邦最高裁は6月、憲法で保障された中絶の権利を覆す判決を出した。この点について、民主・共和両党はすでに中間選挙に勝利した場合に、新たに議会に提出する法案を明らかにしている。
民主党は、女性の中絶する権利を守るとする。一方、共和党は妊娠15週目以降の中絶を、アメリカ全体で禁止する方針だ。
ただ州レベルでは、知事選やほかの地方選の結果などにより、さらに中絶への規制が州内で課される可能性が。
第二に、アメリカの重要な転換点になる場合も。連邦議会を制すれば、委員会の調査を開始する権限を持ち得る。この2年間は、民主党は昨年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件を調査。
一方、今回の選挙で共和党が勝利した場合、議会襲撃事件の調査委員会を閉鎖し、今度はバイデン大統領の息子であるハンター氏と中国とのビジネス関係を調べる公聴会を立ち上げるとしている(4)。
選挙後に待ち受けるもの
中間選挙に勝利するにしろ、敗北するにしろ、バイデン大統領には厳しい試練が待っている。そもそも大統領の支持率は、ここ1年間を通じて低調だった。
夏には盛り返したものの、選挙戦の中盤になってインフレと経済の先行き懸念が再燃。
民主党が大敗すれば、”バイデン政権”の政治的弱さが改めて浮き彫りに。バイデン氏自身は2024年の大統領選に意欲を見せるが、しかし「現職の大統領の予備選敗退」という事態にもなりかねない。
このようなことは、近代のアメリカ政治のなかでも1例だけだ(5)。
他方、共和党が勝利することは、”トランプ人気”を再確認させられることとイコールだ。今回の選挙では、トランプ前大統領が選んだ数十人もの候補者は、アメリカ全土で立候補している。
結果として、2024年の大統領選挙にトランプ氏が再選を目指す動きが、間違いなく出てくる。
ただ、もっとも懸念される点は、「選挙否定派が選挙を実行する」ことになりかねないことだ。
選挙では、2020年の大統領選挙の結果を疑問視し続け、バイデン氏の勝利を否定する候補者が多数、立候補。彼らは当選すれば、次期大統領選の結果の認定を拒否する事態も起きえるだろう。
(1)金子渡「共和、両院獲得うかがう」西日本新聞、2022年11月8日付朝刊
(2) 金子渡、2022年11月8日
(3)金子渡、2022年11月8日
(4)アンソニー・ザーカー「米中間選挙、なぜ重要なのか 5つの理由」BBC NEWS JAPAN、2022年11月7日、https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63538766
(5)アンソニー・ザーカー、2022年11月7日