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アメリカ中間選挙 結果 予測された「予想外の展開」 一方、”メディア王”は傘下のメディアを使い、トランプ批判 次期大統領にフロリダ州知事推しへ

 アメリカの中間選挙は13日時点でも開票作業が続き、野党である共和党が連邦議会下院(定数435)で新たに1議席を獲得、過半数の218まで残り6議席に迫った。

 一方、上院(定数100)では、バイデン大統領率いる与党の民主党は、ネバダ州で勝利、多数派維持を確実にする(1)。

 共和党が圧倒的に優勢とされた選挙は、しかし民主党の巻き返しで予想外の接戦となった。

 事前の世論調査で民主党が上下両院を失う可能性も指摘されていただけに、上院の死守はバイデン大統領の大きな成果であるともいえる。

 人工妊娠中絶の権利擁護と「選挙否定派」などをめぐる民主主義の危機の訴えが、とくに若年層を中心に広がったとも。

 予想外の苦戦を強いられた共和党内では、トランプ前大統領が選挙戦で前面に出たことが、逆に支持離れにつながったとみて批判が出た。

 トランプ氏が15日も予定するという2024年の大統領選挙への再出馬を見送るべきとの声も上がっている。

 しかし米国メディアによると、下院は14日午前10時(日本時間15日午前0時)で、共和党が212議席、民主党は204議席を確保している(2)。

 下院で共和党が多数を奪還すれば、上下両院の多数派が異なる「ねじれ」が生じることに。

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予測された「予想外の展開」


 ただ夏の時点では民主党の勢いがあった。

 近年、アメリカに限らず、世界中で行われている世論調査が次々と外れている。従来とは違った、”地殻変動”を既存の世論調査は掴みきれていないし、世論調査そのものへの疑義も呈される事態に。

 ニューヨーク・タイムズは7月12日、中間選挙について、選挙動向の詳細に定評のあるシエナ・カレッジ(Siena College)と合同で実施した調査結果を発表。

 その結果、過去の民主党と共和党の伝統的支持基盤に大きな変化が生じ、新たな傾向がみられるとした。

 これまで、トランプ氏を支持する人の大半は、ペンシルバニア州やオハイオ州、ミシガン州などの中西部”ラストベルト”地帯や、保守的な南部の州に居住する大学卒業以下の白人層で占められてきたとされる。

 ところが、全人口に占める「Bachelor(学士号)取得者」が増え始めるとともに、高卒またはそれ以下の人口の割合が減り始めた。それとともに、女性層や大卒以上に白人層に民主党支持増が増えてきたという(3)。

 さらに選挙前に共和党の支持率が上がり始めたのは、保守系の世論調査会社の結果だった(4)。

今後の見通し


 ただ、共和党が下院で多数派を奪還することは間違いなく、バイデン大統領の政権運営は不透明だ。

 第一に、大統領と民主党は、通したい法案を成立させることが難しくなる。第二に、民主党主導により進められてきた、トランプ氏の召喚を決めた議事堂襲撃事件を調査する特別委員会は、解散する見通し(5)。

 他方、共和党はバイデン大統領の次男であるハンター氏のウクライナや中国などとのビジネスにまつわる疑惑について、下院で追及する構えだ(6)。

 さらに「中国に関する特別調査委員会」の設置により、議会がバイデン大統領に、中国にさらに強硬に出るように求めている。一方、ウクライナ支援の縮小は、すぐにはみられないとも(7)。

 ニューヨーク・タイムズは、

「共和党が期待したような展開にはなっていない」

「共和党の赤い波が起きる兆候はみえない」

と報じた(8)。

 激しいインフレ批判にさらされながらも、バイデン大統領が支援に力を入れた民主党硬派がトランプ派の候補を破ったところもあり、バイデン氏自身の評価も高まる可能性も。

一方、”メディア王”は傘下のメディアを使い、トランプ批判 次期大統領にフロリダ州知事推しへ


 対して、トランプ氏には逆風が吹き始めている。「メディア王」と称されるルパート・マードック氏傘下の複数のメディアが共和党の苦戦をめぐり、トランプ批判を始めた。

 もともとマードック氏傘下のメディアとトランプ氏の関係は良好であったものの、しかし2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件と、その2週間後にトランプ氏が大統領を退任以降、関係が悪化(9)。

 対するトランプ氏も、マードック氏と彼が所有するニューズ・コーポレーション、さらに2024年の大統領選挙の共和党候補者指名争いで対抗馬になるとされるフロリダ州知事のデサンティス知事を批判した。

 マードック氏が所有するメディアとしては、ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・ポスト紙などが該当。

 ウォールストリート・ジャーナルは10日付の演説で、トランプ氏が政敵を揶揄するときに用いる「loser(敗者)」という単語を用い、トランプ氏を

「共和党最大の敗者」

(10)

と表現。ニューヨーク・ポスト紙は、トランプ氏をイギリスの童謡「ハンプティ・ダンプティ」になぞられた風刺画を掲載し、

「(壁を建てられなかった)ボスは大転落-共和党の部下全員は党を元に戻せるか?」

(11)

とした。さらにニューヨーク・ポストはデサンティス氏が州知事選で圧勝し再選を果たしたことを一面で報じている。


(1) 金子渡「バイデン民主 上院維持」西日本新聞、2022年11月15日付朝刊

(2)金子渡、2022年11月15日

(3) 斎藤彰「米中間選挙は予想外の接戦か 有権者投票動向の最新分析」Wedge ONLINE、2022年7月17日、https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27314

(4) 川島実佳「「レッドウェーブ」なぜ不発? 世論調査とメディアが作った中間選挙の虚構」NewsSphere、2022年11月15日、https://newsphere.jp/politics/20221115-2/

(5) 0テレNEWS「バイデン氏、今後の政権運営への影響は… 米中間選挙 開票作業進む」2022年11月9日、https://news.yahoo.co.jp/articles/2331cc269ca2200252eaca0d3eccaea1524019c6

(6)0テレNEWS、2022年11月9日

(7)0テレNEWS、2022年11月9日

(8)0テレNEWS、2022年11月9日

(9)Mark Niquette「マードック氏メディアがトランプ氏を一斉射撃-「共和党最大の敗者」」Bloomberg、2022年11月11日、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-11/RL5KTOT0AFB601

(10)Mark Niquette、2022年11月11日

(11)Mark Niquette、2022年11月11日

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