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いてら堂 小説の棚

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湖嶋いてらの感覚や妄想から成る小説が並んでいます。
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2022年2月の記事一覧

面影橋のむこう

面影橋のむこう

一歩林に入ると、むっと秋に襲われる。湿った落ち葉の安らかな匂いに混じる籠もった匂いはキノコだ。売れ残ったサツマイモが後ろでごろごろと鳴っている。滑り込んできた匂いはあっという間に体内に充満して、母の姿を映し出した。彼女が逝ったあの秋が両手を広げて僕を迎える。
寝たきりの母だった。布団と一体化して薄い母だった。さらに薄い唇から儚い恨みを垂れ流しては、日に幾度も紫色の顔を歪ませ咳き込んだ。その体は薄い

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