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いてら堂 小説の棚

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湖嶋いてらの感覚や妄想から成る小説が並んでいます。
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2022年1月の記事一覧

缶蹴り #月刊撚り糸

缶蹴り #月刊撚り糸

「え」
野木祐也は即座に振り返った。蹴り上げられたそれは、二、三度石ころだらけの地面を力なく打って、青空に甲高く鳴いた。地面の歪な円の中心で確かに先程まで祐也が右足で踏んでいたコーヒーの空き缶が、忽然とその姿を消している。
「くっふふっ、ゆうやってば全然気づいてないんだもん」
祐也は目の前に視線を戻した。鶴田真美の長い睫毛が、白い瞼に押し潰されている。
「ふっ、おっかしい」
瞼の際にうっすらと滲ん

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