身に纏って。
高校1年生のころ。初夏。
入学してまだ間もない私はこれから始まる高校生活に胸を躍らせてた。
初めての文化祭。1年生は合唱コンクールでちょっと嫌だったけど徐々に女子に怒られながら歌い出す男子とまとまっていくクラスの感じが嫌いではなかった。
文化祭の後初めてクラスで打ち上げした。
毎日制服だったからクラスのみんなの私服をみるのは初めて。人は変わっていないはずなのに私服をみると少し印象が変わってドキッとする。私も洋服選ぶときは慎重になったしそんな時間が楽しかった。1番印象に残ってるのがクラスのリーダー的存在だった女の子。
制服着てるときは黒髪ロングポニーテールで色白の"清楚"っていう言葉が似合う、お姉さんって感じ。でもその子のその日のお洋服は迷彩柄の丈短めトップスにシルバーネックレス、黒のレザーの短パンに骸骨マーク付きのハイソックス、厚底の黒靴私の持っていたイメージを覆した。 正直にいうととってもびっくりした。こんなにも制服と私服では違うものかと。けれど同時にかっこいいとかわいいという気持ちが溢れ出した。男子も女子も口には出さないけど少し驚いてた。でも彼女はいつもと変わらなくてみんなすぐにその驚きもなくなってた。会が終わってからクラスにできたカップルをお祝いして誕生日だった子にサプライズしてその後全員で写真を撮った。そして最後に「女子だけで撮ろうよー」という1人の声で男子に撮ってもらうことになった。私は偶然彼女の隣になった。テンションが上がっている男子の1人が彼女に「〇〇さん、今日で印象変わりましたわー」と言っていた。彼女は「そうやろー!みんなに驚かれると思ってた」と笑いながら言ってた。そして、「本当はもっとみんなが驚くようなのなの。今日は抑えめ。」と私にだけ聞こえるような声で口にした。
またしても私はもっと凄いのかと驚いたけれど、自分の好きな服を身に纏ってる彼女がかっこよかった。
高校2年生になって彼女とクラスが別れた。元々そんなに仲が良かったわけではないけれどたまにすれ違うと名前を呼んで手を振った。
徐々に会うこともなくなっていった頃に彼女と学年1のモテ男が付き合ったことを聞いた。
流石だな~と思ったけどすぐに別れそうらしいということを彼女と仲のいい子から話の流れで伝えられた。どうしてかと単純に疑問に思った私は尋ねた。「〇〇(彼女)が彼氏の好みに合わせようとして清楚系の服を買って着るようになってたんだけど、それがどうしてもキツくなってしまったんだって。」と言ってた。
私は彼女が自分の好きな洋服を彼氏の前では彼氏好みに変えてしまっていたことが意外だったけれどすぐに自分も好きな人の前だったら同じようにするだろうなと思って納得した。
でも彼女にとって洋服は自分を表す大切なもので自分の好きが溢れるものだったのだと思う。自分の好きと相手の好きに葛藤してでも一度相手に合わせてみてそれでも自分の好きを貫こうとする彼女もまたかっこいいと思った。
その後2人は復縁したみたいでその後は、元の彼女に戻っていて次は逆に彼氏が彼女のファッションに影響されていた。
最近インスタグラムで彼女のアカウントがおすすめに出てきた。見てみるとどうやら新しい彼氏と自分のお店を立ち上げたみたい。
沢山の洋服とそれを着飾って笑顔で写真に映る彼女。自分の本当に好きな服で好きな人といる彼女は輝いて見えた。
私の中で清楚系だと思っていたあの子は沢山の色とデザインと自分の好きを身に纏う、そんなかっこいい人だった。
いつか彼女のお店に行ってみたいなあと思ってみたりしている。
それではまた。
百。