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現代人が『聖戦士ダンバイン』を観るよぉ ⑨
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の魂の安息の世界。
遥かなる地での消え去った戦いの物語を今、ここで語るとしよう。
みなさん、異世界転生してますか?
この記事は「聖戦士ダンバイン」を観た筆者が皆さんにテキストでできる限りその良さを伝えていこうという試みです。
ダンバインは1983年2月から1984年1月まで放送されていた日本サンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)のアニメ作品です。このサブスクの時代に、古典を楽しむように昔のアニメを味わっていきましょう!
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第三十一話 黒騎士の前兆
ジャコバに地上に帰されたショウ達は退却したゼラーナが逗留しているナの国へ向かう事とした。
その空域に辿り着くと、出迎えが来るというような連絡はなかったにも関わらず、一騎の黒いオーラバトラーと出会う。黒騎士のズワァースだ。
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ズワァースはビルバインの周囲を品定めするように飛翔し回ったかと思った刹那、特に理由なくでっかい異世界の竹林を背景に襲いかかる。
その勢いはビルバインのショウは何とか対応し切るものの、マーベルはそのズワァースから感じられる悪意のあるオーラにで蹈鞴を踏むほど。
この話の前に二人はラース・ワウでライネックというオーラバトラーと打ち合っているが、
その時にパイロットであったミュージィに「オーラ増幅器の性能が格段に上がり、今や地上人が機体に乗らなくても良くなった」と言われている。
それを聞いているショウとマーベルが新たな地上人かと疑うほどの機体性能だ。如何な強さか分かろうというものだろう。
そのズワァースがビルバインやダンバインと数合斬り結んだ後、挨拶替わりの軽い性能試験だと言い残し、去っていった。
あまりにもダサい仮面、一体何者なんだ………!
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視聴者に中身はバーン・バニングスくんであることはバレバレなんですが。
シーラが陣取る本拠地、ウロポロスまでくると、出迎えのボチューンタイプのマシンと共にナの国が建造している巨大戦艦も見えてきた。
ジャコバに「このバイストンウェルから機械を無くす」と約束したばかりだと言うのに、敵の機械を倒すためにどうしても機械の戦艦が必要なのは痛いところだ。
エルフィノとベル・アールといううるさいフェラリオを連れているシーラ・ラパーナに謁見の間でビルバインの礼を言うと、ショウはジャコバ・アオンの言葉と自分の意志を告げる。
ドレイク軍の全ての機械を破壊した後、味方の機械全ても破棄しバイストン・ウェルから機械を消し去る。これがショウの自分で決めた自分の使命だ。
「ドレイク軍を倒した後、ナの国の新造戦艦も沈めてくれるか?」
シーラは静かにショウに頼む。ウロポロスに来た時に見かけた、今まさに国の巨額を投じて建造している巨大戦艦である。
これはなかなか言えないだろう。さすが女王の器だ。
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巨大戦艦を作れるほどの科学力であるナの国で駆逐艦クラスのゼラーナを軽々と直してもらい、ニーは未だタータラ城付近に留まるウィル・ウィプスに対して再度襲撃の計画を立てる。
丁度ウィル・ウィプスではラウの国の戦艦よりも新しく情報の入ったグランガランを脅威と見て、針路をウロポロスへ変更されようとしていた。
ショット・ウェポンはラース・ワウからさらなる援軍を集めてくるため離艦、そしてクの国王ビショット・ハッタは自国製造の戦艦へリムルとルーザ・ルフトを招き入れドレイクに追従し離陸、
まさにナの国へ世界征服軍が揃い踏みして進軍を開始しようとしたところにゼラーナの奇襲が間に合った。
ビルバインとダンバインという戦力を集中させ、|艦橋《ブリッジ》のドレイク本人を一点突破で狙おうという作戦だが、
ショットが戦艦を離れる際にドレイクを護衛せんと自身の懐刀であると紹介し置いていった黒騎士がショウ達の前に立ちはだかった。
ドレイクの居座る艦橋目の前で大立ち回りを演じるビルバインとズワァース。
強力なオーラ力であるものの黒騎士の正体が分からないショウ。いや気付いてやれよ!分かるだろ声とかで。
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ショウへの恨みを晴らさんとズワァースが悪意のオーラを噴出させビルバインと斬り結んだかと思ったその時、その力の奔流を呼び水としたのか、明らかに地上人やコモン一人が生み出せるオーラとは違った高密度なエネルギーが戦場を覆い尽くした。
これ程の事ができる人物はジャコバ・アオン以外にはいない。
世界の理に触れる事のできるほどの力を持つ者が今、機械を使う人間達に鉄槌を下さんとしていた。
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第三十二話 浮上
妖精族の最高位者、ジャコバの生命を燃やし尽くした祈祷はビルバインやオーラ戦艦を地上界へ放逐する事が目的だった。
戦場のオーラマシンだけではない。ショウ達のいる所から遠く離れたラース・ワウのリムル達のいる戦艦までもその影響を受けているようだ。
ゴラオン、ウィル・ウィプス、グラン・ガラン、ゲア・ガリングを始めとした戦艦群、そしてバイストン・ウェルに現存する例外なく全てのオーラバトラー。
オーラの力を悪しき戦争に用いる機械の全てとそれに付随する者達が緑色の光に包まれ、二度と戻れぬ片道のオーラロードを渡った。
どういう事なんっすか?!ショウとマーベルに「バイストンウェルから全ての機械をなくしてくれ」って話をした所じゃないんっすか?!!
どういう事?!ねえ?!!!答えてよ!!!!!!!
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アメリカ合衆国、ボストン。典型的なアメリカの住宅街の一角にトッドとビアレスが降り立った。バイストンウェルから地上界に人間が飛ばされてきた場合は近親者のオーラと引き合う法則があるため、ショウの時と同じくトッドは生家に転送されたのだ。
だがショウの時と一つだけ違う事がある。それは『オーラバトラーに乗ってきた奴は地球人に化けた侵略宇宙人』だという事になっている点だ。
ガラリアのミサイルで100万人もの死者を出した東京の事件はアメリカにも当然知られており、
折角トッドは生家で母と再会できたものの絵に描いたようなアメリカンポリスに宇宙人と疑われ、銃撃を受けスタコラサッサ(昭和なので)と退散する事になった。
ダブリン、ジェリル(作中の時計によると17:30頃)。夜の吉祥寺、ショウ、
出現地点は不明だが劇中では上海付近で既に近隣空軍に補足され戦闘状態にある黒騎士などなど……。
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そしてダラス、マーベル。世界各地の再度のオーラバトラー出現により、二週間前にショウとガラリアが東京上空で戦いを繰り広げた事がニュースで流れ始める。
(この時間経過にマーベルが驚く様子はなく、SFであるような地上とバイストンウェルで時間の流れが違う、という事はないようだ。)
地上人が持っている危険なオーラバトラーの情報はダンバインとバストールだけなので、ショウとの機体乗り換えのせいでダラスにダンバインで来てしまったマーベルはアンラッキーといった所だが、状況から判断すれば敵味方どちらもバラバラに地上に飛ばされてきたと考えるのが自然。
この時代ではダラスはカウボーイの聖地というイメージだったのだろう、大らかな自然の中で牧場を経営している両親にバイストンウェルでの話を信じてもらえたマーベルは、ショウや引いては味方と合流するためにオーラの軌跡を描いて地上界の空を翔んだ。
また即刻東京から離れ、日本国内の南の島で情報収集していたショウはオーラバトラーらしき機影をレーダーに捉える。
バイストンウェル人であれば一刻も早く保護と情報共有をと無線で呼びかけるも、最悪の事態、流浪の単体オーラバトラーは黒騎士のズワァースであった。
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名誉も昇進も全てを捨ててショウ打倒に魂を燃やす黒騎士は一番最初に出会ったのがショウのビルバインであったこれぞ好機と襲いかかる。
黒騎士━━バーンはバイストンウェル人なので地上に飛ばされる時は出現地点はランダムに設定されるのだろうか。それとももしや強い『縁』という訳ではないがショウ撃破に拘る所に関わりが生まれ、ショウの近くではあるアジア圏の中国に飛ばされてきたのかもしれない。
さらに間の悪い事に航空自衛隊に戦っている所を見つかり、黒騎士に日本人を撃墜させる事を許してしまう。
この時、黒騎士は地上の戦闘機を軽くひねり「こんな脆いものが地上の兵器なのか」と舐めてかかってしまうが、
全環境型の人型ロボットであるオーラバトラーと違い航空戦闘機は空気を切り裂いて飛翔する事を主目的として、何かにぶつかるという事は一切想定されていない設計となっている。
剣を振り回す空中戦闘ロボでも存在しようものならいともたやすく叩き落とされても仕方のない機械であり、言わば性能を簡単に比べる事はできない訳だが、この他愛のなさに地上の人間の科学力を、ひいてはショウを甘く見た黒騎士は驕りの心が出てしまう。
ガラリアの時のように数十倍の威力になっているミサイルでビルバインを仕留めてやろうと連射をするが、爆発の閃光まで拡大しているところまで考えが回らなかった黒騎士。
前回地上に出た経験則があるショウはその目が眩んでいるという事を計算し、すんでの所でなんとかサイドに回り込み剣撃を浴びせて海に叩き込んだ。
ドレイク軍対ショウ達の戦いは大混乱となってしまった。先刻までのバイストンウェルの戦場では有利な状況にあった者も、地上で孤立している所を敵に集中して叩かれたらコロリとやられてしまうかもしれない。ショウ達も一刻も早い味方勢力との合流が必要だ。
明日の朝陽は拝めないかもしれない。異世界には無かった陽の光をチャムと眺めながらショウはそう呟いた。
第三十三話 マシン展開
日本領海内をビルバインのウィングキャリバー形態で飛行していたショウは、居眠り運転を自衛隊に捕捉されてしまっていたものの、その案内を受け硫黄島基地へ同行した。
当然ビルバインを初めて見る自衛隊だが、載っているのがショウだと分かると担当将校の「ミナガワ」は意外なほど協力的な態度で接してくれる。
二週間前のガラリア戦のあとムーみたいな雑誌で特集が組まれたりして、特に不思議な妖精さんのチャムが有名になり、事がプラスに働いているようだ。
ショウ達を宇宙人だと決めつけて拘束しようという様子もないが、父シュンカ・ザマが「息子は本物で家族を守るために行動してくれた」と真実味を帯びた話を流布してくれたりもしたのだろうか。
本土ではチャムの可動式フィギュアまでも売り出されそこそこ人気な様子。これは純粋にキモいですね。
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ショウ達が地上界に飛ばされて一晩ほどのようだが、すでにかなりの数のオーラマシンが各国の軍などの情報網に掛かり、自衛隊にも情報が共有されている。自衛隊はじめミナガワはついにバイストンウェルが地上征服の戦争を仕掛けてきたと思っているようだ。
ジャコバの仕業である事が分かっているものの、その真意が読み切れずうまく説明できないショウ。オーラの力だけでも説明が難しいのにその上
「オーラの力を司る神みたいなやつがいて、そいつが機械を嫌っててオーラバトラーごとコモンを地上へ転送する超能力を使って……」などという分からんの上に分からんを重ねる説明でもしようものなら、さすがの自衛隊もファルシのルシがコクーンでパージだ。
コモン達も混乱からの防衛行動ではあろうが、世界各地ではオーラマシンによる被害が驚くほど出ていた。
話を聞いている間にも次々入ってくる新情報の中にテキサス上空でダンバイン、つまりマーベルがドロと交戦している事が耳に入りアメリカへ飛ぶショウ。
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「メルカトル図法だったらナナメに飛び出していく」って感じになっとるやないかい?!!
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ドラムロを中心としたドレイク兵達と米軍航空戦闘機に三つ巴で追い立てられながらラスベガスまで来てしまったダンバイン。
マーベルは地上にランダムポップしたはずのドレイク兵が、数が多いせいか意外なほどまとまった動きを見せる事に違和感を覚える。
他愛もない地上界の戦闘機にモブ兵士達の嗜虐心が刺激されたのか、それともこの状況を好機とドレイクが本当に地上征服でも思いついたのだろうか?
ショウがガラリアと地上に飛び出した時の話を聞いていたマーベルはショウが日本に出てきている事を信じなんとかアメリカ西海岸まで飛んでこれたものの、地上に出た事でパワーアップしたドラムロに囲まれピンチに陥る。だがそこに信じていた通り硫黄島からスッ飛んできたビルバインの救援が間に合った。
さらなる西側にアテがあったマーベルは、地上の地理が分からないドレイクザコ兵士も流石に海を渡って追う気にはなれまいと、太平洋に出て敵を撒く。二人はそのまま海を渡りワイハーに到着。
父が海軍勤めだというマーベルの幼なじみ、バルベラを頼りにパールハーバーへ向かい新聞を中心に情報収集を行うと、コロンビアにゼラーナがいる事を突き止めた二人は街の電気屋で地上用の機械をいくらか買い込み地上側の軍隊を撒くため成層圏ギリギリまで上昇。
ダンバインを始めとしたオーラバトラーはコクピットの気密がすごく、過去に何回か水中戦もやっており、過去に地上に飛び出した時も空気の薄い高々度活動が平気な事を自信をもってマーベルに伝えるショウ。
でもそれってショット・ウェポンが凄いんじゃないですかねぇ…?まぁ幾度もゼラーナで改装もしているようだからそれはいいか。
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コロンビアでは市街地を火の海にしないためギリギリまでザコ兵士を引き付け逃げていた二ー始めゼラーナ勢だが、逃走の果てに運悪くすぐ近くのボストン付近をウロウロしていたビアレスの接近を許してしまう。
決死の覚悟でニーがボゾンで迎撃を試みるが、しかしここに音速円錐雲を引き連れてショウとマーベルが到着。
地上に出て全てのオーラマシンがパワーアップをし調子ブッこいてるものの、数日程度では感覚が追いついていないとみたショウは近接武器の鍔迫り合いに持ち込み、ビアレスを撃破する。(ただゼラーナを追い立てていたザコ兵士はクの国兵だったようで、爆発寸前の機体からトッドを助けられてしまった。)
ここに何とかゼラーナチームが集結した。エレやシーラと達とも合流しなければならない。地上の戦火を止めるためにも。