吹き抜ける風とはこれか
ウランバートル3日目。友達が紹介してくれたモンゴルの女性経営者バダムさんから、さらに新たな友人として同い年の経営者バギさんを紹介してもらって、本日はバギさんがウランバートル周辺を一緒にまわってくれた。
彼はもともと早稲田大学に2年ほど交換留学生としてやってきて、その後にはモンゴルに戻って、いくつかの仕事を経て、いまはなんとボラギノールのモンゴルでの販売権を得て、モンゴルで坐薬を売っているのであった。
さてまずは仏陀パイセンの活動についてである。ちょっとモンゴルのパイセンは5頭身くらいなので、アニメのキャラみたいな創作物っぽさががあるが、偉大さはなにも変わらないし、むしろモンゴルにおける仏教の偉大さは日本のそれよりもずっと大きいと言える。
モンゴルでは仏教はかなり信奉されており、ほとんどが仏教の信徒で、チベット仏教系統である。4世紀頃から入ってきたという話もあるし、12世紀頃に伝わったとも、16世紀から広がったとも言われているらしく、色々と定かではないらしいのだが、理由がなかなか残念なことである。
1937年〜1939年頃にほとんど焼かれたから、である。
これは社会主義国家としてソビエト連邦がモンゴル地域を制圧していた頃に、社会主義国家建設に邪魔になる考え方をする存在を粛清するのと、同時期に外国から入っていたスパイを抹殺するという目的で、3万人の人を大量に殺害したという事件があり、そのなかでとくに仏教信者は、700ほどの寺とともに葬られてしまったわけである。
ちなみに、そうして寺が焼かれる前に、なるべくたくさんの書物や仏具を残すために隠したものが、いまも残っているらしいが、すべての発掘はなされていないらしい。
それでもモンゴルではやはり仏教に対する熱心な信徒はいなくならず、今もなお住職に対する信頼は篤い。特別な雰囲気と力を持った住職から、何かしらの気づきやエネルギーをもらうことが自然なことのようだ。
途中で建築途中の工場の視察にお邪魔した。空き地に広くて綺麗な工場を建てており、倉庫にも使えるし、工場としても使えるので、今から投資をする会社にとっては使い勝手の良い物件になりそうだとのこと。4000万円。
モンゴルではNOMINというスーパーマーケットが一番大きい。これはまだ、社会主義国家として国営スーパーNOMINとして運営されていたものを、民営化されてそのまま大きなスーパーとして引き継がれたもので、百貨店だったりスーパーだったりと、いろんなものを仕入れて販売する力がある。
見た感じは、まあコストコみたいな規模感である。
モンゴルでは1992年にソビエトで起こったペレストロイカのあおりを受け、そこから10年くらいかけて民営化がなされていったらしい。
社会主義国家っていうものがまったく想像がつかないのだが、とりあえず決められた仕事をして帰ってきて、家族分にクーポンが支給されて、それでパン(1日でひとり大きめのパンひとつ)を配給されて食べるということになっており、また商品に選択の余地はないので、人というのはとにかく決められた配給を食べるものなのだ、という常識で生きるということだったのだとリアルな感じで教えてもらった。
自分でお金を稼いで、自分で買いたいものが買えることが幸せだ、と思える人たちはいまの資本主義経済になったことを本当に喜び、楽しんでいることがわかった。いまから物質的な充足を味わっていく段階なんだな。
まだまだ自然豊かなモンゴル。基本的には無限に広がっていくと思えるような草原に生える草を餌に、家畜がたくさん元気に育っていくのだ。
穏やかに歩く家畜の馬たち。
草原にはグラスホッパーといわれる、強めの音を立てて飛ぶバッタがいるが、おなじようなバッタの種類だが飛ぶこともなくのろのろと歩く種類もいて、「ゴリオ」というらしい。歩くだけの太ったコオロギのようだった。
バッタたちは鳥のよい餌らしい。ゴリオなんかすぐ食べられてしまいそうだが、色がこんな感じなので擬態がうまくて、比較的バレづらいから生き残っているようだ。
国際公園にいって、野生馬が保護されているゾーンに車を走らせることに。
20分ほど走ったが、なかなか見つからなかった。
もうすこし走ると、小さく小さく、遠いところに野生馬の姿が見えた。
家畜の馬と違って、それほど近くにはなかなか寄れないものだが、そこそこ近いところまでやってきてくれてシャッターチャンスがあった。
吹き抜ける風とはこういうことか、と思えた。
てくてくと歩いても歩いても、ずーっと続く草原。
車があるから移動するイメージが湧くけれど、こんなところで捨てられたらどうして生き残ろうかと悩ましい場所だ。人間はちっぽけだと感じる。
まあ確実にゲルを探して助けを求める以外に方法はない。
夜はもうひとり紹介してもらった、エンフダヴァさんとお会いするために、ジャパニーズレストランで食事をすることに。日本で食べることを考えれば割とお値打ちな値段だがら、それでも日本で食べるのと変わらない。
そこそこ高級な夜のお店。
ここに、なぜか渋谷にいるはずの犬がいる。
暗くて見えないが、忠犬ハチ公とたしかに書いてある。おかしい。
最後は渋谷に迷い込んだ感じで、ウランバートル3日目が終了した。