
Xbox Game StudiosがGame of the Year(GOTY)を「獲ろうとしない」理由
本記事では、The Game AwardsウォッチャーでXboxプレイヤー歴20年以上の筆者が、Xbox Game StudiosがGame of the Year(GOTY)を「獲らない」理由を考察します。
最初に結論を言ってしまうと、PlayStation(PS) StudiosがたびたびGOTYに輝く一方で、Xboxはノミネートされることも少ないのは、忖度やましてや不正ではなく、「PS陣営とは戦略が全く異なるから」だと考えます。
両者の戦略に優劣があるわけではないが、たまたま、PS陣営の戦略の方がThe Game AwardsにおけるGOTYの選考基準にフィットしやすい、ということです。
以下、上記の僕の見解を詳しく説明します。
部門賞はそれなりに受賞している
たしかに、Xbox Game Studios(以下Xbox)がThe Game AwardsにおけるGOTYから縁遠いことは事実です。
2014年(初回)から2024年までの11年間の歴史を紐解くと、PlayStation Studios(以下PS)が10回(13作品)ノミネートされそのうち3回GOTYを受賞したのに対し、Xboxのノミネートは3回(4作品)にとどまり、GOTYの受賞は0回です。

ただし、XboxがThe Game Awardsに全く縁がないかというとそんなことはなく、各部門賞はそれなりに受賞しています。
近年だと、2021年には『Forza Horizon 5』がBest Audio Design・Innovation in Accessibility・Best Sports/Racingの3部門を、『Age of Empires IV』がBest Sim部門を受賞しました。また、今年(2024年)にも、『Senua's Saga: Hellblade II』がBest Audio DesignとBest Performanceの2部門を獲得しています。
また2023年には、惜しくも受賞を逃したものの、『Starfield』がBest RPG部門にノミネートされていました。
このように、Xboxは、たとえGOTYへのノミネートは少なくても、レースやシミュレーション、そして『Call of Duty』シリーズに代表されるFPSなど、いわゆる「ジャンルもの」において強みを発揮しているということが分かります。
Xboxの戦略はPlayStationとは全く異なる
このことから、PSとは全く異なるXboxの戦略が見えてきます。
PSの強みは、いわゆる「シネマティックなシングルプレイ超大作」です。
グラフィックやサウンドをはじめとする各美術要素を極めてクオリティ高く作り込み、まるで映画のような脚本と演出によって、プレイヤーをそのゲーム世界に深く没入させます。
一方で、XBOXの戦略は、僕なりの言葉で表現すると「多くの人々が楽しめる娯楽を、世界中のあらゆる人々、あらゆる環境に普及させること」です。
Xboxの強みは「極めて低価格なXbox Game Passというサービスを、Xboxコンソールに限らず、PCやスマホなどあらゆる環境で楽しむことができる」ことです。Xbox Game Studiosの作品はリリースと同時にXbox Game Passに収録され、月々1450円(Ultimateプランの場合)という料金だけで楽しむことができます。

そしてXbox Game Studiosが擁するタイトルですが、『Starfield』や最近リリースされた『インディ・ジョーンズ』のようなシングルプレイ超大作もありますが、「誰もがその楽しさを想像しやすくとっつきやすい、ジャンルが明確な作品」を豊富に取り揃えています。
『Call of Duty』『Halo』といったFPS、『Gears of War』などのTPS、レースゲームの『Forza』シリーズ、『Microsoft Flight Simulator』といったシミュレーションなどがそれに当たります。また、いまや世界最大のゲームに成長した『Minecraft』は、子供から大人まで、多くの人がその面白さにコミットできる万人向けタイトルです。
このラインナップは「多くの人々が楽しめる娯楽を、世界中のあらゆる人々、あらゆる環境に普及させる」という戦略からすると理にかなっています。
いうなれば、PSが「アカデミー作品賞を受賞する名作映画」を作っているとすると、Xboxは「だれもが楽しめる娯楽超大作映画」を作っているといえ、両者の戦略は大きく異なっているのです。
上記のような映画に優劣がないのと同じように、この戦略にも優劣はありません。ただ、「GOTYを獲得しやすいのはどちらか?」ということになると、それはPSの戦略ということになります。なぜなら、The Game Awardsだけでなく、ビデオゲーム批評シーン全体の傾向として、美術やナラティブなどシングルプレイ超大作においてアピールされることが多い要素が「名作ゲームの条件」として評価されることが多いからです。
しかしこれは上で書いたXboxの戦略に整合したものですから、現在の状況はXboxにとって意図的なものだと考えます。つまり、XboxはGOTYを「獲れない」のではなく「獲ろうとしていない」のだ、というのが僕の見解です。
おわりに
この記事では、The Game Awards 2024が終わって、Game of the Year(GOTY)とXbox Game Studiosとの関係について僕の考えを書きました。
僕自身、プレイヤー歴20年を超えるXboxユーザーですから、「こんなに素晴らしいXboxが日本でもっとメジャーになって欲しい」と歯がゆく感じる気持ちもあります。
たしかに、GOTYを獲得できれば大きな話題になるのでしょうが、Xboxの戦略というのはそれとは全く異なっているということを書きました。
これからも、Xbox Game Studiosがリリースしてくれる様々なタイトルを楽しみたいと思います。とりあえず『インディ・ジョーンズ』遊びます…!
(了)
2024.12.17 Itaru Otomaru