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全体観ある思考の根っこにあるものに気づいた件

先日、とある読書会で参加者の一人から質問をされました。
「どうしたら全体的に考えられますか?」

この質問をしてきた方は研修講師とのことで、研修や講義の途中や後に「何か質問はありますか?」と投げかけても誰からも何も返ってこないことに違和感を感じているという話を切り出してきました。

仰っていたのは、
「どうも受講している側は話していることを取り敢えずそのまま受け取るだけになっていて、内容をまだわかっていないか、何を質問したら良いのかがわかっていないのではないかと思えるのです。どうしたらパッパと質問するようになるのでしょうか。」
と、講師として受講側の思考力を上げたいという素朴な思いでした。

それに対して、なんとなく私は、
物事を部分的にしか見ることができないと、聞いていることが全てのように感じられてしまうから、それ以外のことを考えないのかもしれないですね」
と自分の意見を言ったのですが、それに対しての返しが冒頭の問いでした。

「どうしたら全体的に考えられますか?」
「どうしたら頭の回転を上げられますか?」

…と、立て続けに詰め寄るように聞かれ、面食らった私は、
「え、ええと…場数ですかねぇ」
と返したのですが、その後で、いったい何の「場数」を踏んできたのだろうか、と思ったので、ちょっと考えてから、言い方を変えて伝え始めました。

枠で考える

まず、場数を踏んでいるということは、自分は無意識に何かを繰り返しているのだろう。あるいは繰り返しているうちに何らかの思考の法則性やパターンが自分の中に出来上がっているのだろう、と考えてみました。

それはいったいどんな法則性なのだろうか。
これが分かれば無意識ではなく意識的に使いこなすことができますし、人に伝えることもできるようになります。
これは、以前に以下のnoteで書いた「自覚せる有能」のことです。

無自覚で繰り返し能力を発揮できているというのはオート・パイロット状態で、脳に対する負荷は最小限で済むわけで本人にとっても自然なのですが、周りの人から見たらそれは「どうなってるの?」みたく映ります。
言うなれば「本人が自覚してない強み」のような状態かもしれませんね。

で、無自覚にやっているだろうなと思ったことの一つに、三角、四角、丸で考えることがあるなと浮かんできました。
そのことは以下のnoteで一度まとめています。

三角(ロジックツリー)、四角(表やマトリクス)、丸(因果ループ)のどれのパターンに当たるのかを、人の話を聞きながら、あるいは状況の分析をしながら「あーでもない、こうでもない」と頭の中でシミュレートし、しっくりくるフレームに嵌めて整理しているというのは、私の中ではあるなと思います。

枠ができたら、枠の中の切り分けのためにフレームワークを使います。そうすると、全体性を担保するために抜けている項目がわかってきます。
例えば、製品の特徴(Product)と価格(Price)のことが中心に語られて、コスパがいいとかいう話になっていたとしたら、
「良さそうだけれどみんなが知らないと売れないよねぇ(Promotion)」
とか
「どこでどうやって売るのか(Place)によっては売上は少ないよねぇ」
みたいな発想につながります。

では、そういうフレームワークを本で読んで学んで知っていれば、そういうことができるかというと意外とそうでもないかもしれないと思いました。
何かもっと根本的なところで発想が違うんじゃないか、と。

「論理的思考法」以前

私は小学生の頃よく忘れ物をしました。(今でも忘れ物はよくしますけれど)
よく忘れたのが算盤、給食当番用の割烹着、体育用の運動着などなどでした。
提出書類やお金は親が持たせてくれるので忘れようがないのですが、学校の時間割に乗っているものについては自己責任でした。

小学校までは子供の足で歩いて15分かかりましたので、学校についてから忘れ物に気付いても簡単には自宅に取りに帰れません。
2時間目と3時間目の間に20分の休み時間がある、その間にダッシュで自宅に戻り、折り返しで学校に戻り、息をゼーゼーさせながら3時間目の授業に入るようなことを何回も繰り返していました。

「何か忘れていないか」
「他に何かあるんじゃないだろうか」
忘れ物が多いと先生や親に呆れられて、何とかしなくちゃと思ううちに、自分の中に自然にできていったのが、そんな問いというか不安感でした。

これが思考の癖になっていったように思います。
自分の中にアイディアが何か浮かんだときでも、人の話を聞いているときでも、「本当にそれだけだろうか?」「他にも何かあるんじゃないだろうか?」

しかし、まだ「他」を出す術を知らなかったので、誰かに注意をされたり、一人で悶々と考えてるのに忘れ物は続いていました。

「思考法」のきっかけになったのはクリシン

きちんと思考法を学ぶまでは、私の思考は直感で行動し、取りこぼしたものを後追いで回収して片付けてゆき、そこで何が抜けていたのかを知り、次はそれを忘れないように学習するというものだったと思います。
それで社会人の最初の十数年過ごしていたかな、と。
まぁ、これはこれで「考えずにまずは行動」という筋肉みたいなものができた分良かったのかなと思いますけれど、まぁ、正直に言ってあまり効率的ではないですね。

ちゃんと思考法らしきものを学べたのは、クリティカル・シンキング(「クリシン」と略されることが多いですね)でした。
今にして思えば、MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)とかはまさしく「これで全部か」「何か忘れ物はないか」であったわけなのですけれど、学んでいた時の私は「こんな細かく考えてられるかー!」みたいに面倒に感じてました。

ただ、自分に足りない思考であることは分かりましたので、なんとか喰らい付いて学んでいくうちにしっくりきたのが講師からの一言でした。
「これって何が嬉しいか、ってチェックリストなんですよ。」

そこからフレームワークを学び、チェックリスト代わりに使うことを始めました。もちろん、その過程でフレームワークを学ぶための本も沢山読んだように記憶しています。

しかし、フレームワークで全てが片付くものでもありません。
もう一歩先の思考力、つまりフレームワークを自分で作れるようになる必要があるなと感じ始めていました。

自分でフレームを作れる思考法

思いがけないところから、結果的にそれを学びできるようになるきっかけを得ました。
今思えばの後付けなのでしょうけれど、私にとってそれはMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)でした。

MBTIは性格検査(タイプ診断)の一つで、心理学者ユングの理論を展開した4つの軸を使って個人の性格を分類し、自己理解と相互理解に繋げるものです。
私は今は資格を返上しています(使用頻度がほとんどなくなった)ので、詳しくを語る立場にありませんが、概要については以下のnoteの中で少し触れています。

MBTIを学んだ時、私の思考法に組み込まれたのが「二律背反」でした。
二律背反は「同時には成立し得ない正反対の二つ」のことだというのが私の理解ですが、これってMECEとも被ってくる考え方だと思っています。

「何かがあれば、それの反対は必ずあり得る」
と考えてみる。それによって思考の枠を押し広げてゆくことが可能になります。
MBTIの場合はそれが「自分と正反対の性格があり得る」でしたけれど、この考え方は他にも適用が可能な考え方です。

例えば、お菓子について考える時に、甘いケーキが頭に浮かんだとしたら、それ以外を考える時に「他に好きなものは」ではなく、「甘いの反対は?」と考えると「苦い」とか「塩っぱい」が出てくる…みたいな。
(まぁ苦いお菓子って変だからしょっぱいでしょうね)
次にケーキの属性が洋菓子なので、その逆はと考えると和菓子が出てくる…
こうして、ケーキ、フライドポテト、お饅頭、お煎餅…みたくなってくるとお菓子の全体性が現れてきます。

さらに、「あ、でもみたらし団子とかは『甘じょっぱい』だよね」ということに気づくと、他にも何かあるかな忘れてないかなとなり、別の分類(カテゴリー)が次々と登場して分類としての網羅性がさらに精緻になって行きます。

甘い・塩っぱい、洋菓子・和菓子で二軸のマトリクスを作り、お菓子をマッピングしてゆくように使うこともできますし、そんな軸だとありふれてるからと軸を少し別のものに変えてみることでポジショニング・マップも作成できます。

これを数、それこそ場数をこなしてゆくと、自分の中でフレームワークを作り出すことができるようになりますし、誰かの話の聞いたり、何かの現象を見たときに頭の中に自然に軸が生まれるようになってきます。

網羅性を疑うところから思考は始まる

こうして考えてきてみると、私の小学校の時の忘れ物の苦い体験は、この思考のエンジンを作るために意外と役に立っているのかもしれないと思えてきます。

これで全部?忘れ物ない?
「自分は全部分かっている」と考えずに、ちょっと自分の思考の網羅性を疑ってみる
そこから全体を見れる思考法はスタートするのかもしれません。

今は生成AIにプロンプトを流すと簡単にチェックリストを作ってくれます。
しかし、それは既存のフレームワークに則ったものがほとんどですし、誰でも同じことができてしまいます。

ひょっとしたら今はまだ世の中にはないかもしれない自分なりの新しい発想を生み出してゆくためには、全体観のある思考を自力できることは意味があるかなと私は思います。

あなたのその思考、正しいかもしれませんが、それ以外は本当にないですか?

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いたる | 外資系人事の独り言
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