Online Workshop Tool考
COVID-19(新型コロナウィルス感染症)拡大防止のため、在宅勤務やリモートワークが一般化しつつある中、オンラインで研修やワークショップを行うケースが増えてきています。
緊急避難的に導入を始めた、あるいはオンラインに切り替えたとしても、いざ始めてみると、参加者が何処にいるかを問わず簡単に繋がることができ、わざわざ会議室や研修室を用意する手間もコストもかからず、移動時間やコストも削減できるので、おそらく「コロナ明け」になってもオンラインのワークショップというのは定着してゆくのではないでしょうか。
一方で、そのためのツールがまるでカンブリア爆発(およそ5億年前に生物の多様化が一気に進んだ現象)のようになってきて、一体何をどうやって使ったら良いのかが分からなくなり始めているのではないでしょうか?
私は会社(一応サラリーマンなので)ではMicrosoft Teamsを使っていますが、友人のネットワークでワークショップに混ぜてもらうときはzoomが使われているケースが多いです。zoomはセキュリティ上の不安点が指摘されたため私の会社では使用禁止(ブラウズ経由でもだめ)になってしまっています。セキュリティの対策はzoom側も行ってくるでしょうが、企業側としてはスタンダードは一つにしたいところなのでTeamsに統一されて行くんだろうな、と思っています。
こういったオンライン・コラボレーション・ツールはまだまだ発展途上でソフトウェアや環境も日々アップデートされていき、新規参入も次々と起きています。今のところは一長一短、帯に短し襷に長しで、これが定番でどんな状況にも対応できるというものは見当たらず、目的と制限事項によって使い分けをして行かざるを得ない状況です。
ワークショップ・デザインではニーズと制約条件を明らかにする仕立て(この考え方は一つ前のnoteで触れています)のステップが最初であり極めて重要になってきますが、オンラインの場合はツールに何を選ぶかがクリティカルであり、間違ったものを選ぶと本番は大惨事(スタートすらできないことも!( ̄◇ ̄;))になってしまいし、ツールを何にするかによってデザインは全く異なるものになると言っても良いくらいです。私もこのところオンラインでの研修やワークショップを始めることになり、しつこいぐらい制約条件を確認すると共に、実際の環境への接続テスト、その環境での予行演習にかなりの時間をかけるようにしています。
私の経験から、それぞれのツールで今の時点(2020年4月時点)でのそれぞれのいいなと思うところともうちょっとだなと思うところを挙げてみます。
Teams
まずTeamsから行きましょう。元々がSharepointを機能拡張していったようなところがあり、Skype for Businessとの統合で初めてオンライン・コミュニケーションツールとなった感があります。チャット、テレビ電話、電話会議、ファイル共有、そして他のMicrosoft Office Suiteとの連携ができるのが特徴です。
Teamsの良い点は、何と言ってもMicrosoft Officeとの連携です。Sharepointでファイル共有をするので同時に同じファイルに書き込めるし、バージョン管理があるので、間違って編集しても元に戻れるというところは本当に便利。あと、グループ(Team)の中に分科会のようなものを作ってアクセス権まで変更することもできるようになっています。なので、Outlookでメールがどこに行ったか分からないとかならないように全てTeamsの中でのやりとりにしておくと、特定のトピックでどのような議論をしたかを全て1箇所で見ることができて便利です。
一方、気になる点も多いです。まずTeamがたくさん出来すぎて混乱が起きること。「あのファイルはどのチームで使ったんだっけ」とかなりますし、Outlookとの使い分けをユーザーができていないと返って混乱を招きます。また、電話会議機能もまだまだです。同時に画面に映せるのは9名までです(5月末現在)。それはまだ良いとして接続の安定性がイマイチなのは動画の圧縮技術がそれほど洗練されていないからなのかなと思います。とはいうものの、5Gになればどうとでもなるのかもしれないですけれど。
zoom
セキュリティの懸念を表明するところは多いですけれど、zoomは事実上のスタンダードになっているかと思います。しかし、後発がどんどん追い付きつつあるので胡座をかいてはいられないかもしれません。
zoomはシンプルさがとても良いと思います。Teamsに比べると機能は少ないですが、共有できるツール(One Driveやdropboxなど)は豊富です。何よりも大人数で同時に対話をできる環境としては他のツールに大きく水をあけていると思います。
しかしながら、zoomでワークショップとやろうとなると意外と制限事項があります。Break out(グループを分割して小グループを作ること)はホストが決めるか自動で割り振ることしかできないので、参加者同士で自由に行き来することができない不自由さがあります。またホワイトボードがやや貧弱で、ツールの種類が少なく特にPCでは使い勝手の悪さを感じるかもしれません。Break outで討議してホワイトボードに書いたものを全体で共有するときに別の環境にCopy & Pasteしないといけないしグループを変えると消えてしまうというのも惜しいところです。
(追記)zoomはBreak outを設定するとその前までのセッションとブッツリ切れてしまいます。Break out前のChatは読めなくなるし、Break outの外に向かってのChatも出来ず閉じ込められた状態です。Remoだと、Chatを個人宛とグループ宛と全体宛で使い分けられますし、TeamsはTeamsのミーティング中に外に向けてChatを飛ばしたり、ミーティング内でのヒソヒソ話ができます。
また、zoomは予めミーティングを設定してリンクを送っておく手間があるので、Teamsや後述するHousePartyのような手軽に繋がるという感じではないかもしれません。
それでも、今のところオンラインのワークショップでは、zoomと他のツール(例えばGoogle SlidesとかGoogle Documentなど)と組み合わせ何とか凌いでいると思います。問題は使うツールが複数になり、リテラシーが低い人は両方の環境になれないといけないのでハードルが上がってしまうというところでしょうか。
その他のツール
今のところTeamsとzoomがよく名前を聞くツールになっていますが、他にも様々なツールが出てきて機能をUpdateして充実させますので、楽しみなところです。
いくつか触れたことがあるものを書いておきたいと思います。
先日Remoを使ってWorld Caféをやってみました(こちらについてはまた別noteで詳しくやり方をお伝えします)。6名までのテーブルがいくつもあって、テーブルを自由に移動しながら講演を聞いたり、テーブルの中でディスカッションをしたりできるのですが、インフラの安定性を含めまだ発展途上な感じでした。
Spatial Chatも経験してみました。こちらは、オープンなスペースの中で立ち話的に会話をあちこちで展開し、集散を繰り返しながら学び合うことができるので、OST(Open Space Technology)を行うのに適していると感じました。
人のいるところに近寄ってゆくと声が聞こえてくる距離感のリアリティがあるのが特徴で、臨場感は最も感じやすいかもしれません。
Video Facilitatorも体験をしてみました。タブレットやスマホからの参加ができず、PCで利用する際もネットワークのバックボーンの太さにかなり通信品質が左右されるようですが、50名まで入れるBreak outを幾つも作れ、その中を参加者が自由に行き来ができます。また主催者ではなくても会議室の名前を変えたり増やしたりなどのアドミ的なことを行うことができるので、かなりフレキシビリティがあります。使用できるプラットフォームと安定性が広がれば、ほとんどのワークショップや研修をこれでできるなと思いました。
意外と面白いなと思ったのはHousePartyです。こちらはオンライン飲み会を行くつも掛け持ちできるような芸当ができるツールで同時に顔を観れるのが8名までという制限はありますが、自由に出入りができることグループ間移動がスワイプでできてしまうこと等から、zoomで出せないBreak outのフレキシビリティはこれと組み合わせればできるのではないかなと感じました。
そして、5月中旬(日本での公開)には、Facebook Messengerが「ルーム」という機能を追加しました。
これは、Facebookメッセンジャー上で、自分の「ルーム」を設定し、そのリンクを人に送ることで50名まで時間無制限のオンラインミーティングができるものです。画面共有もできますし、リンクがあれば、メッセンジャーを持っていなくてもFacebookをやっていなくてもオンラインミーティングに参加ができますし、画面共有もちゃんとできます。
機能はそれほど多くないですが、設定の簡単さ手軽さとインターフェースのシンプルさに元々Facebookが持っているユーザーの多さから、あっという間に広がってゆく可能性はあるツールかもしれません。
今後の期待
COVID-19でzoomも他のオンライン・コラボレーションツールも需要がものすごく伸びていますし、これからも進化し続けるので楽しみではあります。しかし、その一方で多機能化はいかがなものかと思っています。使い方が複雑なツールになってしまうとまた使い方を覚えるのが大変なのに加えて、一つのツールに淘汰されるまでにはまだ時間がかかるので複数のツールの使い方に慣れていかないといけなくなってきてしまうのが、何だかなぁと思います。
むしろ期待したいのは、①接続の安定性②マルチプラットフォーム③機能のシンプルさの3点です。HousePartyとzoomの組み合わせの話をしましたが、今の時代ほとんどの人はPCかタブレットとスマホの二通りの端末を持っていますよね。であれば、機能をシンプルにしてそれらを組み合わせ使った方がわかりやすいと思います。多機能のツールの使い方を覚えようとするよりも効率的ですし。
どんなツールを使うにしても、オンライン・ワークショップでは参加者の使っている端末の種類やソフトウェア・接続環境、そしてネットワークのバックボーン、そして参加者のデジタル・リテラシー格差によって本来出るはずのアウトプットが出なくなってしまうので、事前のリハーサルやトレーニングはきっちりやってから本番に臨むのが肝要と思います。
その辺りの苦労話も含め、次のnoteでは4月20日に行ったRemoによるオンラインWorld Caféについて、そのやり方、うまくやるコツ、今後の課題などについて詳しく触れます。ご期待ください。( ´ ▽ ` )/
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