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初めてもらった言葉

社会人になって間もない頃のことです。(もう数十年前ですが)
ちょうど新入社員研修が終わって配属になった日のことでした。私は営業として社会人の人生をスタートしましたので、研修が終わると配属先の事業部の本社で事業部のマーケティング部の人たちに事業部の取扱製品を教えてもらうことになっていました。

偉い人がたくさんいる本社のオフィスで、周りからの視線とひそひそ声を感じながら、全く未知の分野の知識を覚えていくことを要求されるので、かなり緊張していたのを覚えています。
黙って席を立つと怒られそうな気がして、トイレに行くのも誰かの許可をもらってから行こうとしている状態でした。(誰でも最初はそうですよね( ´ ▽ ` )/)

暫定席に座って、与えられた資料を読みながら次の製品担当マーケティングの人に呼び出されるのを待っていると、奥の席に座っている営業部長のAさんから声をかけられました。
Aさんは内定者研修の中で見かけた同期の中で最も私のことを気に入り、人事に自分の事業部に入れたいとリクエストした人でもありました。
「こっちに来なさい」

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「君は酒は飲むのかね?」
「あ、はい…体育会系だったので、そこそこ飲めると思います」
「そう…じゃ、ゴルフは?」
「ゴルフはやったことがないんです…」
「なに!ゴルフをやったことがない?営業マンは『碁将棋麻雀酒ゴルフ』なんでもできないとダメだよ」
「あぁ、はい。やったことはないですができる様に練習して頑張ります!」
「そうか。そうか。うん、戻っていいよ」

緊張していたので、そんなことが聞きたくて呼び出したのか、とは思いませんでしたが、社会人ってのはいきなり訳のわからない質問が来るので答えられる様にしておかないといけないな、とは感じました。
そして、4−5分すると、また呼び出されました。
「こっちに来なさい」

今度は何事かな、と思いながらA部長の前に座ると、
机の上のノートパッドに万年筆でサラサラと何かを書いてから、1枚破って私の前おきました。

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これはその時にもらった現物です。大切に今もとっておいてあります。
A部長は書いたことを読むと、
いいかい?『どうしたらいいですか?』なんて言い出す奴にだけはなるなよ
と私の目をジッと見て言いました。
これは何か重要なことなんだなというのが伝わって来たので、
「はい、わかりました。肝に銘じます」
と答えると、A部長はニコッと笑って
「戻っていいよ」

その後の社会人人生数十年…
「どうしたらいいですか?」ではなく「こういうのはどうですか?」というのが自分の癖になりました。
新入社員のくせに生意気なやつだとか、分かってもいないのになんでそんなこと言い出せるんだとか、きっと思われていたと思います。
それでも気にせずに続けて、すっかり今ではそうしないと気持ちが悪いほど定着しています。
自分の意志をはっきりさせる…
どんなことがあっても。先行きが見えなくても。自分はどう考えるのか、自分はどうしたいのか、自分はどうするのが一番良いと思うのか、を明らかにする。これは自分のビジネスマンとしての行動原理とも言えるものになっています。

おそらくA部長にしてみれば、事業部の営業マンや営業課長がすぐに「A部長どうしたらいいですか?」と聞いてくるのに嫌気が差していて、愚痴の様に「あんなふうに成らないでくれよ」という意図で話したことが、私にとっては薫陶になったというだけだったのかもしれません。

仮にそうだったとしても、この「初めてもらった言葉」は今の私の中にあり、私自身を形づくる言霊になっています。
新しい人生のスタート時に、こんなに強烈でその後の自分を動かし続けてくれる言葉をくれたA部長にはいくら感謝をしても足りないくらいです。
そして自分もA部長の様に、後々まで人を支え奮い立たせるほどの、魂に銘を打つような言葉を送れると良いなと思っています。

あなたが社会に出た時に、初めてもらった言葉は何ですか?

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