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ソフトスキルからパワースキルへ

「スキル(Skill)アップ」とか「スキルを身につける」とか普通にいうようになって来ています。
最近では、UpskillingとかReskillingというようにすでに持っているスキルをさらにUpgradeしたり学び直したりすることで、仕事の仕方を変えて職務自体を再定義することにもつながっています。在宅勤務やオンラインで仕事をするようになってきてからはそれが加速しているかもしれません。

スキルとは、昔風の言い方で言うならば「腕を磨く」とか「技能を身につける」という言い方になるのでしょうけれど、スキルにもいろいろあります。そして様々な分類や類型があるのであれもこれもとなりやすく、ビジネスパーソンとしての自分に本当に必要なものが何かが分からないまま次から次へと手を出している人も多いのではないでしょうか。
どんなものがあるかちょっと考えただけでも、プランニングのスキル、パソコンのスキル、プレゼンのスキル、交渉のスキル…など無限に挙げることができそうです…中には「それってスキルだっけ」となるものがあり、だから混乱が生じるのでしょう。

ハードとソフト

スキルについてこれまでよく言われてきたのが、「ハードスキル」と「ソフトスキル」に二分する考え方です。

ハードスキルは対象がモノやコトになっていて、手順を覚えてからコツを掴み、繰り返しの練習を通じて上達してゆく類のものです。

一般的にパソコン関連のスキルはハードスキルと言えるでしょう。タイピングに始まりExcelのマクロを組んだり、Wordで見栄えの良い文章を作ったりというところです。算盤とか工作などの手を動かす技能、楽器の演奏や絵画の表現など芸術もハードスキルと言えます。

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道具や手段を知り尽くし、経験から柔軟かつ適切に効果を最大化するためのものを選んで使い分けるメタスキルまで含めてハードスキルと括れます。

ソフトスキルは対象が人になっていて、相手や状況をよくみて聞いて、その場その場で柔軟に対応することで人を動かしてゆく類のものです。

一般的にコミュニケーションスキルと呼ばれているものはソフトスキルに分類されます。ファシリテーションやコーチング、交渉術などが代表的です。これらは得てして決まった手順の反復で上達するようなものではなく、その場その場で状況にあった対応や手順を作り出すことを求められます。
そういう意味ではプレゼンテーションはハードスキルとソフトスキルのミックスかもしれません。

ソフトスキルを人に関するスキルだと言う見方をするとリーダーやマネジャー(管理職)になるとニーズが増すと考えられ、新任管理職研修などでは必須項目になっています。

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ハードスキルは業務遂行のための必要となってくるスキルであり、ソフトスキルは人間が生まれ持った能力を上げてゆくものであると言う考え方もあります。
会社組織の中この考え方に立つと、ハードスキルは配属先の各部門で教育し、ソフトスキルは全社員共通の資質として人事部門が主催するトレーニングで行うと言う具合になってきます。

そしてハードスキルは世の中や時代の変化に合わせて求められるものが常に変化し都度身につけられるものですが、ソフトスキルは簡単に身につけたり強化ができるものではないかもしれません。

ソフトスキルは「ソフト」なのか?

時代の要請に応じて変化するハードスキルというものは中長期的に組織や企業が持ち続ける能力とすることに意味がなくなってきているかもしれません。それほど世の中の変化のスピードが早いのです。
一方でニーズが上がるとそれに対応するサービスは次々に現れるので簡単に手に入るし、自組織でそれを培うのに時間をかける代わりに買った方(そう言うスキルを持った人を一時的に雇うか、委託する)が良いという考え方もあります。

そんなハードスキルと比べると、ソフトスキルは外から買ったり一時的にサービスを利用してなんとかなるものではないでしょう。たとえ外部のトレーニングを利用したとしても学んだことをある程度の期間使って修練していって初めて身につくものです。

そう言う意味ではソフトスキルはちっとも「ソフト」ではありません。複雑ですし、習得には時間がかかります。人にもともと備わっているスキルではあるけれど、状況によって必要となるものが変化します。そしてビジネスにとって極めて重要なスキルになっていると言えるのではないでしょうか。ビジネスにパワーを与えるのはソフトスキルだということです。

パワースキルとは何か?

ソフトスキルを人とのコミュニケーション・スキルに留めず、どのようにコミュニケーションを行うかのメタスキルを含めたり、自身の内的コントロールまで含めたりするとさらに話は複雑になってきます。
例えば「状況の変化に対応してゆくために、柔軟に考え敏捷に構造に変化に対応する」というのは、複数のソフトスキルの組み合わせとそれを可能にするメタスキルが必要になります。
そんな状況に対応できるスキル・セットを明確にしてゆこうとして、IBMのリサーチもでています。

Josh Bersinというアナリストがいます。アメリカでは人事の世界で結構知られた人らしいですが日本で彼の名前は聞いたことがありませんね。
彼は、ソフトスキルやヒューマン・スキルとか色々な言い方をするよりもパワースキルと呼ぶことでその重要性について再認識しようと彼のサイトで述べています。それによると以下がパワースキルの代表的なものだとしています。

パワースキルの例
Optimism(楽観的に考える)
Curiosity(好奇心を持って接する)
Tenacity(粘り強さ)
Flexibility(柔軟である)
Integrity(真摯である)
Learning(学ぶ)
Generosity(寛容である)
Joy(楽しむ)
Teamwork(チームとの協働)
Communication(コミュニケーション)
Drive(自分のモチベーションを上げる)
Ethics(倫理観)
Empathy(共感)
Followership(リーダーを盛り立てる力)
Time Management(タイム・マネジメント)
Happiness(幸福感を作る)
Kindness(親切)
Forgiveness(赦し)
Awe(すごいと言う、思う)

こうしてみてゆくと、パワースキルの根幹には自己認識(セルフ・アウェアネス)と自己コントロールがあるのが分かります。コミュニケーションなどは一見テクニカルなものに感じるかもしれませんが、相手に合わせて相手に伝わるように自分の伝え方をコントロールすると言う意味で考えると「いくつかのコミュニケーション・スタイルを使い分ける」メタスキルだとも言えると思います。

パワースキルは全ての人に備わっているものではありますが、その習熟度はその人の生まれ持った資質や育った環境によって埋め込まれた思い込みによって発揮の度合いは人によって違いがあります。しかし、自分のパターンに気づき考え方や行動を修正し習慣化することで何年もかけて強化をして行くものであり、一生学び続けるものではないでしょうか。

組織で働くからこそのパワースキル

私自身の経験もお話ししたいと思います。

20年ほど前にキャリアショックを体験したときにビジネススクールに通いました。本を読んで知識を詰め込みフレームワークを覚え、ケーススタディを通じて学び仲間をディスカッションをしてそれなりに賢くなった気分になりましたが、何か決定的にかけているものがあると感じたので何科目か修了して辞めてしまい、人間力(Human Skills)をいかに高めるかにシフトしてゆきました。

何かが欠けているという思ったのは、当時働いていた会社で起きたことに由来していました。アメリカにある親会社が次々とMBAホルダーを採用してDirector等の要職に抜擢してゆくのを横目で見ながら、その人と実際に一緒に仕事をしてみると優秀で頭がいいにもかかわらず仕事ができないということがよぉ〜く分かったのでした。

何が起きていたのかを簡単に説明しましょう。
MBAホルダーだから採用されGlobalのMarketing戦略を立てるDirectorに抜擢された女性がいました。彼女は頭は良いですし切れるアイディアを出せるのですがそれを理解できない人へのアプローチに工夫が見られなかったり、人の話をよく聞いて人を動かすということがうまくできなかったのです。
それでも彼女の言ってることはある意味正しいし、きっと成功する戦略なので譲らずに主張を繰り返してきます。それが受けて側には上から目線で歩み寄ってこない印象を与えていました。彼女自身はとっても笑顔の素敵な人でしたが、仕事となると譲れないところがあったのかもしれません。
1年ほどそのポジションにいる彼女と一緒に仕事をしましたが、結果的に彼女は一人で浮いてしまい、戦略の実行されることなく中に浮いてしまい彼女は解雇されてしまいました。

組織の中においてはたった一人で仕事をしているということはあり得ないと思いますし、より大きなことをしようと思えば他の人を巻き込んでゆくことになります。
そこで求められるのは、テクニカルな意味でのコミュニケーションスキルではなく、自分をコントロールし好奇心を持って人に接し単に相手に合わせるのではなく双方の力を掛け合わせられるパワースキルなのではないか、と思うのです。

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