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グランド・ルールとグラウンド・ルール

ワークショップや研修の最初に、講師やファシリテーターがやっている最中の約束事、決まり事について説明をしますよね。
その場や講師によって、「グランド・ルール(Grand Rules)と言う場合と「グラウンド・ルール(Ground Rules)」と言う場合があります。

ワークショップや研修に参加しはじめのころ、私はグラウンド・ルールの聞き間違いがグランド・ルールなのかなと思っていましたが、よくよく内容を聞いてみるとそうともいえないのかもしれないと思っています。
違っていて使い分けられるとしたらどうなるのかを考えてみましょう。

グラウンド・ルール

研修やワークショップで具体的な中身に入る前に進行役やファシリテーターが提示をしたり、組織によっては会議やミーティングにおいて進行をスムーズにするために設定したりするのがグラウンド・ルールです。

グラウンド=Groundですので「土台」となるルールということになります。これから行われることの進行を妨げることなく効果を最大化するために必要となってくる参加者全員に適用されるルールとなるので、皆が立っている「地面」であり「土台」のルールになるので、そのように呼ばれるのでしょう。

実際には、どのようなものがグラウンド・ルールになっているでしょうか?

集合研修の場合だと次のようなものがあります。
・携帯電話の電源はオフ、ないしはマナーモード
・内職はしない
・どうしても抜けないといけない時は一言講師に断ってから
・グループ討議では一回は発言をする
・休憩や演習の時間を守る(時間になったら始める)

オンラインの場合だと次のようなものが加わることがあります。
・zoom以外のプログラムは終了しておく
・発言する時以外はミュート
・発言したい場合は手上げボタン、あるいはチャットに書き込む
・カメラはオン(あるいは、発言時以外はオフ)
・ポール(投票)には参加する

こうしてみてみると、禁止事項が多いですね。そうなるのは、グラウンド・ルールが場を維持するためのルールであるからではないでしょうか。

グランド・ルール

一方グランド・ルールは、その場が何を目的としているか、どのような効果を参加者にもたらそうとしているのかをセットしている感じです。

例えば、次のようなものです。
・自ら学ぶことに責任を持つ
・仲間の意見や経験からも学ぶ
・相手が話している時は途中で否定せずに最後まで聞く
・相手から聞いたことは他の場で話さない(守秘義務)

こちらは、進行上の妨げとなるかどうかと言うよりも、学習やアウトプットを最大化する場づくりのためのルールと言えると思います。

また、「グランド」には「壮大な」とか「高邁な」という意味がありますので、グランド・ルールは細かい指示をするのではなく、何をすべきなのかは自分で判断するようになっています

例えば、「自ら学ぶことに責任を持つ」であっても、具体的に何をやることになるのかはその人によって変わってきます。ある人にとってはノートを一所懸命とることになるかもしれませんし、別の人にとっては普段言葉にしていないことを発言し他者と討議することになるかもしれません。

よって、ファシリテーターや進行役は、グランド・ルールを説明する時には「例えば」と言って具体的な方法の例を出したほうが伝わるでしょう。逆にそうしないと、こうだったらいいなということをホワッと言っただけで、聞いてる側も分かったような分かってないような中途半端な状態になるでしょう。
もし、時間があればグランド・ルールとは自分にとって具体的にはどういう行動であるのかを書いてもらうというのもありかもしれません。

ワークショップで設定される「ルール」の現実

こうして見てくると、グランド・ルールとグラウンド・ルールはその意味合いが少し違うのですが、実際にワークショップや研修に参加すると、それぞれが別々に提示されることはまずありません。
大抵の場合、混ざった状態で提示されています

ルールの種類がいくつもあるように受け取られるのも考えものですが、グラウンド・ルールのような禁止事項にグランド・ルールのようなものが混じってくると、人は禁止事項の方に意識が行ってしまい目的を達成するための原則たるグランド・ルールを見失いかねません。

そこで以下のように進めるとスムーズだと思います。
1)研修やワークショップが始まる前段階で手続き的、かつ事務的にグラウンド・ルールを説明する。(House Keepingという表現もありますが、そのイメージ)
2)アジェンダを提示する
3)この時間の目的あるいは期待成果について明確にする
4)目的を実現するためのルールとしてグランド・ルールを提示する

目的の後にアジェンダではないのかと思うかもしれませんが、参加者の立場で考えると、(始まった時点では)残念ながらどのくらいの時間がかかるのか何をやるのか、休憩はあるのかの方が目的よりも関心が高く、そこで気持ちの準備(セットアップ)をさせないと、そこから先を聞けません。
参加者は必ずしも最初から意識が高い人ばかりではありません。進める中で徐々に高めることができるものです。
グラウンド・ルール、アジェンダの順に話せば、その場に集中するために不要な懸念事項を取り去ることができるはずです。

目的や期待成果のところは、進行役やファシリテーターが説明するよりも、外部のスピーカーやビデオ、あるいは役員の薫陶や講話を入れるとより効果が高まります。

たくさんのルールを提示すると頭の中に入りませんし、全てを守ることに意識は行きません。よって、グラウンド・ルールはある程度当たり前で頭の中に既にあることの確認とした方が良いでしょう。
むしろ力点をおくべきは、その場の目的ごとに決められるグランド・ルールについて理解し守ってもらうように働きかけることではないかな、と私は思います。

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