『愛の渇き』一読

醜悪と退廃が忍び寄る戦後の日本。未亡人が、イワンのばかみたいな青年に恋する。嫉妬の苦しみが主題。複雑な心理と単純な肉体の二項対立を中心に、ものすごい複雑な要素をシンプルな結末の一点に収束させていく。そして表れる深淵なヴィジョン。エンタメにしてジュンブンガクな、読むジェットコースター。主人公の懊悩が艶やか。馬鹿にされる知識人への筆致が達者で愉しい。祭りの場面は見所のひとつ。脂の乗った充実っぷりで、また読み返したらガラッと細部の印象が変わるだろう。余談。1950年って、これ25歳で書いたのかよ。すんげえなあ。

「動き」がある文章。
弥吉も面白い人物だ。主人公との独特の関係。

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