SS『幽霊の作り方:3』タターヤン

 そこは真っ白な花畑だった。人はただ1人も見えない。今日の仕事は早く終わりそうだ、と頭の中で考えた。
 私は花畑を散策した。このデータ世界の主がどこかにいるはずだ。それを終了させなくては。
花畑の花々を踏み荒らしながら散策していると、悪臭が漂い始めた事に気付いた。何事かと辺りを見渡して気付いた。踏みつけられた花から何か垂れている。どうやら機械油の様だった。
 私はあまりにも「ニンゲンらしくない」と思い、観察した。こんな世界を作るニンゲンは初めてだった。
 どうやら一筋縄ではいかないらしいぞ、と考えを改め、再度花畑を目を凝らして散策を続けた。


 どれほど歩いただろうか、足が棒のようになる頃、花畑の中で仰向けに寝転がる誰かを見つけた。
 きっとデータ世界の主だ。
 花畑で倒れているデータ世界の主に、私はゆっくり近付いた。彼は私に気付いたのか、ゆっくりと体を起こしこう言った。
「お前が来ると思っていたよ……MOTHERはそういうヤツだからな……」
「オニカズラ…?」
 その男は手足が腐り蕩け落ち、眼球が一つ腐り落ちていたが見間違えるはずも無かった。
「これが俺が見つけた終了せずに苦しみから逃れる方法さ…このデータ世界の主になり変わったのさ……今は俺がこのデータ世界の主だ…痛みを排除したから…後はここで全身が蕩け落ちるのを穏やかに待つだけなのさ……」
「そんな事をしても私達"バグ"が派遣されるだけです。そもそもここは強制終了からは逃れられないデータ世界です。なぜこんな無駄な事を?」
「……無駄か………分かってはいたんだがね……所詮お前は…心を持たない新型か…」
 私はオニカズラを強制終了させる為に、執行装置を構えて彼に近付いた。彼は穏やかに微笑みながら私を待っていた。
「…ルーデンス……俺の部屋にある荷物は…全部お前にやるよ…ハハ…ハ…カギは開けてあるから……要らなかったら……そのまま…捨ててくれ」
 私は彼のこめかみに執行装置を突きつけ、引き金を引いた。彼の腐り始めていた頭が弾け飛び、一拍置いて彼の蕩けていた体がべちゃりと力なく花畑に倒れた。データ世界が静かに壊れ始め、私はデータ世界から強制的に退去させられた。オニカズラは完全に終了した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?