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チンニクエスト#02 DAWN of the HORSE 開会宣言



開会宣言

世の中の珍しい肉や魚をおいしく食べる京都珍肉博覧会、略して「京都珍博」は、試験的な#0から数えれば3回開催してきた。そして、1種類の動物の肉に特化して、その魅力を多面的に味わうスピンオフ「チンニクエスト」は、羊に続いてこれで2回目。スピンオフ、つまりは番外編が旺盛すぎる気もするが、いわばこれは縦糸と横糸の関係なのだから仕方がない。

まだ食べたことがない珍しいものを口にして食の世界地図を広げる喜びもあれば、メジャーな食材ではあっても初めてお目にかかる部位や調理法を通してその食材の可能性を押し広げる楽しさもある。いずれも大切なことだと考えている主催者3人が今回俎上に載せるのは、馬。

前回羊を扱った際のこの開会宣言では、「生まれ変わったら羊になりたい」と僕が昔から公言していることを書いた。つまり「来世は羊」と決めているわけだが、僕は午年生まれで馬面ということもあり、言わば、「現世は馬」である。別に共食いを忌避してのことではないが、馬肉を初めて食べたのは実に遅くて、成人してからのことだ。場所は、東京の居酒屋。友人の樋爪さんという女性が、「食事券が手に入ったから奢ってあげるわ」というのでヒヒンと馳せ参じたその店のメニューにあったのが、熊本の馬刺し。当時から珍しいものが好きだった僕は、迷わず注文。供されたのは、サシが入った赤身と、真っ白なたてがみ。これが美味かった(今日はきっと、無意識にこのダジャレが出てしまうことだろう。馬はウマいのだから仕方がない)。ヒヅメさんに馬肉を奢ってもらった「現世は馬」の僕は、それ以来、日常的に馬肉を食べることになった。のであれば、話は早いのだが、決してそんなことはなく、前回の羊と比べても、馬肉を食べる頻度は極端に低い。関西に食べる習慣がないからだろう。日本での馬肉食文化は、あくまで飛び飛びで点在していて、そこへ行かないとなかなか口には入らない。世界的に見ても、食べる地域は限られているらしい。そして、たてがみまで食べるわけだから、きっと他にも様々な部位が食べられるに違いない。これは、探求しがいがありそうだ。調べると、栄養価も相当高いらしい。おいしくて、栄養価も高いのに、なぜ未だに食べるエリアがこんなに狭いのだろう。広がっていないのだろう。僕たちはそんな疑問を抱きつつ、ならば僕たちが率先して食べることで馬肉に光を当てようではないかと妙な使命感に駆られた。本来はもっと光が当てられるべきだ。「馬はウマい」と高らかにいななくことで、馬肉の夜明けを宣言する。それが今回の趣旨だ。折しも、「天高く馬肥ゆる秋」。
さあ、食の冒険の始まりだ。

2024年9月
MJ(ミートジョッキー)野村雅夫

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