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67.お城と湖の見えるタワマンへ引っ越す
東京生まれ東京育ち、便利な生活に慣れた私に、イタリア旧市街での暮らしはやはりムリだったようです。
インターネットがつながらないのが最大の難点でした。
今度はふつうの現代的な暮らしができるところへ引っ越そうと家探しを始めたのですが……。
旧市街の火事
旧市街の1400年前の家は、インターネットがつながらない以外にも問題がありました。
引っ越して最初の冬のある夜、小さな広場を挟んで目の前にある家が火事になったのです。
暖炉の火の不始末が原因でした。
消防車が呼ばれますが旧市街の道は細く入り組んでいるので入って来ることができません。
それでホースを伸ばしての消火活動となるのですが、その長さが足りず、結局なんの火消しもできないままとなったのです。
近所の住民が総出でバケツリレーで消火活動に当たっていました。
でもそれはまさに、焼け石に水。
石造りの家は出火しても延焼することが少ないのだそうです。
そして、中途半端に火を消すより、天井や床など木でできた部分を燃やしてしまったほうが、あとから作り直すときお金がかからなくて良い、というのを初めて聞きました。
それにしても家のすぐ目の前で真っ赤な炎を上げて燃える家を見てしまったのです。
それは脳裏に焼き付き、完全にトラウマとなってしまいました。
憧れていたアパートの部屋
元の大家さんからちょっと見て欲しい物件がある、と言われたのはその火事が起こる少し前のことです。
それは、元大家さんの甥っ子が始めたB&Bでした。
ブラッチャーノ駅の近くにあり、内装はデザイナーを入れて一新させた素晴らしいものになっている、ついては日本からの観光客を紹介してくれないか、ということで案内されたのです。
その家を見にいったところ、あまりのゴージャスさに度肝を抜かれます。
160㎡はあろうかという広さ、ホワイエに大きなリビングルーム、主寝室に客用寝室、バスルームも2つあるし、何よりテラスからはお城が見えたのです。
角部屋なので明るいし、旧市街の物件とはまったく違います。
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オーナーは家のすべてを開放して1泊120ユーロでB&Bをしていました。
当時のブラッチャーノのB&Bの相場は1泊60~80ユーロだったので、けっこう強気な値段設定です。
でも、それだけの価値はあるシチュエーションでした。
そしてうっすらと、こんなところに住めたらいいのになぁと憧れを抱きます。
でも1泊120ユーロですから1ヵ月換算すると3600ユーロ。
夢のまた夢と思っていたのですが……。
思いもよらなかったオファー
引っ越した翌年の秋から始めた家探しは、2度の一時帰国をはさみ、翌年3月から本格的になりました。
それでもなかなか良い物件が出てきません。
不動産会社だけでなく、周囲の人にも事あるごとに訊ねてみますがまったく反応がありませんでした。
そうして2ヵ月ほど過ぎたころ、元の大家さんから連絡が入ります。
例のアパートに住んでみないかと。
というのも、B&Bを始めて1年強、お客さんがほとんど入らなかったようなのです。
ブラッチャーノにしては強気な値段設定と、広すぎる部屋に需要がなかったのでしょう。
そこで、元大家さんが甥っ子に、入らないお客さんを待つより私に貸したほうが良いのではないかと提言したところ、それが受け入れられたというのです。
住んでみたいなぁと淡い憧れを抱いてから、そんなことはムリだとすっかり忘れていたのですが、思わぬ展開になりました。
ブラッチャーノのタワマンに住む
こうして2019年5月からブラッチャーノの目抜き通りにあるアパートに住むことになりました。
感動したのは、家の中のどこででもWifiがつながること!
そして、角地に建っているので2面採光で朝から夕方まで明るいのです。
旧市街の1400年前の家とは180度異なる住環境となりました。
そして、引っ越してくるまで知らなかったのですがこの建物には屋上があります。
そこからは湖も一望だと言われ、さっそく上がってみたらあまりの絶景に驚きました。
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ブラッチャーノ湖は火山湖なので町全体が湖に向かって緩やかに傾斜しています。
さらにこの建物は他より高い7階建てで駅近くの高台に位置しているので湖とお城だけでなく、それを囲むように形成された旧市街まで、すべてを見通すことができるのでした。
いわばブラッチャーノのタワーマンションです。
すでにB&Bとしての設備は整っているので、自分で住みつつ私もここでB&Bをやってみることにしました。
客用寝室のツインルームと客用バスルームを提供します。
もちろんツインルームのシングルユースでも値段は変わらず、一人部屋追加料金の設定はありません。
各種SNSで告知したところ、さっそくその夏からお客さんが来はじめ現在に至ります。