59.アラフィフでイタリア婚活
はじめての滞在許可証の更新は済んだものの、学費や保険料、更新料などを払うのにお金がかかります。
Webライターの仕事だけでは日々の生活を賄うだけでいっぱいいっぱいでした。
イタリア暮らし最大の悩み
不安定なWebライターの仕事に、依然として増えないブラッチャーノ観光のお客さま。
先行き不透明、というよりお先真っ暗でした。
それでも、2015年当時は今のような円安ではなかったので、東京で暮らすよりブラッチャーノで暮らすほうがコストが安かったです。
Webライターの収入で何とか生活できて、旅行やちょっとした買い物、そして学費は貯金を崩して使うというような状況でした。
旅行や買い物は我慢するとして、どうやって学費をねん出するかがイタリア暮らしにおけるもっぱらの悩みとなります。
そんな話を周囲にしていたら、「イタリア男と結婚すればその分のお金はかからない」と、みんなが口をそろえて言うのです。
学費をねん出できないなら、それがかからないようにすれば良いというワケです。
目指せイタリア人配偶者ビザ
イタリア移住に必須な滞在許可証のひとつに家族用滞在許可証というのがあります。
イタリア人配偶者や子どものいる家族が申請できるうえ、学生のように1年ごとではなくもっと長いスパンで発行してもらえました。
先日、イタリア人と結婚している日本女性に聞いたところ、配偶者ビザは初回発行が5年の期限付き。
それ以降は10年ごとぐらいに写真を交換しに行けばいいだけ、ということでした。
さらに就労に関する制限もありません。
お金はかからないし、毎年クエストゥーラへ行って手続きする必要もない、良いことだらけの滞在許可証です。
そんなわけでイタリアに滞在する目的で偽装結婚してこの滞在許可証を申請する外国人もいます。
とくに高齢のイタリア男性をそそのかして結婚するEU圏外の東欧系女性にそのケースが多いようです。
イタリアからの仕送りで現地の家族を養うために結婚するのです。
そこに愛はなくとも、せめて感謝や尊敬があり年月をかけて愛が育まれて行けば良いと思います。
しかし、妻がまったく夫を顧みなくなったり、ひどい場合は行方知れずになるようなこともあるそうなので、結婚による滞在許可証を発行するときには厳重な審査が行われ多くの書類を要するのだそうです。
それでも、どうしてもイタリアに住み続けたい私にはこの配偶者ビザの取得は全ての問題を解決してくれる魔法に思えました。
婚活してお見合いをする
ちょうど初めての滞在許可証の更新手続きをしていたころ、私の婚活が始まります。
アラフィフではじめての婚活、しかもイタリアで。
日本女性のなかには出会い系サイトに登録してデートを繰り返し運命の相手を探している人もいましたが、私にそんな勇気はありません。
安全なのは知り合いの知り合いや友だちの友だちだろうと、周囲の人に婚活宣言をしました。
すると、何人かが良い人がいると紹介してくれたのです。
独身で仕事もあって、ちょっと年下のイタリア男たちでした。
シチリアから来たイタリア男
一緒に東京観光したシチリア女子の片割れ、兄弟がブラッチャーノ在住じゃないほうが、すごくオススメの人がいるから会ってみろと言い、なんと彼をブラッチャーノに寄越しました。
シチリア在住ですが日本の大学で勉強したことがあり、そのときはトスカーナで仕事があったので、帰りがけにブラッチャーノに寄るように彼女がセッティングしてくれたのです。
連絡先を渡されやり取りしていたら、日帰りではなくブラッチャーノに数泊して観光もしたい、ついては私のアパートに泊めてくれと言います。
ワンルームだしベッドも一つしかないのに、今なら絶対に断りますが、当時の私は婚活中の身であるうえ、何より友だちの紹介です。
イタリアではそんなものなのかと思い、彼を自宅に招きました。
たしか2、3泊していったと思います。
一緒にブラッチャーノ観光をして、ゴハンを食べて、寝て、という飛んでもなくハードなお見合いです。
これで恋に落ちることができればよかったのですけど、まったく一向に好きになれそうもない人でした。
幸いなことに相手も思っていたのと違ったようで、その後、結婚に発展することはありませんでしたが、今でもたまに仕事相談の連絡は来ます。
ローマのイタリア男
次のお見合いはローマの人だったので最初のようにハードなことはありません。
日本のふつうのお見合いのように、最初は友人も一緒に会ってお茶をして、2回目は2人だけで会う、というものでした。
この人が本当にとんでもなく良い人だったのです。
2回目のデートではローマ郊外にある彼の地元に呼んでくれて、一人暮らしの小さなアパートにランチを準備しておいてくれました。
一緒に町を歩いていたとき、偶然、彼の家族にも会ったのですが、皆さん、私の話を彼から聞いていたようで歓迎してくれています。
とくに年老いた母親が、私のことをギュッと抱きしめてくれたのが印象的でした。
こういう人と結婚したら、きっと幸せに暮らせるのだと思いました。
つつましいけれど穏やかな生活。
しかも私のことを初見で気に入ってくれていたらしく、すぐにでも結婚したいと言っているし友人としても本当にオススメの人だからと推してきます。
ただ、どうしてもそんなに好きになれなかったのです。
今回は恋愛ではなく、婚活、結婚相手になるわけで、好きという感情より条件を優先させるべきだと頭では分かっています。
そういう意味で言うと条件面では完ぺきなのに、私の感情がまったく結婚へと動かなかったのです。
どうしたものかと思いつつ、実は2回目のデートの後、1週間ほどで私は一時帰国することになっていました。
お見合いのお返事はハッキリとはせず、宙ぶらりんな状態のまま日本へ帰ったのですが……。