デブには課税

重量税 東京の街は、今日も人々でごった返していた。しかし、よく見ると、以前より明らかに痩せている人が多い。それもそのはず、3年前から「肥満税」が導入されたのだ。 主人公の健太は、菓子パンを頬張りながらため息をついた。甘いものが大好きな健太にとって、肥満税は死活問題だった。体重が基準値を超えると、所得税に加えて、体重1キロごとに1万円の税金が課されるのだ。 「まったく、なんでこんな法律ができたんだ…」 健太は、ニュースで肥満税導入の理由を思い出した。医療費の増加、食料自給率の低下、そして地球温暖化。どれも肥満が原因だというのだ。 「でも、俺は別に悪いことしてないぞ…」 健太は、公園のベンチに座り、残りの菓子パンを食べた。すると、目の前に見慣れない自動販売機が現れた。「ダイエットコーラ 100円」「低糖質チョコレート 200円」…。どれも、以前より高くなっている。 「あーあ、もう何もかもダメだ…」 健太は、空になった菓子パンの袋をゴミ箱に捨て、家路についた。彼の後ろ姿は、どこか寂しげだった。 家に着くと、母親が慌てた様子で健太に駆け寄ってきた。 「健太、大変！お父さんが倒れたの！」 病院に駆けつけると、父親はベッドに横たわっていた。医師の説明によると、過度なダイエットによる栄養失調で倒れたらしい。 「お父さん、無理しないで…」 健太は、父親の手を握りながら、涙をこらえた。肥満税導入以来、父親は毎日、ジョギングや筋トレを欠かさなかった。食事も、野菜中心の質素なものになった。 「健太…お前も…気をつけろ…」 父親は、弱々しい声でそう言った。健太は、父親の言葉の意味を痛いほど理解した。肥満税は、人々の健康を脅かすだけでなく、家族の絆までも壊してしまうのだ。 「もう…こんな法律…いらない…」 健太は、心の中でそう叫んだ。