量子コンピューターの覇権争い:IBMの独走か、中国・Googleの逆襲か?
記事の概要とポイント
この記事では、量子コンピューターの研究開発における国際的な競争状況を、特許・論文数・スタートアップの動向を基に分析しています。特に、IBMが特許と論文数の両方でトップを維持している点が注目されます。また、日本勢もNTTや日立がランクインしており、一定の存在感を示しています。
ポイント
特許の動向
量子コンピューター関連の特許ファミリー件数は過去10年間で10倍に増加。
IBMが特許価値の占有率でトップに返り咲き、中国のOrigin Quantumが追随。
日本勢も上位10社に2社ランクイン(NTT、日立製作所)。
論文数の動向
2023年の量子コンピューター関連論文数は約1万本で、毎年20〜30%の増加傾向。
国別では米国が中国を僅差で上回りトップ、日本は6位に位置。
企業別ではIBMが圧倒的な1位(2位のAlphabetの3倍の論文数)、日本からはNTTが3位、日立が9位、富士通と東芝が13位。
スタートアップの動向
資金調達環境は良好で、特に用途別の開発が進行中。
ただし、量子コンピューター業界は大手企業の支配が強く、スタートアップ単独では市場をリードしにくい。
2030年の展望
2030年には誤り訂正機能を備えた量子コンピューターの登場が期待されている。
日本政府は「量子未来産業創出戦略」を策定し、2030年までに量子技術を活用する人口を1000万人に、量子技術関連の生産額を50兆円規模にする目標を掲げている。
量子コンピューターの主導権はどうなるか?
現状ではIBMが特許と論文の両面でリードし、次いでAlphabet(Google)、中国のOrigin Quantumが追随しています。しかし、今後の主導権争いは以下の要素で左右されるでしょう。
1. IBMの優位性の維持
IBMは近年特許数を急速に増やし、論文数でも他社を圧倒しています。誤り訂正技術の開発が順調に進めば、実用化の最前線に立つ可能性が高いです。ただし、Alphabet(Google)やMicrosoftも基礎研究に力を入れており、特にGoogleは「量子超越性」の実証で先行した実績があります。
2. 中国の台頭
中国のOrigin Quantumや華為技術(Huawei)、アリババグループが量子コンピューター研究で急成長しています。特許出願数も多く、中国政府が積極的に支援しているため、長期的にはIBMやGoogleと競り合う可能性があります。
3. 日本の立ち位置
日本は論文数で6位、企業別ではNTTが3位に入っており、基礎研究では一定の強みがあります。ただし、産業化という面では欧米や中国に比べると遅れ気味です。日本政府の「量子未来産業創出戦略」が成功すれば、量子技術の応用分野で強みを持つ可能性もありますが、スタートアップが育ちにくい環境が課題です。
4. スタートアップの影響
スタートアップの台頭が今後の勢力図を大きく変える可能性があります。特に米国のRigetti Computing、IQM(フィンランド)、IonQ(米国)などが技術的競争力を高めており、大手企業が買収する形で技術が進化することも考えられます。
結論
IBMが依然として量子コンピューターの主導権を握る可能性が高いが、Google(Alphabet)やMicrosoftも有力な競争相手。
中国勢(Origin Quantum、Huawei、Alibaba)の成長が急速で、今後の主導権争いに大きく影響を与える。
日本は基礎研究では健闘しているが、産業化には課題が多く、政府の戦略次第で成長の可否が決まる。
スタートアップの技術革新が、今後の勢力図を塗り替える可能性もある。
2030年に向けて、どの企業が「誤り訂正機能を備えた量子コンピューター」を完成させるかが、主導権を決める最も重要な要素になるでしょう。