米大統領選に向けたドル需要急増と市場の強気予測-JPモルガン分析
この記事は、2024年の米大統領選挙が近づく中で、米ドルの需要が急増し、今後も強気な見通しが続くというJPモルガンのレポートを紹介しています。主なポイントは以下の通りです:
1. ドル需要の急増
米大統領選挙に向けて、米ドルの需要が急激に増加しています。特にドルのオプション取引では、強気の買いが通常よりも多く、通常の水準より2標準偏差も高い水準にあることが指摘されています。
2. 投資家のポジショニングの変化
投機的な投資家は、以前積み上げた米ドルのショートポジション(売りポジション)をほぼ解消し、ポジションが中立的な状態に戻りました。これにより、米ドルのロングポジション(買いポジション)を増やす余地が大きく残っており、今後もドル買いの動きが続く可能性があります。
3. 他の通貨との取引傾向
米ドルの強気な動きは、シンガポール・ドルやオーストラリア・ドルとの取引で特に顕著で、これらの通貨に対する売りが進んでいます。これは投資家が中国経済の影響をヘッジするためと考えられています。また、メキシコ・ペソやユーロに対するドル買いも強い傾向を示しています。
4. 選挙に関連する影響
米大統領選挙を控えて、ドル買いの取引がさらに増加すると予測されています。特に、ドナルド・トランプ氏が当選した場合、欧州に対する関税が拡大する可能性があるため、ユーロの下落リスクが高まっており、ユーロ・ドルのショートポジションが積み上がる余地があるとのことです。
5. 市場の中立性と余地
現時点ではドルのポジションは中立的ですが、これが大統領選挙に向けて変動する可能性が高く、選挙関連のリスク回避やヘッジのためにさらに多くのドル買いが行われる余地があるとJPモルガンのストラテジストは指摘しています。
まとめ
米大統領選挙を背景に、米ドルに対する強気な見通しが続いており、今後の市場ではさらなるドル買いが見込まれる可能性が高いです。特に中国関連通貨やユーロに対してドルが強さを増す動きが注目され、選挙後の動向により、為替市場に大きな影響を与えると考えられます。
この図は、JPモルガンが提供したデータをもとに、2024年10月の米ドル需要の急増と選挙に関連したヘッジ動向を示しています。
図1(左)
「USD demand has spiked in October, though there's a ways to go before USD positioning is fully subscribed」
図1は、米ドルの純コール需要のZスコアを時間軸で示しています。2024年10月に米ドルの需要が急増したことを明らかにしていますが、ドルポジションが完全に形成されるまでにはまだ余地があることが示唆されています。
グラフのラインは、1ヶ月(1m)、3ヶ月(3m)、6ヶ月(6m)の各期間の移動平均を示しており、長期的な米ドル需要の変動を把握できるようになっています。
2021年から2024年までの間、米ドルの需要は上下動を繰り返しており、特に2022年と2023年には顕著なピークが見られます。現在はそのピークから下がっていますが、再び需要が上昇していることが示されています。
図2(右)
「Election hedges showed up in the w/w flow metrics in options」
図2は、各通貨に対する米ドルの純コール買いのZスコアを示しています。このデータは、オプション取引における米ドルの需要がどの通貨に対して強いかを表しています。
一番上に位置しているのはシンガポールドル(SGD)で、米ドルに対する強気なポジションが特に高いことが分かります。続いて、メキシコペソ(MXN)、オーストラリアドル(AUD)が高いZスコアを示しています。
一方、下部には、台湾ドル(TWD)、トルコリラ(TRY)、インドルピー(INR)などがあり、これらの通貨に対しては米ドルの需要が低い、もしくはショートポジションが強いことがわかります。
全体として、図1は米ドルのポジショニングがまだ余地を残していることを示し、図2は特定の通貨に対する選挙リスクヘッジのための米ドル買いが顕著であることを示しています。特に中国関連通貨(シンガポールドルやオーストラリアドル)への米ドル需要が強く、選挙を控えて米ドル需要が続く見通しであることが示唆されています。