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海外売上が大きい企業、円安で見かけの売上増加と実質利益の真実
為替が160円に上昇した場合、円換算の売上が増加し、見かけ上、業績や利益が上がったように見えることは事実ですが、それが「本当の利益増加」かどうかは慎重に分析する必要があります。以下のポイントで詳しく解説します。
1. 為替変動による売上増加
売上見込みが100億ドルの場合、想定為替レート146円では1兆4600億円、160円では1兆6000億円となり、円換算で1400億円の増加となります。
これは為替差益による見かけ上の増加であり、実際にドル建てでの売上が増えたわけではありません。
2. 為替差益の実質的な影響
為替レートの変動が直接、利益に結びつくかどうかは以下の要因に依存します:
コストの通貨構成:
例えば、コストの多くが円建てである場合、売上が円換算で増える一方でコストは為替影響を受けにくくなるため、利益率が向上します。為替ヘッジ:
多くの企業は為替リスクを回避するためにヘッジを行っており、実際の利益増加幅はヘッジの状況に依存します。取引通貨のバランス:
売上だけでなく、輸入原材料や仕入れがドル建ての場合、円安で仕入れコストも増加し、利益の増加は抑制される可能性があります。
3. 見かけ上の利益増加か否か
見かけ上の業績改善は、あくまで為替換算によるものであり、実質的な競争力や実際の販売量が向上しているわけではないことを理解する必要があります。
実際に企業の競争力が高まったり、新しい市場を開拓した結果ではないため、為替差益の持続性には限界があります。
4. 投資家の視点
短期的には為替差益が業績改善と評価され、株価が上昇する可能性があります。
しかし、中長期的には為替変動を除いた実質的な成長や競争力の向上が重視されるため、企業の本質的な業績が評価されます。
結論
為替が160円に上昇した場合、円換算での売上が増加するため、見かけ上の業績や利益が向上しているように見えます。ただし、実質的な利益が増えているかはコスト構成や為替ヘッジの状況などに依存します。そのため、為替差益による増加を過大評価せず、実質的な競争力や利益構造の分析が必要です。