本日のレトリック2 -慣用句編-
これは不定期に小説やエッセイなどから目に留まった文章を紹介していく記事です。
なんて言いながら2回目にしてただの慣用句。決してネタ切れってわけではないのです…
専門家ではないので説明に誤りがあるかもしれませんがご容赦ください。
前回の記事はこちら
今回は簡単な言葉ですが、よく考えると秀逸な文句です。
「息を呑む」
緊張している場面や予想の立たない事象、予想外の出来事に対してよく使われる慣用句。
「息を呑むほど美しい」
「場の緊張感に息を呑む」
「その言葉に思わず息を呑んだ」などなど。
これを単純化した言葉として「驚く」や「衝撃を受ける」「動けなくなる」などが挙げられるでしょう。
ちなみに「衝撃を受ける」「動けなくなる」も厳密には比喩ですが、細かく見ていくとキリがないのでスルーします。普段使っている言葉はレトリックだらけなんだよってことだけ仄めかさせてください。
息を吸うことはあっても実際に息を呑み込むことはないので、これは隠喩でしょう(煙草を呑むなど気体を吸うときにも使われますが、多分派生的な意味だと思うので)。比較して考えると「衝撃を受ける」が隠喩なのに対し、「息を呑む」は隠喩に加えて暗示も含んでいます。「息を呑む」というのは行為ですが、息を呑むほどと、直喩で使われることもあることから直接的に主体の状態を表しているとは言えません。二次的な意味として主体の状態や感情を暗示しています。
似たような言葉でも並べてみるといかに「息を呑む」が秀逸なのかがわかるのではないでしょうか。そもそもそういう場面でないとき我々は息を呑むなんてことはしないわけです。みなさん、実際に息を呑んでみてください。「生唾を呑む」とは違います。呑むのは息です。特に音を出すわけでもなく、けれど「ハッ」という音を当てたくなるような言葉ですね。
「空気を呑む」ではなくて「息を呑む」。「呑む」という動詞が「息」という生理的で日常的な行動を表す言葉に修飾することで非日常感が表れています。なんてお洒落で秀逸な言葉なんだ!
「息」と書きすぎてゲシュタルト崩壊してしまったので今回はここまでとさせていただきます。
次回からはまた小説や詩からの引用としますので是非ご覧いただければと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?