夏を越せなかったら
もう冬が永遠に来ないんじゃないかと思うんです。このまま終わらない夏の終わりが続いていくんじゃないかと思んです。今日は一日雨でじとじとしてたからどこにも行けなくてより一層季節に閉じ込められている気分を味わったんです。夏、生き物の臭いがする夏。手のひらがじくじく濡れて気持ち悪い夏。外に出ただけで嘔吐したくなる夏。夏があまりに長いからトウモロコシが二回も育てられるそうです。もう冬は来ないんじゃないかと思うんです。冬が短くなるにつれてわたしも一緒に死ぬだろうと思うんです。そのとき憎しみを込めて死にます。眠れない、体の表面がふつふつ際立つ生き物臭い夏をどうにか耐え忍んでいるのに、まったく夏を越せる気配がないのがつらくて、早く外に出して。あたしを早く外に出して。かちこちのレーションみたいなの齧って、ぼんやりとこの世の終末にいる気分がしてきたのでした。閉じ込められてました。夏を越したい、夏を越したい一心で生きました。まだ辛い、まだ苦しい、まだ気持ち悪い。
追記
夏だってだれかにとってはあたしの冬で、「夏しか生きた心地がしないのに冬になってしまった」とか言っている人がたしかにこの世にいたし、夏生まれの人も夏が大好きな人もいるんだからあんまりそんなふうに言うんじゃない。
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