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【記事化】番外編#05 けんすうのコミュニティ起業奮闘記

※この対談記事は以下の放送についてAIを使用してまとめています。


けんすう: ということで、今回は番外編です。

尾原: そうですね。コミュニティ編は本当に楽しかったです。さて、番外編なのですが、皆さんお待たせしました。お待たせしすぎたかもしれませんが、コミュニティ編で、けんすうさんのコミュニティ波乱万丈記という話がなかったのは、非常に惜しいという声が多くて。ぜひこの辺り語れればと思っています。

ちょっとだけ告知させていただいてもよろしいでしょうか?この番外編が放送されている頃には、なんとこのハイパー起業ラジオ、累積で10万再生を遥かに超えているはずです。

けんすう: おお、すごいですね!本当にすごいです。しかも今の統計数字で見ると、毎回だいたい30分ぐらいなのですが、基本的に最後まで聞いてくださる人が80%なので、つまり何かというと、みなさんのお時間を4万時間いただいているということになります。

尾原: おそらくこの再生数の伸びでいくと、下手をするとこの放送を聞いてくださっている頃には、5万時間いただいているというメディアになっているかもしれません。本当にありがとうございます。

けんすう: ありがとうございます。素晴らしいですね。

尾原: いやー、シャレになってしまいましたね。5万時間とか4万時間とか。

けんすう: でもやはりコミュニティの話に連携して言うと、ポッドキャストとか音声コンテンツとコミュニティって非常に相性がいいので、これからコミュニティ系のビジネスをやる人はおそらく音声配信が相当主流になってくるかなという感じがしますね。

尾原: そうですね。特にコミュニティの中で説明をしたように、価値観を共有しているから居心地がいいというB型のコミュニティだったりとか、所属欲求を満たすようなタイプのコミュニティとかは、特に徹底的に時間をかけて価値観を一致させていくことができるので、このポッドキャストってすごく相性がいいと思います。

あとまだそこまで進めていないのですが、皆さんからの質問に少し答えていったりとかみたいなことを含めてラジオっぽくしていくというのもあったりしますよね。

けんすう: そうですね。その辺が音声の魅力ですよね。

尾原: おや、忘れていませんか。コミュニティとしての色を強くするためにいくつかの工夫ポイントがあって、ハイパー起業ラジオもやった方がいいじゃないかってけんすうさんさっき言っていましたよね。

けんすう: ああ、その話をしますか。やはり聞いている人の名前があった方がいいよねみたいな話になって、例えばオードリーのラジオだとリトルトゥースと呼ぶとか、いろいろありますよね。ハイパー起業ラジオを聞いている人のことって何て言うのだろうねって話にさっきなったのですが「ハイパー起業家」でいいのではないかという。

尾原: ベタですが。ハイパー起業家ですよ、皆さんこれからは。

けんすう: そうですね。普通の起業家とハイパー起業家の2種類しか世の中にいないので、これを聞いてくださっている方はハイパー起業家かなというふうに思いました。

尾原: はい、なのでぜひ僕はハイパー起業家ですというふうにこれから自己紹介していただけるような番組を目指して、みんな言ってくださいね、僕ハイパー起業家なんですよって。

けんすう: そうですね、まさにスーパー起業家で言うとイーロン・マスクさんとか、ビル・ゲイツさんとかいますが、ハイパー起業家はまだそんなにいないので。

尾原: そうですね、高城剛ぐらいですかね。

けんすう: ハイパーメディアクリエイターですね。

尾原: そうでした、そうでした。

けんすう: ハイパーって何だよというところがね、いまだにわかりませんが。

尾原: ハイパーを目指してやっている、ハイパー起業ラジオを支えてくださるハイパー起業家ということですね。ややこしいですね!

けんすう: こんな感じです。

尾原: というわけで、ぜひ皆さんまだフォローしていない方はフォローしていただければですし、コメントとかぜひしていただければと思います。さて、せっかくの番外編なわけですが、そもそもだってけんすうがもうコミュニティサービス立ち上げたのって、ミルクカフェの前の、早稲田の受験の時のためのコミュニティみたいな話からでしたか?

コミュニティサービスの立ち上げ

けんすう: そうですね、一番最初はたぶん95年とか6年の時に、呪いのサイトというのを作っていたんです。

尾原: 何をやっていたのですか。

けんすう: 10人に見せないと呪われるみたいな、昔チェーンメールというのがあって。

尾原: チェーンメールですね。

けんすう: そのようなものを作るとアクセスカウンターどうなるのだろうみたいな、本当に高校1年生とかなので許して欲しいのですが、やってみたんです。それ自体は全然回りませんでした。

尾原: 回らなかったのですね。

けんすう: 最終的にその呪いの掲示板というのがそこにあって。単にジョークサイトなのでみんなが騙されましたとか、広めましたって言うためのものだったんです。でも、だんだん人を呪いたい人が集まってきて、みんなが呪いたい人の名前と恨みつらみを書くという掲示板として成長していったんです。これがたぶん最初のコミュニティですね。

尾原: 最初のコミュニティの作品は呪いが集まる掲示板ですというふうに、これWikipediaに書いていいのでしょうか?

けんすう: はい、これは事実です。で、結局霊媒師の人か何かから、すごい悪い気が集まっているので、これ消した方がいいですよと言われて、霊媒師じゃなくても悪い気が集まっているのはわかるので消しました。

尾原: わかるわって思いました。それで閉じるだけじゃなくて、サーバーを置くように出したりとかなんかされたのですか?

けんすう: いいえ、もう消すだけでした。

尾原: その後何か呪いが伝播することはなかったのでしょうか?

けんすう: ありませんでした。健やかに生きています。

尾原: それか、そこの時の呪いのせいでけんすうはコミュニティしかできない状態になったのでしょうか。そういう呪い縛りが、制約が自分を強くするみたいなグラフィカみたいな感じですかね。

けんすう: あったかもしれません。で、その後にミルクカフェという大学受験系のサービスを始めて、これは大学受験生ぐらいの時です。

尾原: そうですね。やはりそうですね。

けんすう: 受験生だったので、いろんな予備校情報とか受験情報を知りたいなと思ったのですが、2000年って全然まだインターネットが普及していないので。

尾原: はい、あれも1999年ですからね。

けんすう: だからそういうサイトがなかったので、2ちゃんねるを参考にしてそういうのを作ったところ、めちゃくちゃ見られて、体感的にはたぶん予備校通ってる人半分ぐらい知ってるぐらいの感じでした。

尾原: それはすごいですね。やはり当時の人からすると2ちゃんねるは特定ジャンルだとハードルが高かったのでしょうか。

けんすう: そういうのもありますし、特定の予備校講師の話が聞けるとか見れるみたいなのって当時として斬新だったんです。

尾原: そうですよね。

けんすう: それでめちゃくちゃ人が来たなと思いました。それは当時で言っても月間1000万PVぐらいあったのではないでしょうか。

尾原: 当時はバナー以外にそういういろんなネタをしゃべる掲示板のマネタイズ手法ってなかったから、お金にすること自体は結構大変だったとは思うのですが。一方で、結局同じようなタイミングで出てきた「みんなの就職活動日記」とかが、いまだに現役で楽天から売却されて、確か30億ぐらいでしたか、また動いたりみたいな価値があるものだから。

けんすう: そうですね。受験対策系掲示板って意外と価値が高いと個人的に思うのですが。

尾原: そうですね。そうなのです。これはなぜ流行ったのでしょうか。

けんすう: なぜ流行ったのでしょうね。全然みんな知らないと思うのですが、当時浪人大学という浪人生のためのコミュニティサイトが小さくあったのですが。

尾原: あったのですね。ライバルがいたのですね。

けんすう: ライバルが。そこからめちゃくちゃ来ました。

尾原: で、浪人大学さんにはコミュニティが。

けんすう: コミュニティがあったのですが、いわゆる時系列で最新のが上に来るみたいなシンプルなやつだったのですが、僕がやっていたのが掲示板というのが代々木ゼミナールみたいな感じで分かれていて、その中でもスレッドの中でなんとか先生みたいにあるという、割と当時としてはモダンな作りだったので来たという感じです。

尾原: 話したいことが聞きたいことが一発でわかるようなカテゴリー構造になっていたから、十把一からげで新しいものからしか見れないから本当に自分が見たいものが見れないというところの差別化でグッといったということなのですね。

けんすう: で、これの後に2003年ぐらいにしたらばという西村博之さんが作ったレンタル掲示板の社長をやって、そこの運営とかもやっていて。要は2ちゃんねる型のレンタル掲示板のようなものもやっておりました。

尾原: したらばのことは言われるのですが2ちゃんねるとの違いは何なのでしょうか?ちゃんと聞いたことがなくて。

けんすう: 2ちゃんねるを誰でも作れるようにしようと思って作られたのが、正確に言うとJBBSという掲示板で、JBBSのプログラムをもとにして2ちゃんねるの裏側も再整備された関係性になっているので、裏のスクリプトはほぼ一緒です。

尾原: 実は共通化されていたのですね。

けんすう: 2ちゃんねるのプログラムを書いていたドルバッキーさんという人がいた会社が子会社としてしたらばというのを作ったのですが、JBBSもそこでやればいいじゃんと言って。一緒になったのですが、誰も社長をやりたくないので、ミルクカフェやっているけんすうにやらせようとなったみたいな経緯です。

尾原: なるほどですね。すごいですね、その頃のけんすうって。○○が入院しているから見に来ないって言って始まった人が。

けんすう: そうですね。大学生だったので、簡単にジョインしたという感じです。これが1年後にライブドアに買収されてという流れがありました。

尾原: 当時、時価総額で1億円でしたね。

けんすう: はい、1億円です。そういう経緯があったのですが、他にも実はあまり言われていないコミュニティサイトがいくつかあるので、そちらについてもお話ししていきたいと思います。

尾原: ぜひお聞かせください。

けんすう: はい。MOEBBSというアニメ漫画系のサービスも運営していました。これもかなり盛り上がりました。

尾原: ドメイン特化型のコミュニティは強いですよね。

けんすう: そうですね。それに加えてミルフィールというサービスも作りました。これはプロフィール画面を作りつつ、そのプロフィールに自分の掲示板がある、というような仕組みでした。これはデザインからプログラミングまで全部自分でやりました。

尾原: ミルフィールは、確か全略プロフの後ぐらいだったのではないでしょうか?

けんすう: 全然後です。全略プロフはもっと昔のサービスですね。

尾原: そうでしたか。全略プロフィールというのは、本当にプロフィールと一言アップデートするだけのサイトでしたが、当時すごく流行りましたよね。

けんすう: はい、そうでした。そして、その流れで作ったのがポエムというサービスです。これはポエム(詩)を投稿するサービスで、おそらく日本最大のポエムサービスになりました。

尾原: ライバルがいなかっただけという説もありそうですが、その頃はなぜそんな一見ニッチな萌えやポエムのようなテーマばかり選んでいたのでしょうか?当時、コミュニティを作れるシリアルアントレプレナーとして、なぜそういう方向性だったのでしょうか。

けんすう: 実は、ポエムには深い読みがあったんです。おそらく、炎上するのでみんなインターネット上で無難なことしか書けなくなるなと。そうするとみんなポエムっぽくなってくるだろうという予測がありました。

尾原: なるほど、そういう狙いがあったのですね。

けんすう: はい。さらに、当時カヤックという会社が運営していたkoebuという音声コミュニティと提携しました。ポエムを投稿すると、声優の卵のような人がそのポエムを読んでくれるというサービスでした。これがすごく良かったんです。

というのも、ポエムって投稿したいけど誰も読まないという問題があります。一方で、声を投稿する人も自分の声は投稿したいけど誰も聞いてくれないという悩みがある。この2つを組み合わせることで、ポエムを投稿した人は自分のポエムが声で返ってくるし、koebuの人はポエムを投稿した人からお礼を言われるという、非常に良い相乗効果が生まれました。ただ、残念ながら両方のサービスともに最終的になくなってしまいました。

尾原: それは面白い取り組みですね。0.5と0.5を掛け算すると0.25になってしまうけれど、1.1と1.1を掛け算すると1.21になる、というような相乗効果を狙ったわけですね。

けんすう: まさにそういった感じです。非常に素晴らしい組み合わせだったと思います。

尾原: なるほど、興味深いですね。ところで、これって岡田斗司夫さんがホワイト化社会について語る前に、けんすうさんがネット空間では本音が語りにくくなるだろうということを予測していたということになりますよね。ただ、その実現手段がポエムだったから、ちょっと意外に思われたかもしれませんが、コミュニティとしての進化はしっかり洞察していたと解釈してもいいのでしょうか?

けんすう: そうですね。実際、いろいろな工夫を凝らしていました。例えば、投稿者が見えない状態で、フォローボタンを押すと投稿者が見えるという仕組みを導入しました。つまり、誰が投稿しているかを知るためには、フォローするというリスクを取らないといけないわけです。

尾原: なるほど、そうすると「この人嫌いだからこの投稿を評価したくない」というようなバイアスがなくなりますね。

けんすう: そうです。フォローすることは良い投稿だと思ってフォローしたのに、その人が実は自分の嫌いな人だったということに後から気づくこともあります。これによって自分のバイアスに気づくきっかけにもなりました。

尾原: 非常に興味深い仕組みですね。ところで、その後はどのようなサービスを展開されたのでしょうか?

先駆的サービスの数々

けんすう: その後、nanapiというハウツーサイトを運営しました。これについては他の場所でも話をしているので詳しくは省きますが、その後に小さなQ&Aブームが私の中で来ました。実は3つ、いや4つか5つぐらいQ&A系のサービスを立ち上げています。

尾原: へえ、それは知りませんでした。どのようなサービスだったのですか?

けんすう: 最初に作ったのはミニクエというサービスです。これは100文字の質問に100文字で答えるという、非常にシンプルなものでした。

尾原: なるほど。質問も答えも短く、簡潔にするという狙いだったのですね。ツイッターが140文字以内に制限したようにQ&Aでも同じような効果を狙ったということでしょうか。

けんすう: はい、まさにそうです。ちょっとした疑問に対して、ちょっとした感じで返せるというのを目指しました。当時は「それぐらいググれよ」と言われがちだったので、そういった軽い質問にも答えられる場を作りたかったんです。

尾原: 面白い試みですね。他にはどのようなサービスがありましたか?

けんすう: 次に「ちょこっとnanapi」というサービスを作りました。これも同じようなコンセプトで、ちょっとしたノウハウを共有できるようなものでした。例えば「仕事のやる気が出る名言を教えてください」といった感じの質問に答えるサービスです。

尾原: これは流行りそうな気がしますが、どうだったのでしょうか。

けんすう: 実はあまり大きく広がりませんでした。おそらく、まだPC時代だったので、そこまでピンとこなかったのかもしれません。

尾原: なるほど、2009年頃だとまだスマートフォンを持っている人は先端ユーザーだけでしたからね。

けんすう: そうですね。その後、「○×nanapi」というサービスも作りました。これは「サクサク答えるにはテキストじゃなくて○×でいい」という発想から生まれたものです。例えば「文系よりも理系の方がいい」といった質問に対して○×で答え、どちらが優勢かを決めるというサービスでした。

尾原: 面白いですね。2009年から2010年頃って、SEO的にオーガニックなコンテンツを大量生成したいという需要もあって、「どっちが好き」系のサービスが流行っていましたよね。

けんすう: そうですね。ザッカーバーグさんも顔写真2つ出してどちらが付き合いたいかみたいなサービスをやっていて、それがすごく流行っていました。私もこれは面白いと思って、投稿数も多かったのですが、結論から言うと、だいたい半々か4対6ぐらいで収まってしまうので、結局何の参考にもならないという結果になってしまいました。

尾原: そうか、結局「みんな多様だね、賛否両論だね」で終わっちゃうわけですね。

けんすう: まさにその通りです。そこで次は「もう、短いのはダメだったら今度は長文にしよう」と思い、「モヤモヤ並び」というサービスを作りました。

「モヤモヤ並び」では、めちゃくちゃモヤモヤした質問を長文で書いてもいいというコンセプトでした。これはこれでたくさんの投稿がありましたが、やはり何か違うなと感じて、次に「アンサー」というQ&Aサービスを立ち上げました。

尾原: なるほど。モヤモヤという状況は常にユーザーが抱えているペインだと思いますが、モヤモヤを長文で書いてもいいし、長文で答えてもいいというのは、逆にハードルが高くなってしまいそうですね。

けんすう: そうなんです。また、モヤモヤって構造化されていない文章なので、SEO的にも難しく、持続的な集客を構築するのが難しかったんです。そこで出てきた結論が「アンサー」だったわけです。

尾原: 「アンサー」はどのようなサービスだったのでしょうか?

けんすう: 「アンサー」はチャットで即レスが来るQ&Aアプリのような感じでした。これは未だに「復活させてください」というメールが来るぐらい人気で、投稿数も1日50万件ぐらいありました。ただ、やはりマネタイズが課題でしたね。

尾原: そうですね。結局これらのサービスは問題解決型というよりはグルーミング型の先駆けだったわけですよね。当時はヒマブさんとか、そういったグルーミング型のコミュニティがスマホで乱立した時期でしたが、振り返ってみて、こういうグルーミング型で生き残ったオンラインコミュニティってあるのでしょうか?

けんすう: 実はほとんどないんです。投稿数の割にあまりマネタイズができないというのが大きな課題でした。結局、Yahoo!知恵袋のように生き残るのは、SEOが強いサービスなんです。

尾原: そうですね。SEOが強いからこそ目的指向性が高く、それによって広告の単価も高くなるわけですね。

けんすう: まさにその通りです。YouTubeで例えると、ヒカキンさんのような人気YouTuberは再生回数は多いけど、視聴者層が若いので広告単価が低い。一方で、メンタリスト醍醐さんのような、お金を払ってくれそうな年齢層をターゲットにしている人の方が、広告単価が高くなるんです。

尾原: なるほど、そういう仕組みなんですね。ところで、「アンサー」のその後はどうなったのでしょうか?

けんすう: 「アンサー」自体はあまり大きく成長しませんでしたが、そこから派生して「アンサー劇場」というのを作りました。これは2ちゃんねるにおけるまとめサイトのような、自分たちのコミュニティを持っているので編集サイトを作ってメディア化しようという試みでした。これは200万PVぐらいまで行きましたが、やはりそれでも十分とは言えませんでした。

尾原: 面白いアプローチですね。Twitterに対してTogetter(トギャッター)があるように、わいわい雑にやるノイズ自体が楽しいコミュニティって、なかなか売り上げにしにくいけど、それをまとめると記事として価値を持つ。そこでランキングなどの名誉欲求をくすぐったり、ライブドアさんがやっていたNAVERまとめのように、いいまとめをしてくれた人に広告収入をインセンティブとして還元するなど、そういったアプローチは今でも有効そうですよね。

けんすう: そうですね。ただ、どうしても集客がSEO頼みになりがちで、そこが難しかったです。

尾原: なるほど。その後はどのようなサービスを展開されたのでしょうか?

けんすう: 2014年ぐらいに、これからはダンスが来ると思ったんです。歌ったり踊ったりするSNSが確実に来ると思ったのですが、周りに言っても全然理解されませんでした。そこで、非言語でグローバルでダンスとかを踊って投稿できるのがいいよねと思ってエモシというサービスを作りました。

尾原: それは少し早すぎたかもしれませんね。

けんすう: そうなんです。結構これは色々複雑にしすぎてしまって難しかったのと、結局ミュージカリーとか今のTikTokみたいな、音楽を載せるという一要素がめちゃくちゃ大事だったんです。音楽なしの状態でやってもわけがわからなくなってしまうというのがあって、それに気づかなかったのが失敗でした。

尾原: なるほど。音楽を載せればよかったのに、著作権の問題を気にしすぎてしまったということですね。

けんすう: そうなんです。今から思えば、歌ってみた、踊ってみた的なものが著作権的にOKになったのは、YouTubeとかAIで音声を判定して、取りまとめて一括で日本の場合だったらJASRACだったりNEXTONEみたいな著作権会社と包括契約が結べるようになったからなんですよね。

尾原: そうですね。確かその辺の仕組みがちゃんとできるようになったのが2009年とか2008年ぐらいだったと記憶しています。ボーカロイドが2007年ぐらいに来て、その辺のタイミングでは著作権フリー的にみんなで楽しみましょうという雰囲気があって、ニコニコ動画が「歌ってみた」と「踊ってみた」をタグとして追加したのも2007年ぐらいだったと思います。

けんすう: そうですね。その後、2009年ぐらいに著作権の包括管理という考え方ができて、それをサードパーティーの他の会社でも簡単に使えるようになったからこそ、TikTokのようなサービスが生まれたんですね。

尾原: 時代の流れというのは本当に難しいですね。さて、その後はどのようなサービスを展開されたのでしょうか?

けんすう: その後、絶対にクリプトが来ると思ったんです。

尾原: このクリプトって暗号資産のクリプトではないですよね?

けんすう: 暗号が来ると思ったんですが、それが何だかわからなかったので、クリプトというドメインを取って暗号のコミュニケーションサービスを作りました。自分でテキストを書くと暗号になって可愛いイラストで表示されるんです。

尾原: クリプトって本当に文字をずらすとかではなくて、謎文字になって出てくるんですね。

けんすう: そうなんです。可愛いアイコンで出てきて、パスワードを入れるとちゃんとした文章が読めるというものでした。暗号って可愛くないのが一番問題だと思ったので、コンテンツの暗号を入れると可愀い絵文字がちゃんとした文章になるという、すごく可愛いサイトを作りましたが、そもそもニーズがゼロだったので、全く広がりませんでした。

尾原: これはいつ頃のことだったのでしょうか?

けんすう: これは2014年くらいのことです。暗号資産とかが来るというのはわかりませんでしたね。

尾原: そうですね。ただ、タイミング的に言うと2010年か2011年に「映像研には手を出すな」などがあって、作品の中に散りばめられている文字が実は解読可能になっていて伏線になっているみたいな。Twitterでも解説することがステータスになってきていて、いかに解説する余地を作るかみたいなことが映像作品などで仕掛けられていた時期ではありましたね。

けんすう: そうですね。でも、やはりニーズがなかったですね。

尾原: なるほど。その後はどうされたのでしょうか?

けんすう: 次に、LINEみたいなサービスを作らなきゃと思っていたんです。ネットワーク効果が超重要だと考えていて、SNSの入れ替わりってどこで起こるかというと、テキストから画像、画像から動画みたいな感じでリッチになる時だと思ったんです。すると理論的には動画の次ってライブなんですよ。

尾原: なるほど、その考え方は正しいですね。結局インスタグラムがライブをやったりとか。

けんすう: そうなんです。tiktokもそうですし。理論的にはSNSっていつ見に行っても友達の今の状態が分かるようになるはずなんです。その論理で言うと。なので、アプリを起動するたびに相手の投稿を見るたびに自分が撮影されないといけないみたいなのを作ったんです。

尾原: コンセプトを聞いたらBeRealっぽいじゃないですか?

けんすう: BeRealなんです。僕が作ったのはアプリを起動するために、インカメラで5秒間自分が撮影されてプロフィールアイコンになるというものでした。

尾原: 面白いアイデアですね。

けんすう: そうなんです。プロフィールアイコンになるとLINEみたいにメッセージアプリを立ち上げると、今最新の友達の5秒の状態がプロフィール画面で出るという感じにしたんです。これは絶対面白いなと思ってやったんですが、実際に作ってみてみると、おじさんの顔が並ぶだけのサービスになっちゃって、全然面白くないと思いました。

尾原: それって、アトミックネットワークという言葉を知らなかったのでしょうか?この時は。

けんすう: 知っていたんです。だから小さい範囲でいいと思っていました。つまり普通のやり取りはLINEだけど、相手のリアルタイムを見たい時はこっち使うみたいな変化と、結局5秒間今の自分を写すのって超仲良くないとやらないので、超仲良い人はこっちみたいになってくるなというのでやったんです。

尾原: でも、結局BeRealってどうやって流行らせたかという話があって、結局賑わい感とか、人気って大事じゃないですか。しかも人気ってやっぱりアイディールコンシューマープロファイル、いわゆるICPの憧れるような方々が使ってるから私も使いたいっていう風になるので。

BeRealが最初どういう風に仕込んでいったかというと、イケてる大学のパーティーを主催してるような人たちにパーティーの場所を貸してあげるから、みんなでこれに招待してくれない?みたいなことをやったんです。大学の中でもイケてる人たちが使ってるという風にしたりとか、投稿を学校が終わった瞬間みたいなことに合わせることによって、イケてる人たちが今から何がイケてるところに行くの?というように。

要は自分のイケてる瞬間をちゃんと共有されやすいようにコントロールする形で、コミュニティが憧れる人たちが始めてるからどんどん広がっていくところのアトミックネットワークの設計とものすごい地道なコミュニティシーディングがすごかったというのがBeRealというわけですよね。

けんすう: 面白いですね。でも、私のサービスはダメでした。

尾原: ダメだったんですね。その後はどうされたのでしょうか?

けんすう: その後にサニーチャットというのを作りました。これは5秒間をシェアして上に絵文字とかがガンガン載せれるみたいなものでした。これもやっぱりちょっと難しかったですね。2017年ぐらいに作っていたので、これで最後にしようかなと思っていたのですが、インターネット回線を返さないコミュニティサービスできないかなと思って作っていました。Bluetoothを使ったバケツリレーでメッセージを送るというのをやろうと思っていました。これはファイアーチャットという海外のアプリがあるんです。

尾原: それって政府に規制されたくないとか検閲されたくない、国民のちょっと政府の監視に対しての政治運動みたいな時にめちゃめちゃいいよねみたいな感じで話題になりましたよね。

けんすう: これはターゲットユーザーをギガがなくなる若い人たちにしようと思ったんです。ユースケースを見ていると、学校とかで目の前の友達にファイルを渡したいという時に、みんなLINEとかで送っているけどギガが気になるみたいな、ある時にモバイル回線使わなくても送れるようにしようというのが最初だったんです。

理論上、東京の人口密度だと高校生のうち2万人くらい使うと東京中バケツリレーでメッセージを送れるぐらいまで広がる可能性がありました。

尾原: 東京中でずっと無線を使わなくても、橋渡し橋渡しでいけちゃうんですね。東京の端から始まって、Bluetoothだけで。

けんすう: そうなんです。まず人口密度が世界一高いのが日本だからこそ可能なんです。

尾原: 確かに、しかも比較的若いセグメントで固まっていますからね。いけそうな気がしますね。

けんすう: いけそうですし、アトミックネットワーク的にもいいし、ツールから始まっているので。

尾原: まさにツール・トゥ・ネットワークですね。

けんすう: いいよねってなったんですけど、これはやっぱり技術的な問題があって、大容量のファイルをやり取りするのに超時間がかかる問題がありました。それに、リアルに壁があるとダメという。

尾原: そうですね、Bluetoothは壁越しに弱いですからね。

けんすう: だからダメでした。今話してもちょっとこれ面白いなと思いました。

失敗から学ぶ成功の鍵

尾原: すごいですね。これだけいろいろなサービスを試されてきたんですね。

けんすう: はい、とかとかやっていましたという話です。

尾原: でもこれを取りまとめると、割と時代を先取りしているものがありますよね。さっきの踊ってみたみたいな話って2017年ぐらいに始めていたら、音楽著作権のこともクリアできていたかもしれないし、日本って実はニコニコ動画に踊ってみた歌ってみた文化がすでにありました。

比較的2017年のタイミングってニコニコ動画が放送局側に行こうとしていたからカテゴリーを減らしていたんですよね。世代交代の文脈の中でもう1回踊ってみたとか歌ってみたとかが最注目されるけど。だから1回立ち上げたものを寝かせて、いいタイミングでやり直すという能力があれば意外と良かったんじゃないでしょうか。

けんすう: そうですね。

尾原: 早すぎる天才というふうにまとめるのはよくないかもしれませんが。

けんすう: 寝かすのもありますし、やっぱりタイミングとやり方ですね。あと微妙にやっぱりTikTokとかBeRealの正解例を見ると、全然足りていないんです。お客さんが喜ぶ仕組みとか作りとか。やっぱりスワイプでサクサク次に進めた方がいいよねは今は当たり前だけど、当時は存在しなかったUIなので、やっぱりその辺がありますよね。

尾原: 難しいですよね。だからTinderみたいなスワイプでサクサクみたいなものって、言い方悪いけどやっぱりスマホのメモリーサイズがある程度上がってきて、ああいうアクションが気持ちよく動けるようになるってやっぱりある機種からなんですよね。

けんすう: そうですね、まさに。

尾原: パズドラを作られた山本さんとかとお話をしたことがあるんですけど、やっぱりパズドラのパズルをぐりぐりピッはまって、連鎖するみたいなのもアンドロイドの特定機種からじゃないとあの気持ち良さが表現できないとかありました。

UXが不満から快感に変わる瞬間に必要なスペックみたいなものの見極めが必要だし、著作権を解決することが簡単にできるようになることもある。結局これだけ失敗を重ねられたってすごくないですか?1回のコストって全然耐えられるぐらいの失敗ができたわけですよね。

けんすう: そうですね。だから自分でやっているサービスとかも自分だけですし、会社としてやっても大きいものも小さいものもありますが、コミュニティサービスってどちらかというと設計のところにお金がかかるというか頭を使うので、作るのはそんなに大変じゃないですね。

尾原: なるほど。ところでリアルなコミュニティについても何か取り組まれたことはありますか?

けんすう: そうですね。おまけ的にリアルコミュニティをやろうと思って、シックスセンスベンチャーズというのをやったというのが最後1ネタとしてあります。

要はVCとかスタートアップってみんなロジックを言うんですよ。こうだから儲かりますとか。でも大事なのってなんとなくこれ来るとかだと思います。ダンスが来るとか暗号が来るみたいなもので、みんなで集まってその第六感でしか喋っちゃいけないというをやろうと言って、中川綾太郎さんと始めたんです。

尾原: スタンディファームとかですね。

けんすう: スタンディファームとか。めっちゃふわふわした話で終わるので、ダメでした。

尾原: ロジックが必要だなと思いました。でも逆に言うと実験コストが下がっているから、コミュニティの設計って時間がかかるけど、それって自分一人だったり仲間の時間だし、開発コストから見てみるとコミュニティ系ってそこまで画面数が多いわけじゃないから、運用コストはあるけど、割と一人でやれますね。今日のこの番外編って、けんすうさんってこんなにくだらないこといっぱい失敗しているんだっていうのは、すごい人に勇気を与えますよね。

けんすう: どれも筋いいんですけどね。

尾原: そうですね。最初の入りはいいんだけど、やっぱりタイミングが早すぎたり、UXが間に合わなかったり、特にマネタイズなのかな。そういう意味で言うと、ひろゆきさんも切り抜き動画含めて何回もコミュニティ系で当てている方じゃないですか。けんすうさんから見た時に、ひろゆきさんとけんすうさんでコミュニティ作りの才能なのかやり方なのか、差って何なんでしょうか?

けんすう: 普通の人の気持ちがひろゆきさんは分かるんですね。

尾原: 分からないんじゃなくて、ひろゆきさんが普通の人の気持ちが分かるということですか?

けんすう: そうなんです。もっと言うとちょっとえげつないところ、例えばこういう性的なもの見たいよねとか、人を攻撃したいよねとかそういったところまで熟知した上で作れるところです。

尾原: 私は多分そこを無意識に避けているんですよ。できるかできないかっていうよりかは、好きじゃないから避けちゃうって感じです。

けんすう: 避けちゃうので、そういう本当に人間の欲望と直結している面白いところがないみたいな感じになりますね。

尾原: 本気で人が動くドライバーってちょっと闇の部分含めたところの根っこに人間の欲望のドライバーがあるから、ある種ひろゆきさんはそこを憚ることなく突っ込める才能なのかブレーキの無さがありますね。それに対してけんすうさんはそこに対してちょっと好きじゃないか、そこに踏み込めないブレーキがありますね。

けんすう: そうですね。だからやっぱりダンスでコミュニケーション仕様でやるべきはやっぱりちょっとセクシーな女性が踊っているとかを最初にないとユーザーが来ないんです。

えげつないところを私は避けてドイツ人が何かやっているとか、それに対してブラジル人が豆を持って何かやっているみたいな方向で面白いと思っていたんですけど、ニーズはないわけですよ。

尾原: そうですね。面白いけど、ダンスの方に直結してこないから。ある程度人を惹きつける要素として、セクシーさだったり多少はないとね。踊っている側もそういうものを表現するとか、いろんな言い方するけどエモーショナルなものを宿らせるってことが一つのダンスの魅力だったりしますからね。

けんすう: そうですね。だから本来であればダンスが上手い人とか、かわいい女性とかかっこいい男性とかを最初に集めて、面白いねっていうふうにしないといけないところをやっていないとかが大きいんじゃないですかね。

尾原: なるほどな。結構本質的な話ですよね。コミュニティサービスって人がドライブするものだから、何をもって人がドライブするかに向き合う必要性があるというのが番外編の示唆ですね。一方で自分一人の時間で立ち上げるのであれば、これだけ失敗できると。だからハイパー起業家がもっとチャレンジしていいよねっていうのも示唆かと思います。

けんすう: そうですね。こんだけ失敗するんだなっていうのを見ていただいてもいいですし。

尾原: 心が折れないって大事だと思いました。最後にこれだけやり続けるドライブするものって何なんですかというプロフェッショナル流儀的な質問をさせていただきます。

けんすう: 何でしょう。楽しいんでしょうね。作りたいんでしょうね、単に。

尾原: そうだよな。

けんすう: だから今日もこれ話してすごい満足していますもん。

尾原: そうですね。私も面白いですよ。やっぱり好きだもん、私もこういうコミュニティの話は。

けんすう: 面白かったです。

尾原: 最終的にハイパー起業家は好きだからやり遂げるっていうことで、番外編を終わりたいと思います。ありがとうございます。長々と続いた番外編ですけど、聞いてくださった方ありがとうございます。


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