【第4回】IPO大賞受賞記念講演「IPOへの道のりと、これからのアイスタイル」
2017年3月16日、アイスタイルは、東京ニュービジネス協議会が主催する「第11回IPO大賞」のグロース部門を受賞しました!IPO大賞は、「新規株式の上場で日本経済の活性化に貢献している、或いは牽引役となっている企業を顕彰することにより、その意義を世間に広報すると共に、ニュービジネスやベンチャー企業の振興と育成に寄与すること」を目的に2006年に創設されたアワードです。
上場したばかりの成長著しい企業に贈られる「ルーキー部門」と、今回アイスタイルが受賞した、株式上場後4年経過し、企業として拡大発展し日本経済活性化の牽引役を担う新たなビジネスモデルのベンチャー企業に贈「グロース部門」の2つの部門賞が設けられています。
授賞式の場で、記念講演として代表取締役 兼 CEOの吉松がIPOに至るまでの道のりや、これからのアイスタイルが目指すべき姿。そして、今後起業を目指す方へのメッセージなどをお話しさせていただきました。
本記事はその記念講演の内容の書き起こしとなります。全5回の連載でお届けします。
ー「あの人を損さちゃいけない」という覚悟
あの、もうこのまま会社はだめになってしまうかもしれないって時に、1億円を出資してくださった方とは、それからずっと付きお合いさせていただいてます。それこそ、その時出資していただいた1億円は10億円以上にしてお返しできましたけども、あの時の1億円は今の10億より、もっとずっと価値がある。僕にとっては本当に大きな出来事でした。
「出会ったその日に1億円渡してくれた」、これは自分にとってもいまだにベンチマークです。僕は今日、目の前に現れた初めて会う26歳の若者に1億円をその場で渡せるか。これ、なかなか難しいですよね。難しい。まだできてません。ただ、いつか自分もそういうことが、責任と覚悟をもってできるようになれたらと思っています。
で、その人がなぜ我々に投資していただけたのか。候補は三十数社あったらしいんですけれども、最終的に投資していただけたのは僕らだけだったそうです。これは本当に僕にもわかりません。わからないです。ただ少なくとも、1億円の小切手を渡された瞬間に、「この人を損させてはいけない」という覚悟だけはできました。かっこいいビジネスモデルなんかじゃなく、「利益を出す」っていうことが死ぬほど大事だと思いました。
ちゃんと会社をまわすということに取り組んで、1年目の売上90万だったのが、2年目は1億1000万になって。それでも8千万赤字でしたけども。で、ついに3年目に2億2千万円を売り上げて、ようやくとんとん・・・という形になりました。
そして、それからいろいろありましたが、IPOまで行きつくことができました。結局、お金がないっていうことが、ビジネスを辞める理由にならなかったんですよね。絶対にこのビジネスは世の中にとって意味があるんだ、必要なんだって信じられたから続けられた。2012年の3月にアイスタイルはマザーズに上場し、同年、2012年中にそのまま(東証)一部上場することができました。同一年内での一部上場は後にも先にもたぶんうちだけだと聞いています。そこは一気に駆け上がろうということで、一部上場までいきました。
ーアットコスメの成長
今のアイスタイルはおかげ様で、日本最大の美容・コスメの情報サイトとして認知されるようになりました。
月間で1400万人ぐらいの方が使ってくれています。日本の20代30代の女性という区切りでいくと、3分の2ぐらいの方が毎月何らかの形で触ってくれているサイトにまでなりました。
今は、アットコスメだけでなく、eコマースや実店舗もやっています。店舗はもう、全国で20 店舗(2017年3月当時)になりました。
なんでECや実店舗をやるようになったのかというと、僕たちは、アットコスメが人気になれば世の中変わると思っていたわけです。アットコスメで支持を得た商品が店頭で売れていくようになると思った。ところが、アットコスメが多くのユーザに使ってもらえるサービスになっても、アットコスメで人気の商品がすごく売れるようにはならなかった。
なぜか。例えば、FBで100万いいねある商品と1万しかない商品。ツイッターで100万フォロワーある商品と1万フォロワーもない商品、どっちが売れるのか。ネットの世界で生きている人間は当然100万いいねの商品が売れると思うわけです。ところが、ドラッグストアがそれらの商品をどんな割合で仕入れるか。100対1にはなりません。基本的には、1対1です。ドラッグストアのMDさん、その頃はアットコスメのデータなんて見てくださってなかったですから。
もっと言ってしまえば、例えば1万いいねの商品が大手メーカーのもので、「今だったら販促費●●円つけます!」って営業マンが言ったら、むしろそっちを多く仕入れることだってあるわけです。
そうじゃなくて、「生活者の声をもとにしたお店をつくろう」ということで10年前、アットコスメストアを始めました。始めたとき、メーカーさんには僕すっごい叱られました。いつもは「吉松さんアットコスメでいろいろやってますよね、ネットのこと教えてください」だったのに、お店やるって言ったら、「吉松さんお店やるんですか?店頭立ったことあります?」「ないんです」「え、バイトでも?」「ないんです」「吉松くん、君、なめてんの?」みたいな。
化粧品メーカーに入れば最初はみんな3年間ぐらい店頭に立つんだよと。お店に立ってちゃんとお客さんを理解しなくちゃ売れるわけないじゃないかと。僕からすると、いくら店頭でお客様のことを知っても、そのお客さまの声を活かす仕組みがなかったら、結局売上にいかせない。
今、日本の化粧品専門店のなかでいちばん売り上げてる店舗はアットコスメストアのルミネエスト新宿店です。日本一。2位もアットコスメストアです。新宿のお店は、ルミネエストに入っている全部のお店の中でいちばん売り上げている店舗にもなりました。70坪くらいの小さな店なんですけれども、化粧品だけで年間13億くらい売れるようになっています。やっぱりユーザの声をいかしたお店づくりをするっていうことが、一番売り上げにつながるということが実証できたて、ほんと良かったなと思っています。
ー広がるビジネス
と同時にいま、グローバル、例えば中国ですとかに積極的に展開し始めて海外売り上げの比率が約18%になりました。
これに人材や投資事業をあわせて、今、全体で13社のグループでやっているのが、アイスタイルっていう会社です。
東京を中心に上海、香港、シンガポール、台北にも会社があります。
で、アットコスメストアってリアルな店舗をですね、これから海外でもやっていかないといけないってことで、今年の5月5日に台北で、そして6月にもう一店舗、7月~8月に更に1店舗と一気に3店舗立ち上げることが決まりました。
もう、やるならべた踏みだという事で、一気に海外をもっともっと強くしようとしています。
今日、本当におかげさまでこういう場で話をさせていただいてますけれども、ちょうど上場した2012年の売上が44億円で。そこから60億円、90億円、140億円ときて、3年後には500億という形で一気に成長にもっていこうと思っています。最初にね、10億円の売り上げをつくるのに6年かかったんですよね。次の10億つくるのに半分の3年かかって、9年で20億円。40億はその9年の半分で達成して通算12年。
1億円の売り上げを作る難しさを知っているからこそ、今、数字がどんどん伸びてきている怖さをすごい感じていますが、会社の数字は関係なしに伸びていって。まあ、こういうのをリアルに体験できているのは、すごく面白いなと思っています。
『IPO大賞受賞記念講演「起業からIPOへの道のりと、これからのアイスタイル」』第5回はこちら。