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フランス伝統料理の『百菜』シリーズ

概要

 パリが最も華やかだったと言われる《ベル・エポック》に人気を集めた小型本のレシピ集がありました。著者の名前は「ローズ嬢 Mademoiselle Rose」ですが,これは勿論筆名で,後に『フランスの家事 La Ménagère Française』という雑誌の編集主幹となります。そのレシピ集は一冊ごとに特定の食材を扱った100種のレシピを収録しており,それらの食材は例えば卵,ジャガイモ,冷菜,ソース,仔牛,牛肉,ジビエ,野菜などなどです。各レシピ集のタイトルは逐語的に訳すと『XXを調理する100の方法(100 façons de préparer xx)』となりますが,ここでは『XX百菜』とします。
 以下に不定期でレシピの日本語訳を紹介していく予定です。なお,翻訳についてはヴェルヌ条約附則(1974年6月12日)により翻訳権取得は不要となっています。

『百菜』シリーズのレシピは百年以上前のものなので現在とは色々と異なる点がありますが,興味深い点も多くあります。例えば,調理用の熱源として当時一般的に使われていたのは薪や炭で,ガスレンジがフランスで普及し始めたのは1930年代半ば以降です。このレシピ集で頻出する「火から下ろす」(日本語でもそうですが)という表現は今でも使われていますが,それは正に往時の調理法の名残りであると言えるでしょう。
 訳出に際しては,当時の一部のレシピに特有である単文の連続は,誤訳にならない範囲で,日本語として読みやすいように複文にしました。また補足的な説明を【】内に入れてあります。

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