アニメ専門オケ発足に考える
アニメ専門オケが若手を中心に発足したらしいのと、2024.4.1にとあるプロオケが大量に団員が辞めたのを合わせてちょっと考え事をしてます。
クラシック系の人間は演者も視聴者もアニメに対して偏見を持つ人も多少いそうな感じを受けるのですが少なくとも僕は肯定派。
子供の頃から、テレビを見ると言えばアニメしか見ず(ドラマ、バラエティは大人になるまでほぼ観たことがない)買うCDはサウンドトラックばかり。
そんな学生時代でしたが今でも(執筆現時点で、43歳既婚子持ち♂)アニメをこよなく愛し、依頼でも非常にたくさんのアニメ作品にレコーディングで携わっている。
池袋アニメーションフィルハーモニー
いやいや、正直、生まれてから今までずっとアニメとともに生きてきた私たちおじさんとしては、とても魅力的に映る団体ですよ。出来ることなら参加してみたい!そんな思いを裏に、自分の過去のことやお金のことを考えてみました。
沢山プロオケがあるのに、そもそも何で?
全世代が在籍する既存のプロオケがアニメやゲーム音楽企画をあまりやらないのは、それ自体が答えなんだろう。プレイヤーの世代が問題なのではなく、基本的には稼ぐための団体だからなんだろう。
つまり、稼げない。
著作権のみで出来た楽曲を演奏すると言うことは、経費がうなぎ登りに必要と言うこと。そして出演料の高い芸能人も必要になってくること。
もちろんその代わりに、若いお客さんを中心に集客率が高くなりやすい。
それはここ1年「キャンドルライトコンサート」を何度も出演させていただいて良く分かった。洋楽の有名アーティストの曲、スタジオジブリなどをネタに、SNSを駆使して宣伝して、最高の雰囲気づくりを心がけられた当企画は、驚くべき集客率を誇っていた。
企画の収益を考えれば、僕たち奏者へのバックも大きいはずなのだが、それが無いということはそれ相応の経費が掛かっている。上記のコンサートはプレイヤーが4名だが、オケは50〜80名が普通だ。チケットの料金設定はぜひ冒険してほしい。
プロオケの内情的な問題
全世代が在籍してると言うことはプレイヤーの技術もバラバラで、いつまでたっても管楽器にシニアが首席を陣どっていることも多い。企画が「趣味全開」だからこそ、本気になりにくい環境はそれを阻害する。
また、僕の在籍中の経験や思い出をもとに言うと、こういう系統のコンサートでは音楽的なプライド?や偏見も介在して楽屋裏での企画運営への団員の不平不満が絶えず、企画運営とオケ運営で戦々恐々としていた現場も観てきた。そんな場所へ依頼してまで企画側がやりたいかどうかも甚だ疑問だ。
それならプロオケのような仕事をこなす団体より、「アニメ好きだ!」が集まった方が面白そうだ。
別に、モーツァルトやブラームスをやるわけではないので、クラシック専門のプロオケに求められる、一種の異質とも言えるアンサンブル能力は、アニメやゲーム音楽、クリック音楽にはあまり強く求められない可能性も考えられるので、経験の少し浅い若手でもうまくまとまるのではないかと思ったりする。
問題は
どう稼ぐか・・・
どう稼ぐか、なんて野暮なことを考えていたら好きな事なんてやれないので、金銭的に余裕がない子育てしている人たちに、そんな仕事は選べない。
しかし、稼げないと存続できない。
経費が高いアニメやゲームの音楽コンサートは1公演では充分な収益を得られないのでコンサートツアーのような企画を立ち上げ、リハーサル回数を押さえ、各都市を回る必要が出てくるかもしれない。そうすると、さらに金銭的に余裕がない子育てしている人たちに、そんなツアー仕事は選べない。
ツアーのような仕事はプロオケ在籍中は良くやっていたが、結婚して子どもが出来てからは辛くてしょうがなかった記憶がある。僕は夫婦で同じプロオケ楽団員だったので、夫婦でツアー参加はほぼ完全にアウトでした。
キモはスケジュール
結局は金とスケジュールはなんです。
前にも書いた記憶があるのですが、プロオケに在籍する、と言うことはある程度「スケジュールを優先的に確保する」と言うこと。フリーランスの奏者が半年や1年クラスの短期間でスケジュールの流れを大きく変えると、それまで持っていたレッスン業や固定演奏業などとのペースが共有できなくなるので、それを捨ててまで出来るかどうかはかなり大事。
かせいでいる人たちほど現存のスケジュールが大事なので、下手にプロオケの期間限定の契約団員のような仕事を急に請け負う事が出来ない。
それか、それを覆すほどの収益や意味が見いだせるかどうか。
定年でもない団員が辞めるニュースの原因も、基本的にはそれ。
どんなに運営や指揮者、上司にイヤなことを言われたりしても、団員同士の仲たがいがあっても、それに見合う収入があれば大量には辞めない。
みんな、ある程度は情があるんだ。
以上のことを考慮にいれると、確かに若い奏者が適役になる。
(若干偏見にもなるが)
そのかわり、そのままいくとメンバーの入れ替わりが激しくなることも余裕で想像できる。まあ、最近は子供持たない人も多いのでそこまでオケ仕事が足枷にならないかもしれないけど。
支援はクラウドファンディング
オーケストラは、ほんとうに、ほんとうに、めちゃくちゃお金を食うので、普通は国や自治体、企業からの支援が無いと活動できないのだが、アニメやゲームを主軸の団体に対しての偏見はまだあるだろうから、基本的には一般人の支援の方が大事になる。
世の中に認めさせて公的、企業からの支援が確実になるまでは正直、これが真面目に1番大事なのかなあと思ったりする。
とくに最初は「稼がなくても生きていける人」の人的資産がむちゃくちゃ大事だと思う。その辺は今も昔も同じなので、日本のアニメファン達がこぞって支援してあげると、続くかもしれない。
限定グッズとかも増えるのかな?
規模が大きくなって、ツアーなどが始まったら、ここ名古屋公演では名古屋の演奏家の参加も募ってみてほしい(本音)