子育てと自分の時間
「子育てをしてたら自分の趣味に費やす時間なんて無くなるでしょ。俺は自分の時間を失ってまで子供が欲しいなんて思わないな」と、知人が言っていた。
確かに子育ては大変だ。
朝ご飯は中々食べてくれないし、食べ終わった後は、テーブルや床は食べこぼしでぐちゃぐちゃになる。
食べこぼしを片付けたら息つく間もなく食器洗いに取りかかる。
食器洗いが終わると、奇声をあげて走り回っている子供たちを捕まえてオムツ交換と着替えをすませる。
そして、歯磨きが終わったところで保育園へ出発。
朝からこの調子なんで、すがすがしい朝の空気を感じながら目覚めのコーヒーを飲むという、独身時代のルーティンは無くなった。
子供たちが保育園から帰ってくると、我が家は戦場となる。
砂まみれになっている子供たちを、妻がお風呂に入れている間に洗濯物を畳んでご飯の準備。
風呂から出てきた子供たちは大声で騒ぎながら、リビング中におもちゃをぶちまけて遊び始める。
子供たちの声でテレビは聞こえないし、妻との会話も困難だ。
僕は子供が出来るまで、ほとんど外食だった。
自分が食べたいものをたらふく食べて、大好きなお酒を飲みながら仕事仲間と語り合う時間が、何よりも楽しかった。。
僕は自分の時間を謳歌し、これこそが人生の幸せだと信じて疑わなかった。
だから、「自分の時間を失ってまで子供が欲しいなんて思わない」という気持ちもわかる。
高級なお寿司屋さんで、一流の職人が腕を振るった料理は、どれもが美味しい。
しかし、子供たちとワイワイ言いながら食べるフードコートのうどんは、もっと美味しい。
泣きじゃくる子供たちをあやしているときも、イヤイヤ期真っ盛りで一つも言う事を聞いてくれないときも、大変だなとは思うが、子育てを無視して趣味に興じようとは思わない。
子供を授かった僕にとっての自分の時間は、子育てであり、子供と一緒に過ごす時間以上に楽しいものはない。
まさか、子供たちに振り回される毎日がこんなにも幸せだったとは。
何事も経験してみないとわからないものだ。