【投資】信用取引活用〜株主優待クロスやってみた - 2024年3月末分
先日口座開設、お試しデビューを果たした株式の信用取引。この信用取引の代表的な活用方法として、"株主優待クロス取引"いうものがあります。多くの企業で株主優待の権利が確定する3月末、この株主優待クロス取引について検討、実践してみました。
株主優待クロス取引とは?
株主優待クロス取引とは、株主優待の取得を目的に、同じ銘柄を同じ株数で現物株式の買いと、信用取引の売りを同時に取引する手法です。現物の買いと信用取引の売りを同じ株数・同じ値段で取引することで、株価の変動で損が生じるリスクを抑えることができます。
早い話、株価変動のリスクをゼロにして、株主優待がもらえる…という、一見美味しい取引です。
普段から、「株主優待は万人に公平ではないので好きではない、配当にすべし」と偉そうなことを言っておきながら、ちょっとお得な取引だと思うとついつい心が動かされる自分が情けないです(笑)
配当取りを狙って同じことができるのか?
現物を買って信用で売る、それで株主優待をほぼノーリスクで獲得できるなら、同じことを配当金狙いでもできるのでは?と思うかもしれませんが、実はそんな甘い話はなく…配当金の場合には、権利確定日に信用で売っていた場合には、配当金に相当する額を配当調整金として支払う必要があります。つまり配当金については、現物買いと信用売りの組み合わせで差し引きゼロってことで(厳密にいうと住民税分違いがあるようです)、得にも損にもなりません。
株主優待については、それを調整する仕組みがない、というのがお得ポイントですね。
3月末の優待候補を絞る
そんな優待クロス取引、「ノーリスクで株主優待をゲットしたい」という欲望もなくはないですが、どちらかといえば「そういう割と有名な活用法、一度自分でもやってみたい」という好奇心が勝り、多くの企業の株主優待・配当金の権利が確定する3月末を狙って、試しにやってみることにしました。
とはいっても、お食事券とかグルメ商品そのものといった優待商品が欲しいわけでもなく、またそんなのがいっぱい家に届いても困るので、「プレミアム優待倶楽部」という自分の好きな商品と交換できるポイントを提供している会社に絞ってやることにしました(すでに保有銘柄でこれを導入している企業があり、馴染みがあるということで)。
まずはプレミアム優待クラブを株主優待として利用している企業から、3月末に権利確定日を迎える企業を抽出(全38社)。このうち1)信用売りができそうな銘柄、2)プレミアム優待のポイント効率が良さそうな銘柄、3)日々の流動性が問題なさそうな銘柄、という3点を条件に、以下の3社まで候補を絞りました。
ウチヤマホールディングス(6059/サービス業/介護・カラオケ等)
NISSOホールディングス(9332/サービス業/派遣)
日神ホールディングス(8881/不動産業)
この段階でちょっとネックだな…と思ったのが、該当銘柄については「制度信用」という売り方しか選択肢がなさそうということ。細かい説明は省きますが、「一般信用」と違い、信用買い・売りの状況に応じて「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という追加的コストがかかるリスクがあり、またそれは事前にはわからない…というものです。
これが後々響いてきます(笑)
具体的な取引手法
では具体的にどういう取引を行ったのかみてみます。優待クロス取引のおおまかな流れとしては:
権利確定(3月27日)前までに現物株の買い、そして同銘柄の信用売りを同じタイミングで同株数行います。
この場合、市場が開いている場中にそれをやろうとすると、どうしても現物株を買うタイミングと、信用売りをするタイミングを同じにすることができないので、ちょっとした工夫が必要です。なお、電話での注文取引だとできると買いてあったりもしますが…
ではどうするかというと、朝9時に市場が開く前に、現物および信用ともに「寄り付きでの成り行き」で注文だけ先に入れておきます。そうすると市場が開いたところで、買い・売り同時に同じ単価で執行することができます。
あとはこの現物買い・信用売りのポジションを権利確定日までキープするだけです。
最後に、権利確定後の翌日(権利落ち日、3月28日)に買い・売りのポジションをクローズします。この場合も、市場でそれぞれ反対売買を行うのではなく、信用の売りポジションを現物を返すことで決済する現渡しという手法を使えば(どっちにしても現物株を持っているので)、買い・売りそれぞれのポジションをクローズするためのタイミングのズレを気にする必要はなくなります。
今回は初めてということもあり、早めにやってみようということで、権利確定日の直前ではなく、ちょっと余裕をみて3月18日にポジションを構築、3月28日にクローズというタイムラインで行いましたが、信用売りが安定してできる銘柄であればもうちょっとギリギリまで待ってもいいかもしれません。
3月末優待クロスの収支
では、上記3銘柄の優待クロスの結果の収支はどうなったでしょうか?以下が構築日と決済日の精算金額です。
今回の取引で得られるであろうプレミアム優待倶楽部のポイント考慮前で、36,000円のマイナス。これは、取引に掛かった手数料と、信用売りのポジション維持に掛かった費用(日割りなので短い方がいいのですが)、そして何よりも3銘柄全部に3月27日に逆日歩がかかってしまいました。
一方でこれによって得られるポイントは50,000ポイント。1ポイントだいたい1円なので、合計50,000円分。ネットで13,000円程度のプラスでした。
(ちなみに厳密にいうと株主優待は、雑所得として20万円を超えてくると申告しないといけなくなります。ふるさと納税の返礼品もそうなんですけどね。ただ、だからっていきなり税務署がやってきて、「あなたの株主優待とふるさと納税の返礼品、20万円を超えているので申告してください」ってなかなかならなさそうですけどね。「株主優待でこんな生活してます〜」ってブログで報告している人は注意しておいたほうがいいかもしれないですが…)
あとは6月くらいに各銘柄ともに配当がもらえる予定です。しかし、同時に信用売りからくる配当調整金も引かれるので、ここは差し引きほぼゼロ(ちょっと違うので差が出たりはしますが)。
実際にやってみての感想
さて今回初めて信用取引を使った優待クロス取引なるものをやってみましたが、いかがだったでしょうか?実際にやってみた自分の感想は以下のとおりです。
今回はプレミアム優待倶楽部というサービスを株主優待として提供している企業にフォーカスしてみましたが、実際のところこのサービスを利用している企業は中小型株が多く、いわゆる逆日歩のかからない一般信用での信用取引(信用売り)ができない銘柄ばかりでした。どんな銘柄でも一様に一般信用取引ができるわけではなく、制度信用売りによって逆日歩がかかるリスクは結構あるなと。特に現物株のヘッジ需要が高まる権利確定日前後は、信用売りに対するニーズも多くなりますしね。
そういった意味では、1)受け取る株主優待の価値、2)想定されるコスト(特に逆日歩は大きい)を考慮し、一般信用で取引できる銘柄に絞るほうがいいかもしれません。
あと、初日に現物買いと信用売りを同時に行うのですが、マーケットリスクはネットアウトされてゼロになるのですが、資金は現物買いの分だけ出て行きます。信用売りのほうは、売ったからといって現金が入ってくるわけではありません。今回も3銘柄で270万円を最初に支出。それで(たった数日間ではありますが)13,000円程度のネットプラス。資金効率的にちょっとどうかな…って感じはしてます。
信用取引については、証券会社によってできる銘柄の幅も違うようです。今回はお試しということで普段利用しているマネックス証券を使いましたが、他にもっといい方法があるのかもしれませんね。
どういう人に向いているか?
今後も継続的にこの優待クロスやりますか?となると、当方は多分やらないな…って感じです(笑)
ただ、もし優待目的の株を既に保有している投資家であれば、これに信用売りを権利確定前に被せることによって、権利落日の株価下落のリスクヘッジには使えそうかなとは思います。それを手間と思わなければ。ただこれも権利落ち日にどれくらい価格が下落するのか、にもよりますけどね。
あとは、もっとこの株主優待クロスに向いている銘柄が他にあるかもしれませんね。そこは改善の余地はありそうですが、今後そこに時間を使っていくかと言われると、そこもやらないかな(笑)
以上、「株主優待クロス取引」やってみた、でした。